0.01秒でも速く走るために開発されるレーシングマシンは、まさに走る実験室。その実験室から市販車にフィードバックされる技術は多々あるが、エロダイナミクスもそのひとつ。
最近の新型車に採用例の増えてきた空力トレンドをご紹介しよう!
REPORT:森田 準(ニューモデル速報編集部)
高性能スポーツカーのフロントスポイラーやリヤウイングはよくご存知だと思うが、今回紹介するのはそういった、空力によって車体を路面に押し付けることによって速く走ろうとする、いわゆるダウンフォースを求めるタイプではない。
前述のダウンフォースは、逆の目線で言い換えれば空気抵抗が増えるということでもあり、空気抵抗が増えれば燃費も悪くなる。
今、市販車に色々と取り入れられている空力処理は、空気抵抗を減らして燃費を良くしようという方向性のものが多い(抵抗が減れば速くも走れますが)。
このタイプの空力処理はトヨタの「エアロスタビライジングフィン」をはじめ、色々な手法があるが、最近、取材を通して最近目にすることが増えてきた空力処理が、フロントタイヤまわりの整流だ。
上図のようにフロントバンパー前部のダクトから空気を取り込み、ダクトを通じてタイヤハウスに導入したのち、ボディサイドへと走行風を通過させる。こうすることで、タイヤハウスで発生するドラッグ(空気抵抗)を低減するのだ。
ちょっと前のスーパーGTのマシンなどでは、前後タイヤハウスの後方がざっくりとえぐられていたが、これは前述の効果を狙ったもの。それが形を変えて市販車へと投入されているというわけだ。
最近の採用例としては、マツダのCX-30や、新型フィットや新型アコードが同じ手法の構造が取り入れられている。
もうひとつの空力対策はボディ下面のフラット化。ボディ下面の凹凸をなくすようにカバーを施して極力フラットにして空気抵抗を低減する。こちらは車高の低い車であればダウンフォースとまではいかないが、ボディの浮き上がりを抑えて、走行時のボディの安定性を高める効果も期待されて導入されている。
この手法はポルシェなどスポーツカーには古くから採用されているが、最近ではミニバンやコンパクトカーなど車種を問わず、より広範囲を覆うように、積極的に採用されるようになってきた。
ボディ全体の形状や、細かい部分のフラッシュサーフェース化なども含め、いかにして空気抵抗を減らして効率を高めているかが目で見てわかる空力形状は、気にして見ると結構面白い。
ぜひみなさんも、空力目線でバンパーの下側やタイヤハウスの内側、ボディ下面などをのぞいてほしい。
車両開発エンジニアの考えが見えてくるかもしれない!