そのモトチャンプブースで黒山の人だかりをつくり話題をさらったのがユーチューバー「ANTIBCSC(アンチビクスク)」だ。若いバイク乗りたちからカリスマと崇められる彼らが、これからのバイク業界に革新をもたらす。
PHOTO:山田俊輔(Motorfan.jp)
朝10時、会場アナウンスとともに東京モーターサイクルショーが開幕した。開場と同時にモトチャンプブースを目掛けて走り出す数百人もの来場者。瞬く間にブース前にはディズニーランドのような行列が出来上がった。周辺ブースの出展者の驚き、駆け付ける警備スタッフ。想像を遥かに超えた「アンチビクスク」の破壊力。今まで味わったことのない異常事態に我々は息を飲んだ。
彼らとの出会いは約5か月前。鈴鹿ツインサーキットで開催された「Enjoy4MINI2018」だった。イベントがスタートすると、あきらかに趣向の違うバイクが次々と来場し、彼らのオリジナルパーカーを着込んだ人々で埋め尽くされた。
キラキラとした目で彼らを見つめるファンたちは、驚くほどに若い子ばかり。その光景を目の当たりにして、筆者は眩暈がした。バイク雑誌の読者は年々高齢化している。それもあって「若い人たちはバイクになんて興味がない」というのが業界では常套句となっていたからだ。
しかし、実際は違った。若いバイク乗りがいなくなったわけではなく、バイク雑誌を中心とした我々のコミュニティに入ってこなくなっただけだった。雑誌の編集者としては悔しい以外の何物でもないが、それが現実である。それでも「若者にバイクの楽しさを伝えたい」という思いをあきらめきれず、彼らにアポイントを取り、岡山県へと向かった。
アンチビクスクという刺激的な名前で、ちょっとヤンチャなツーリング動画をメインに配信する彼らだが、中身は分別をわきまえた好青年だ。チャンネル登録者は15万人を超え、モトブロガーとしても確固たる地位を獲得。しかし彼らは現状に満足しているわけではなかった。
「名前や動画の内容からだと思いますが、今までほとんどイベントなどに呼ばれたことがないんです。他のモトブロガーは呼ばれるのに、僕たちには声が掛からない。そんな業界を見返すためにも、誰もが驚くような、大きな爪痕を残したいんです」
結局「飲みにケーション」は朝方まで続き、お互いの思いを語り合った。こうしてアンチビクスクとモトチャンプはタッグ結成に至ったのだ。
14時45分、もうすぐ彼らのトークショーがスタートする。開始前から通路を埋め尽くすほどあふれかえった若いバイク乗りたちを見て、関係者の方たちは何を思ったのだろうか。賛否両論あるだろうが「若者にバイクの楽しさを知ってほしい」その思いは業界の共通認識であるのは間違いない。「彼らの動画がうんたらかんたら」、重箱の隅をつつくようなスタンスで、その層から圧倒的な支持を集める彼らから目を逸らしてはいけないのではないか。重要なのは、彼らがきっかけとなり、若いバイク乗りが増えている事実だ。
モトチャンプは彼らと一緒に、若いバイク乗りも抱き込みながらバイク業界の新たな未来を切り拓いていこうと腹を括っている。1人でも多くの関係者が我々と同じ気持ちで共に進む決断をしてくれることを願ってやまない。
最後に、この出会いをくれたウィリーキッズさん、そして我々を受け入れてくれたアンチビクスクリスナーの皆さんに感謝を伝えたい。
トークショー終了後にブース内から記念撮影をしようとしたのだが、あまりの人の多さと奥行のなさに、手持ちのレンズではまったく収まらなかった(写真は左右2回に分けて撮影したもの)。それにしてもこのみんなの笑顔、素敵すぎるでしょ!