なお、2020年度の業績見通しに関しては、自動車市場にとって厳しい1年となること、また状況が大変流動的であることから、公表を控えている。
「現在の厳しい状況下においても、我々は日本のお客様、日本市場そして長期的な可能性への取り組みに注力します」と、ボッシュ株式会社代表取締役社長のクラウス・メーダーは年次記者会見で述べている。「今後もより良い社会と環境のために、さまざまなイノベーションを提供してまいります」
と、続けた。
事業別での売上高では、日本の主力ビジネスであるモビリティソリューションズ事業が前年比約1.5%増となった。 主に、横滑り防止装置(ESC)や先進安全運転支援分野を含むセーフティシステム向け製品、インフォテインメント製品などの取引拡大が売上に貢献している。また、産業機器テクノロジーは前年比同レベルに届かなかったものの、消費財およびエネルギー・ビルディングテクノロジーは前年比同レベルを維持した。
日系自動車メーカーは、世界で生産される自動車の約30%を担っており、自動車市場において重要な役割を果たしている。ボッシュは世界60か国に広がるネットワークを生かし、国内外で日系企業が販売する車両の開発と生産をサポートしている。2019年は日系自動車メーカーの世界自動車生産台数が前年比でやや減少したなか、ボッシュの全世界における日系自動車メーカーへの売上は前年比10.2%増と、取引を拡大した。
ボッシュは、交通事故を限りなくゼロに近づけることを目的として自動化を進めてる。ボッシュの試算によると、現在ドイツ国内の交差点で起きている交通事故の最大41%が、側方レーダーを使った衝突被害軽減ブレーキと発進防止機能により防ぐ、もしくは被害を軽減できる可能性があるという。
ボッシュでは、新世代の側方レーダーの量産を2020年に開始する予定だ。
ボッシュは、地球の気候変動や都市の大気環境に配慮したサステイナブルなモビリティの提供に向け、高効率の内燃機関からeモビリティ、燃料電池に至るまでのさまざまなパワートレーンの開発を進めている。日系自動車メーカー向けにも48Vマイルドハイブリッドのコンポーネントの量産を開始、2020年春に欧州で販売が開始されたモデルに搭載されている。
また近年、電気自動車を活用した新たなモビリティサービスの提供に取り組む新規プレイヤーの参入が相次いでいることから、電動パワートレーン、電動ブレーキシステムや電動ステアリングなどを搭載した、電気自動車向けプラットフォーム「ローリングシャシー」の提案も国内外で開始している。
日本では2020年1月、コネクテッドモビリティソリューションズ事業部を設立し、インターネットを介して新しいソフトウェア・ファームウェアを配布・アップデートする仕組みを車両にも適用する「OTA(Over the Air)」をはじめとした、ネットワーク化関連ソリューションの包括的な提供を開始している。
ボッシュは、2025年までにボッシュのすべての製品に人工知能(AI)を搭載する、または開発もしくは製造段階でAIを活用することを目指している。 また、世界有数のAIを駆使したIoT企業に成長することを目指し、モビリティのみならず、製造業、ロジスティクス、スマートホーム、農業に至るまでの多岐にわたる分野において革新的なプロジェクトを推進し、デジタルサービスにおける新たなビジネスチャンス開拓を目指す。
2020年1月にはIoTを中核とした活動を推進するBosch.IOを設立し、約900名の従業員がボッシュの擁する約3万人のソフトウェアエンジニアおよびAIエキスパートと共同でプロジェクトを展開している。
ボッシュでは、コロナウイルスのパンデミックを考慮し、今年度は世界経済にとって大きな挑戦の年になると予測していく。ボッシュ・グループの取締役は、ドイツにて実施した年次報告記者会見において、少なくともバランスの取れた結果を得るために最大限の努力をしなければならないと発表した。
困難な現状にもかかわらず、 ボッシュは長期的な戦略を維持している。