2018年に発表された技術で、まだ製品化されていないものの、将来性が見込める技術、であろういままでにない視点で開発された技術、実用化されると自動車業界に多大な影響を与えるであろう技術を選考対象しています。
選考過程は “テクノロジー・オブ・ザ・イヤー” と同様で、今回15の技術を選出しました。
その注目すべき15の先進技術について紹介します。
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ベテランドライバーを上回る高精度のステアリング操作
将来の自動運転を視野に入れ、路線バスなどが決められた場所、バス停などにぴたりと自動で駐車できるよう制御するシステム。「正着制御」という聞き慣れない用語は、この技術を開発するにあたって作り出された造語である。事前にプログラムされているルートに対して自車位置は高精度GPS(RTK-GPS)を使ってセンシングし、目標に対してのずれを補正しながら走行。油圧アシストを生かした上で、ステアリングホイールに近い上流のコラム部分に電動アシスト機構を組み込んでいる。
垂直方向の視野角を広げた次世代のレーザースキャナー
2020年に市場投入が予定されている、ヴァレオの第2世代となるSCALA 2は、第1世代と比べて垂直方向の視野角が3倍に拡大。具体的には3.2度が10度へ広がった。左右の視野角は140度と第1世代と同等だが垂直方向の視野角が拡大したことで、路面標示の読み取りや坂道、上下方向に制限のある駐車場などにも対応できるようになる。昼も夜も問わず、低速でも高速でも機能し、静止物/動く対象物などあらゆる障害物を検知するレーザースキャナーのメリットをよりレベルアップ。ハウジングはアルミ製で、ECUの冷却にも気を配った設計だ。
操作/表示/空調の要素をダッシュボードに美しくインテグレート
来るべき自動運転時代のキャビンに求められる、快適性と利便性を実現する技術をコンセプトモデルとして具現化。ダッシュボード加飾部品の表面にスイッチと表示機能を融合するという新しい試みにチャレンジし、シームレスな美しさを実現している。状況に応じ、見やすい位置と大きさで表皮に情報を表示、平時は消灯して煩わしさを低減する。表面の加飾は本革、人工皮革、金属調、木目調など、幅広い要求に対応が可能。また自動風向制御の空調アウトレットもダッシュボードの加飾と融合しており、美しさと快適性を両立させた。
光を使ったコミュニケーションで自動車と人との新たな関係を考える
音響/映像機器メーカーであるJVCケンウッドのデザイン部門が、将来の完全自動運転車はどのようにして人とコミュニケーションを取るのかを検討していくため、データのみのバーチャルモデルとして製作。2030年に発売される完全自動運転車で、価格は3500万円という設定だ。ダッシュボード上に設置された「光るボール」が、単なる点滅だけではなく流れるような表示で、目的地までの距離や時間など多彩な情報を発信。車外の歩行者に対し「どうぞ横断してください」といった意思表示も光で行なう。
加工難度が高い素材の使用範囲を限定することでブレイクスルーを実現
電磁鋼板と比較し鉄損(コアロス)が1/10以下と低いアモルファス金属は、モーター高効率化の手段として大きな効果があるものの加工難度が高く、複雑な形状に成形するには生産性に課題がある。日立金属は、せん断加工したアモルファス金属を積層し鉄心のティースと呼ばれる部分のみに使用することで、比較的容易に低損失な鉄心を製造できる構造を検討し、量産実用性が見込めると発表。試作したモーターは現行の製造技術で量産が可能なもので、今後はEV駆動用モーターへの適用を視野に入れた研究開発を進める計画だ。
フロントタイヤの転舵角度を左右独立で補正できる高機能ハブ
ハブベアリング自体にタイヤの転舵角度を調整する機構を組み合わせ、既存のステアリング装置を変更することなくフロント左右各輪の転舵角度をアクチュエーターで個別に補正できるシステム。ハンドル操作角度や車速データをもとにして、タイヤの転舵角度を最適に制御しコントロール性や高速直進時の安定性を向上させる。現在の仕様ではプラス/マイナスそれぞれ3.5度の補正が可能。神奈川工科大学と共同研究を行ない、実験車両ではハンドル操作量を最大で4割低減したことを確認した。2027 年には年間 25億円という販売目標を立てている。
安全で高性能な電解質を独自開発
非焼結タイプで製造プロセスも簡略化
次世代電池の主役と見られている全固体電池。NGKはプラグ製造で培ってきたセラミックスに関する知見を生かして、独自の酸化固体電解質を用いる方針を定め、酸化物では最高水準のイオン伝導率に到達した。ほかの全固体電地では硫化物を含む固体電解質を使うものが多いが、水に触れると有害な硫化水素ガスの発生が懸念される。NGK/NTKの酸化物タイプの電解質は燃焼や有害ガスの恐れがなく安全性が高いことが特長だ。また電解質を焼かないで薄く固めるという独自の製法により、割れや曲がりの問題もクリアしている。
産産学学連携によって到達した内燃機関の大きな進歩
