TEXT●工藤貴宏(KUDO Takahiro)
エンジンはやっぱり官能性だ。
人生において、残されている時間は限られている。だからクルマを運転するなら、楽しいクルマでないと意味がない。
アクセルを踏む楽しさのないエンジンを積んだクルマなんてあえて乗る理由がないし、気持ちよくないクルマを運転するなんて時間の無駄遣いである。せっかくエンジンつきのクルマに乗るのであれば、燃費重視でアクセルを踏んでも反応しないようなつまらないエンジンのクルマを運転するくらいなら、電気自動車で移動したほうがよっぽど幸せになれる。
絶対的なパワーなんていらない。だけど、気持ちよくないエンジンと楽しくないエンジンはノーサンキューだ。
というわけで、いま乗っておくべきクルマの1台がスカイライン400R。スカイライン史上最強となる400HP(405ps)というパワーは見事。だけど、魅力はそれだけじゃない。むしろ「それ以外」のほうが大きい。昇天しそうなくらい爽快なエンジンなのだ。
乗る前は「とても速いんだろうな」くらいにしか思っていなかったけれど、乗ってびっくり。なんという気持ちよさ。
その理由はアクセル操作にビンビン反応する鋭いレスポンス。シャープなレスポンスを徹底的に求め、そのためにパワーを出すのに対しては不利な小型タービンを使っているのだとか。しかも高回転になればなったでアクセルを踏めば踏むほどパワーがモリモリと湧き出してくるから気持ちいいのなんのって。
噂によると、このエンジンは次期フェアレディZにも載るらしいからそっちも楽しみだ。
男は黙ってマルチシリンダーである。本当は管楽器のように鳴り響かせて音を奏でるレクサスLFAを指名したいところだけど、この企画には「現在新車で買えるクルマ」とう厳しい掟があるので断念。
というわけで、ランボルギーニ・ウラカン。モデルは何でもいい。ランボルギーニとしたのは、フェラーリと違ってターボ化せず、官能性を大切にして大排気量自然吸気エンジンにこだわっているから(SUVを除く)。V12エンジンを積むアヴェンタドールのほうが官能レベルは上だ(と思う)けど、正直に告白すると乗ったことがない。だからここは公道だけでなく鈴鹿サーキットや富士スピードウェイでも乗って限界(の数分の一)まで楽しんだことのある、(一方的に)愛着を感じているV10のウラカンで。ウラカンに抱かれるなら死んでもいいとさえ思う(意味不明)。
ここ20年くらいの間に乗ったクルマで「このエンジンは濃いなー」と思ったのが、フィアット500のツインエア。低回転トルクはスカスカで、回してやっと普通に走れる。まあ、面倒なヤツだ。まるで2スト。癖が強すぎる。
だけど、その癖が面白い。“味”といっていいだろう。だって、中間加速なんて、何も考えずにアクセルを踏んでも素直には加速してくれないのだから。シフトダウンを駆使しないと普通にすら走ってくれないほどドラマチックなのだから。
ちょっと近所のコンビニへ行くだけでも冒険のような気分と濃厚な時間を味わえるエンジンだ。ガンガンまわすのが本当に楽しいし、非力だから気軽に全開できるのも魅力。トランスミッションはできれマニュアルがベスト(現時点では売ってないけど)。
風の噂によると、このツインエアエンジンの生産も残りはそう長くはないとか。いまを逃すと、こんな癖のあるエンジンはもう永遠に味わえないかもしれない。新車を買って楽しめるのはいまのうちだけ。残された時間はないぞ! 扱い辛いから普通の人にはオススメしないけど。
【近況報告】
先日、アルファロメオ4Cに乗りました。シャシーはカーボン製だし、着座位置が驚異的に低いうえにペダルはブレーキまで床を支点にしたタイプだからまるでレーシングカー。欲しい!と思ったけど新車はすでに完売とのこと。でも、念のために宝くじを買いに行こうか悩み中。
【プロフィール】
自動車ライターとして生計を立てて暮らしている、単なるクルマ好き。人生最初にクラッチをつないだクルマは、R30型スカイラインのTI。はじめて所有したクルマはS13型シルビアで、その後S15型シルビア、アコードワゴン、ポルシェ・ボクスター、ルノー・ルーテシアRS、マツダ・プレマシー、そしてマツダCX-5などを乗り継ぐ。そろそろ10気筒のクルマを買ってみたい今日この頃。久しぶりにオープンカーも欲しい。
『気持ち良いエンジンならこの3台』は毎日更新です!
内燃機関は死なず! 世の中の流れは電動化だが、エンジンも絶えず進化を続けており、気持ちの良いエンジンを搭載したクルマを運転した時の快感は、なんとも言えないものだ。そこで本企画では「気持ち良いエンジンならこの3台」と題して、自動車評論家・業界関係者の方々に現行モデルの中から3台を、毎日選んでいただく。明日の更新もお楽しみに。(モーターファン.jp編集部より)