REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、鈴木慎一、日産自動車
--ターボ車はパーキングブレーキが足踏み式のままですが、ハイブリッド車は今回のマイナーチェンジでEPB(電動パーキングブレーキ)になりましたね。やはりプロパイロットにEPBは必要要件なのでしょうか?
寸田 プロパイロットとしては最低限必要なものです。先行車に追従し停止すると3分間はVDC(横滑り防止装置)で油圧をかけるのですが、それ以上止まるとVDCではダメなので、そうするとパーキングブレーキをかけることが安全上必要になってきます。そのためにEPBは必須ですね。これはプロパイロット2.0に限らず、これまでのプロパイロットも同じです。
--プロパイロットの機能を「2.0」に進化させるにあたり、センサー類などの必要条件は?
寸田 360°センシングと表現していますが、車線変更するにあたっては、自車の側面が広く見えていなければなりませんので、そのためにトライカムで前方を広角で見るというのは非常に重要で、カメラでも両隣の車線を見ています。それから、従来型は車両後方にサイドレーダーを装着し、BSM(後側方車両検知警報)などを実装していましたが、今回それを前方にも追加して、レーダーで車両全体をカバーして、さらにカメラでも見て、横方向を二重で見て、確実に車線変更する…というものになっています。
--今回のスカイラインが初搭載なので、「本当はこの辺でいいんだけどここまでやっています」という所もあるんですよね?
寸田 センサー類はどれも必須のものですね。なくてもいいものは基本的にありません(笑)。横方向をちゃんと見なければならないので、前述のトライカムやレーダーに加え、ソナーやアラウンドビューモニターも使って、とにかく間違いがないように二重三重で見て、万全を期しています。
ただ、必要なものが多いのは確かで、お客様からすれば「車線変更するだけ?」と思われるかもしれませんが、それを実現するためには、従来のプロパイロットとは違うものを要求されます。センサーもアクチュエーターもコントローラーも二重三重なのはそういうことですね。
--ステアバイワイヤはプロパイロット2.0の必要条件ではない?
寸田 ではないですね。
--でも、あるとやりやすい?
寸田 はい。普通の電動パワーステアリングでもできますが、その場合はシステムを二重にしなければいけません。その点ステアバイワイヤは三重になっていますので、使いやすかったですね。何かあった場合はハンズオフからハンズオンに移ってもらいますが、それまでに空白時間がありますから、そこをシステムで何としても守らなければならないので、その何秒間かのために結構命をかけています(笑)。そこは非常に苦労しました。
--今回の高精細3D地図は、いわゆるダイナミックマッププラットフォームの地図を使っている?
海老澤 はい、DMPですね。
--これは、いろんな自動車メーカーがコンソーシアムに入っていて、参加していてお金を払えばデータをもらえるのでしょうか? 実際に使われるのは初めてですよね?
海老澤 日本で商用化するのは初めてですね。で、DMPの地図をベースに、ゼンリンさんの方で我々に合うようなカスタマイズをしていただく、という流れです。
--海外ではHEREとDMPに関して連携していますが…。
海老澤 海外で展開する場合も同じように、そのまま使うわけにはいかないので、HEREさんに付加的な情報を入れて収めていただくことになります。
--OTA自動地図更新が実装されていますが、これをファームウェアのアップデートに使えるのでしょうか?
寸田 許可を取れば、できますね。
海老澤 今回はナビと地図データのアップデートができるようになっています。
寸田 今回のスカイラインは、プロパイロットのシステム自体をOTAでアップデートできませんが、今後は更新できるようにする方向で進むと思いますね。日本にはルールがまだありませんので、今は個別に折衝していますが、近い将来に明確なルールができると思います。
--現状では通信はLTEですか?
海老澤 はい、LTEです。
--将来的には5Gに移行する?
海老澤 各国で5Gが視野に入ってきていますので、技術トレンドとしては見ていかなければならないと思います。
--もし現行スカイラインに搭載するとしたら、ハードルは高いのでしょうか?
海老澤 通信モジュール自体は独立したものなので、車両への依存性は高くないですね。