内閣府の総合科学技術・イノベーション会議 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「革新的燃焼技術」において、慶應義塾大学の飯田訓正特任教授、京都大学の石山拓二教授、早稲田大学の大聖泰弘特任研究教授らは、乗用車用ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジンともに、正味最高熱効率50%を上回ることに成功した。5年間という短期間で既存エンジンから10%引き上げるという野心的な目標は、多くの研究者、エンジニアとの協力体制で達成。今号の本誌特集に詳しく説明した。
人の意志を車両が先読みしてよりリニアな操作アシストを実現
ドライバーの脳波を活用して、ドライビングをさらにエキサイティングで楽しいものにしていくことを目指すプロジェクトを日産が発表。ドライバーがステアリングを回したり、ペダルを踏むなどの操作をする直前に、脳の行動準備電位を検出することで操作を開始する前からシステムがスタンバイ。ドライバーの反応の遅れをカバーし、ドライバーが思いどおりの運転をできるようサポートする。また自動運転時には、脳波からドライバーの違和感を検出し、この違和感を減らす自然な制御の自動運転にカスタマイズすることを可能にする。
ハードとソフトを一括開発し正確な自車位置特定パッケージを構築
ナビなどに利用される衛星測位システム(GNSS)の信号を受け取るだけでは、自動運転に必要な測位精度が確立できないと考えたボッシュは、地上のさまざまな基地局からの情報も受信する新タイプのセンサーを開発。さらに車両自体の操舵角/車輪速センサーからのデータも複合し、高速に演算するより洗練されたソフトウェアも同時に研究している。車両のレーダー、カメラが検知した道路標識やガードレール、周囲の物体などの情報をクラウドにアップロードし、自動運転に用いるマップデータの精度をさらに高めるアプローチも検討中だ。
ハンドルもペダルも存在しない自動運転車がまもなく登場?!
ゼネラルモータースが2018年1月に発表したバッテリーEV自動運転車クルーズAVのコンセプトは「交通事故のじつに94%もの遠因となっているヒューマンエラーを一切除き、死傷者を大幅に少なくする」というもの。その結果、この車両のダッシュボードにはステアリンやウインカーレバーがなく、フロアにはアクセルもブレーキもない。スマートフォンなどからのリクエストで配車されるサービスに使われることを想定、公道を走行する際の法規制クリアの問題もあるが、GMは2019年には実車を登場させるとしている。
100m後方の車両を検出できる高度なアルゴリズムを実装
視野内の目立つ領域に自覚なく優先的に注目する人間の反応を模倣することで、カメラが遠方の物体でも早期に検出できるようになることを狙った技術。従来の物体認識技術では約30m程度であった最大検出距離を業界最高性能となる100m程度に広げ、さらに車両などの検出精度を14%から81%に向上させた。低演算量の「視覚認知モデル」とコンパクトなAIの組み合わせにより、車載向け組み込みシステム上でリアルタイムに動作。実用化されれば単純な鏡からモニターへの置き換え以上のメリットをもたらす。
釘刺し試験による強制短絡でも発火しない特性を確認済み
従来の有機電解液よりも引火点が高い、界面改質技術により電気化学的安定性を向上させた電解質を使うリチウムイオン二次電池(LiB)の試作に成功。容量100Whのラミネート型電池を用いて充電や放電などの電池特性を確認するだけでなく、従来の有機電解液LiBでは発火に至るような釘刺し試験でも不燃性を実証した。釘刺し試験とは発熱、発火の要因となる内部短絡を模擬した試験法のひとつ。本技術により発火を抑制する補強材や冷却機構を省略しながら安全性を確保でき、各分野で電池の高容量化、高エネルギー密度化が可能となる。
分子レベルでゴムと樹脂を結びつけしなやかさと強靭さを兼ね備える
ブタジエン、イソプレン等の合成ゴム成分と、エチレンに代表される樹脂成分をブリヂストン独自の改良型Gd(ガドリニウム)触媒を用いて分子レベルで結びつけた(共重合)ハイブリッド材料。
ゴムのしなやかさと樹脂の強靭さを兼ね備えた次世代材料であり、同社が2016年12月に発表した、新規ポリイソプレンゴムの合成に用いたGd触媒技術を更に進歩させた成果だ。天然ゴムを凌駕する強度と耐摩耗性を有することから、より少ない材料使用量で自動車用タイヤに求められるさまざまな性能を達成できる可能性が見込まれている。
室内空間をよりフレキシブルに活用できるシート配置システム
中国、欧州、米国など各国でシートに関する消費者の経験とニーズを調査し、革新的なシートプラットフォームコンセプトを発表。荷物の運搬、長時間の移動時のコミュニケーションなどの視点から、ライドシェア中の「動くミーティングスペース」に至るまでシートの配置変換が行なえるソリューションの実現を目指し、シート骨格自体から再検討を行なった。スライドや格納中の安全性を高めるため、物体検知センサーの搭載も視野に入れている。車両のどの座席が空いているかをスマートフォンで確認できるサービスも検討中だ。