REPORT●青木タカオ(AOKI Takao) PHOTO●ピレリジャパン(PIRELLI Japan)
全国のMFJ公認サーキットにて定期的に開催されているサーキット走行会が『Pirelli Metzeler FUN TRACK DAY(ピレリ・メッツラー ファン トラック デイ)』です。レーシングツナギなしでも参加できるクラスや無料貸出しがあるほか、技量に合わせた細かいクラス分けで、サーキットが初めてという人も安心してエントリーできるよう配慮されています。
クラス分けは走行ペースに合わせたA〜Eまでの5つに加え、125/250クラスがあるほか、受付時間も10時50分とゆっくりな「スポーツツーリング」クラスも設けられて、とにかく初心者にやさしい!
筆者のようなソロの自走組も少なくなく、困ったことがあればスタッフがすぐに相談に乗れるよう“お一人様”は運営本部のすぐ近くにピットを用意してくれているのも感激でした。ひとりで参加する者どうし会話もでき、不安なく15分×3回の走行枠を堪能することができたことも報告しておきましょう。
はい、ここで早くも結論です。“自走”でサーキット走行会は少し勇気がいるかもしれませんが、けっこうやっている人はいて、まったく問題なしでした!
さて、筆者は今回「DIABLO SUPERCORA SP V3(ディアブロ スーパーコルサ エスピー ブイスリー)」を履いて走りました。ワールドスーパーバイク選手権で獲得したピレリのレーシングテクノロジーが惜しみなくフィードバックされ、公道とサーキットという相反するふたつの楽しみで最高のパフォーマンスを発揮するために開発されたハイグリップタイヤです。
まず走行会に備えて、数日前にタイヤを交換したのですが、履き替えた途端に情報量が豊富だと感じました。舗装表面のわずかな変化も感じ取れるほどで、路面状況が手に取るようにわかります。都内の自宅から袖ヶ浦フォレストレースウェイまでを走れば、皮むきも充分。ファン トラック デイが楽しみでしかありませんでした。
しかし、当日は雨が降っているから泣けてきます。こういうとき、自走組はツライのです。カラダはもちろん、荷物も濡れてしまうし……。
レーシングツナギの上からさらにレインウェアを着て袖ヶ浦まで走りましたが、ハイパフォーマンス系のタイヤであるにも関わらずウェット性能も良いことがわかります。衝撃吸収性にも優れるし、本番前に疲れてもうクタクタ……、なんてことにはならず快適です。
1本目の走行枠では雨があがって、路面だけが濡れている状況に。コーナーでは軽快なハンドリングが楽しめます。まず、初期旋回がシャープです。コーナーに入っていくタイミングをいろいろと試しましたが、遅れ気味になってもフロントからグイグイ曲がっていき、狙ったラインを外しません。
そしてバンク中は、トレッド面のソフトなゴムが路面にジワーッと食い込むように広がって安心の接地感。ウェットながらもっといける、もっと寝かせられるとバンク角が少しずつ増えていきます。濡れた路面でも情報量が多いのは変わらずで、雨上がりの状況でもスポーツライディングを楽しむことができました。
手で触ればわかりますが、リアタイヤにはデュアルコンパウンドが採用され、グリップ性能とライフの両立を実現しています。ショルダー部はソフトなコンパウンドで食い付きがよく、旋回中の高いグリップ感はこのしなやかなトレッド面のおかげです。
また、ストレートも落ち着いていて高速安定性に優れています。第1コーナーへのブレーキングもよりハードに効かせることができ、旋回へのアクションに余裕が生まれます。
2本目以降は再び雨が降り出し、完全なウェットに。それでも何もできないという状況にはならず、サーキット走行を満喫することができるから、やはり排水性がいいのでしょう。雨の多い日本ですから、ハイグリップなだけでなくウェット性能の両立は欠かせません。今回の筆者のように、サーキット走行会を“自走”で行くならなおさらで、こういうタイヤがあると、サーキットも公道もという欲張りな人にはありがたいのです。
PIRELLI DIABLO SUPERCORA SP V3
■SIZE
FRONT
120/70 ZR17 M/C (58W) TL
REAR
200/55 ZR 17 M/C (78W) TL
190/50 ZR 17 M/C (73W) TL
190/55 ZR 17 M/C (75W) TL
180/55 ZR 17 M/C (73W) TL
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。最新バイク情報をビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説し、休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持されている。現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアにて執筆中、バイク関連著書もある。