REPORT●渡辺敏史(WATANABE Toshifumi)
今やメルセデスブランドの販売の1/4〜1/3を占めるFF系ラインナップ。GLBクラスはそのラインナップに加わるまったく新しいモデルだ。
全長4634mm×全幅1834mm×全高1659mm。そのスリーサイズを見るに、トヨタRAV4やホンダCR-V、日産エクストレイルあたりと同等の車格ということになる。だが、見た目的にはスクエアなシェイプもあってそれらより大きい印象だ。
それらライバルよりも数値的に大きいのが2829mmのホイールベースで、GLBクラスはその長さを利してオプションで3列シートを配することもできる。同様の構成となるCR-Vやエクストレイルより100mm以上は長いこともあって足元のスペースはそれらに比べると余裕はあるも、メルセデスとしては社内の衝突実験等で安全を確認したとして、3列目に座る乗員の身長は168cm以下を推奨している。
エンジンのラインナップはガソリン、ディーゼル共に4気筒ターボで、パワーの異なる6種類が用意される。ドライブトレインはFFと4マチックの2種類、トランスミッションはFFの廉価グレードを除き8速DCTが組み合わせられる。
うち、日本導入が見込まれるグレードとして今回オンロードで試乗できたのは、GLB250 4マチックと、メルセデス-AMG銘柄となるGLB35 4マチック。ともに2.0Lとなり前者は224psと350Nmを、後者は306psと400Nmを発揮する。0-100km/h加速は前者が6.9秒、後者が5.2秒と、動力性能に不満を抱くことはないだろう。
4マチックはほかのモデルと同様、100:0〜50:50の前後駆動をリニアに配分できる仕組みだが、GLBクラスのオリジナリティとして常に後輪側に駆動が掛かる設定の上、ドライブモードに応じてイニシャルの駆動配分も異なっている。
例えばコンフォートモードが80:20であるのに対してスポーツモードでは70:30と、より後輪側に寄せることで旋回力を高めアンダーステアを弱めるように躾けられているわけだ。
GLBクラスの内装は基本骨格をBクラスと共有しながら独自のトリムやオーナメントで骨太な道具感を高めている。4:2:4の分割可倒式2列目シートは前後のスライド量も大きく、3列目シートへのアクセスだけでなく荷室の前後長を伸ばす上でも有効に作用してくれる。
運転席に座って感心するのはすっきりと開けた視界の良さだ。スクエアなデザインや立てられたAピラーも相まって、死角が少なくボンネット端も認識しやすい。ベルトラインも低く水平寄りに配されていることもあり、前方のみならず側面側の見切りがいいのも美点のひとつに掲げられるだろう。
はじめに試乗したGLB250 4マチックはデビューエディションということもあって235/45R20とCセグメント級には身に余るほどの大径タイヤを履いていたが、電子制御可変ダンパーの効能もあってか乗り心地はとても洗練されていた。大きな凹凸や目地段差などを踏んでいっても低級なショックはもとより、バネ下の無駄な震えも感じられない辺りは、モノコックの剛性や足周り関係の組み付け精度がいかにカッチリしているかを物語るようでもある。
ちなみにこの乗り心地の印象は、255/35R21とさらに強烈なタイヤを履いたGLB53 4マチックでもガラリと変わることはない。
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長いホイールベースや高い重心もあってか、ハンドリングは今日びのメルセデスとしてはスローな部類に入るだろう。とはいえ歯がゆくなるほどのものではなく、個人的にはこのくらいのゆったりした応答感の方がSUVには向いているとも思う。
コーナリングでは負荷に対するロール量の推移も努めて比例的で、誰もが安心して運転できる設えになっている。また、ブレーキのバランスやタッチにも速度域を問わず、変な癖は感じられない。
なによりGLBクラスで驚かされたのは、オフロードでの走破性が望外に高かったことだ。最低地上高は200mmながらロングホイールベースが災いしてランプブレークオーバーアングルは13.9度と小さいものの、前後オーバーハングが短い分アプローチやデパーチャーアングルは18度台と今日びのSUVとしては中の上。総合的には平凡なスペックと片付けられそうなところだが、これが実に頼もしくグイグイと難所を走り切る。
もちろん試乗セクションはメルセデスの側が選んだものだから走れないわけはないのだが、その設定は容赦なく、ヤワなSUVでは腹底を擦ったりバンパーを落としたりしそうな起伏が随所に設えられていた。
その試乗コースで乗ったのは、オフロードエンジニアリングパッケージを装着した200d 4マチックだ。とはいえサブギアや車高調整などを持つわけではなく、主に駆動制御を駆使して走破性を高めるオフロードモードがドライブモードに加わるくらいのものだ。
だが、その制御は至極適切に各輪をコントロールしており、特にモーグル走行のように片輪が浮いてしまうセクションではサスストロークの短さをカバーしながらしっかりと走り切った。そして30度を超えるキャンバー走行でさえ上質さを感じさせてくれたのが、やはり強い捻れ負荷が掛かれどミシリとも言わないボディ剛性の高さだった。
先ごろ発表されたGLAクラスがいかにもシティクロスオーバー的なテイストで纏められているのに対して、GLBクラスは実直なタフな道具というキャラクターを強く打ち出している。SUVのニーズにワイドレンジで応えてユーザーを囲い込もうというわけだ。日本への上陸はまだ未定だが、20年内にはその姿を路上で見かけることも出来るだろう。
GLB250 4MATIC
全長×全幅×全高:4634×1834×1659mm
ホイールベース:2829mm
車両重量:1670g
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
排気量:1991cc
圧縮比:10.5
最高出力:165kw〈224ps〉/5500-6100rpm
最大トルク:350Nm/1800-4000rpm
燃料タンク容量:60L
トランスミッション:8速DCT
駆動方式(エンジン・駆動輪):F・4WD
サスペンション形式:Ⓕマクファーソンストラット Ⓡマルチリンク
ブレーキ:Ⓕベンチレーテッドディスク Ⓡドラム
タイヤサイズ:215/65R17
WLTCモード燃費:13.5km/L
0-100km/h加速:6.9秒
最高速度:236km/h