ボッシュのモーターサイクル&パワースポーツ事業部門は、世界の二輪車およびパワースポーツ市場で躍進を続けている。ボッシュの2018年の二輪車関連テクノロジーの売上高増加率は、前年比で20%を超えることが予想されている。ボッシュの試算によると、この事業部門の売上高は今後も市場の2倍のペースで成長を遂げる見込みで、2020年にはアシスタンス、パワートレイン、電動化、ネットワーク化システムの合計で売上高10億ユーロを達成することを目標としている。




 大きな成長が見込まれる市場はインド。ボッシュは、インドにおけるABSの装備義務化や新たな排出ガス基準であるバラート ステージ6の導入といった規制動向、および現地の市場動向を踏まえながら、この国に適した二輪車のパワートレインおよびセーフティソリューションを提供している。


 ボッシュは継続的な成長が見込まれる市場への投資を続けている。二輪車の世界的な需要は、2017年から2022年の間に毎年4%以上成長し、2022年までに1億2,200万台に達すると予想されている(出典:Freedonia)。




 2018年、ボッシュは中国およびインドとともに二輪車市場の世界トップ3を形成しているASEANにおいて、現地の市場ニーズに応えられるよう、モーターサイクル&パワースポーツ事業部門の新たな拠点を立ち上げた。「ボッシュは二輪車とパワースポーツ車両に特化したテクノロジーへの投資を続けており、マーケットリーダーとなることを目指しています」と、ボッシュ取締役会メンバーのディルク・ホーアイゼル氏は述べている。




 ボッシュのビジョンは、Accident-free(交通事故のない)、Stress-free(ストレスのない)、そしてほぼEmission-free(排出ガスのない)な未来のモビリティを実現することであり、これは二輪車にも当てはまる。安全性は、二輪車市場において最も早急な解決を要する課題の一つ。事実、二輪車のライダーは、道路利用者の中で最も深刻な交通事故自害に遭う可能性が高く、その現状は昔から変わっていない。二輪車のライダーが事故で死亡するリスクは、自動車のドライバーと比較して平均して20倍も高くなる。


 ボッシュは、包括的な3ステップのセーフティコンセプトによって、Accident-free(交通事故のない)なモビリティの実現に挑戦している。第1段階として、ブレーキング時および加速時にバイクを安定させること。第2段階は、革新的なサラウンドセンシング技術により、予測に基づいた安全性機能ならびに走行快適性を向上させる機能を実現すること。第3段階は、二輪車と周囲の環境をネットワークで接続させることだ。

包括的なセーフティコンセプト:Accident-free(交通事故のない)なモビリティに向けた3つのステップ

 ボッシュは、ABSやMSCなどのアシスタンスシステムによって、二輪車でのライディングをより安全なものにしてきた。ボッシュの事故調査報告によると、二輪車における負傷事故の約3分の1はMSCによって防ぐことができるとされている。




 現在、ボッシュはさらに一歩進み、二輪車向けに、いわばライダーを事故から守るためのバーチャルな盾となるようなテクノロジーを開発した。EICMAでは、アダプティブ クルーズ コントロール、衝突予知警報、死角検知を含む二輪車向けの新しい安全パッケージが世界初出展となる。このような電子制御式アシスタンスシステムは周囲を常にモニターし、緊急時には人間よりも迅速に対応することが可能だ。




 ボッシュの事故調査報告によると、こうしたレーダーベースのアシスタンスシステムを装備すれば、二輪車事故の7分の1を防ぐことができるとされている。これらのシステムを支えているのは、レーダーセンサー、ブレーキシステム、エンジン制御システムとHMI(ヒューマン マシン インタフェース)を組み合わせた技術。二輪車のレーダーが二輪車の感覚器官としての役割を担い、これにより新しい二輪車向け安全運転支援機能は周囲の状況を正確に把握できるようになる。 安全性の向上だけでなく、ライダーの走行快適性も高めることで、ライディングの楽しさと利便性の向上にもつながる。「未来の二輪車は、見て感じ取る能力を備える必要があります」と、ボッシュのモーターサイクル&パワースポーツ事業部門を率いるジェフ・リアッシュ氏(Geoff Liersch)は述べている。

ライディングの楽しみを損なうことなく、安全性がさらに向上

 アシスタンスシステムだけでは道路を安全な場にするのに十分ではない。未来に向けたボッシュのビジョンは、交通事故の発生を未然に防ぐことだ。




 ボッシュの事故調査報告によると、二輪車と自動車間で相互に通信することができれば、二輪車事故の約3分の1近くを防ぐことができるとされている。このテクノロジーは、半径数百メートルの範囲にいる車両同士が車種、速度、位置、進行方向に関する情報を1秒間に最高10回交換するというもので、ドライバーや車載センサーが二輪車を見つけるはるか以前に二輪車が接近していることを知らせ、事故を防ぐ走行モードを選択することが可能になる。衝突事故が避けられない状況となった場合においても、eCallシステムが自動でサービスセンターに緊急通報を伝送することで、少しでも早くライダーが救命サービスを受けられるようサポートする。




「私たちは、ライディングの楽しみを損なうことなく、二輪車のライディングをさらに安全なものとする、新しいテクノロジーの開発を続けていきます」と、モーターサイクル&パワースポーツ事業部門を率いるジェフ・リアッシュ氏(Geoff Liersch)は述べている。

市街地に適したeモビリティの進化

 二輪車市場にとって、もう一つの大きな課題は都市化である。現在、世界の人口の55%が都市部に住んでおり、2050年には最大約70%まで上昇すると予想されている(出典:国連)。


 しかし、人口の増加に伴い、都市部では渋滞が頻繁に見られるようになり、騒音レベルや大気の状態も悪化していく。こうした世界的な課題に取り組むため、ボッシュではeBikeシステムから商用車向けソリューションまで、ほぼ全ての車両セグメント向けにeモビリティソリューションを取り揃えている。




 二輪、三輪、四輪の小型車両において、ボッシュは0.25~20 kWの全出力クラスで、効率性に優れた市街地向け電動化ソリューションを提供している。この電動化ソリューションは、個々のライダーにとってもユニークなライディング体験が得られるものとなっている。


 ボッシュの電動スクーター統合システムを構成する要素の一つとして、車両情報、ネットワーク化機能、ソーシャルネットワーキングが統合されたアプリがある。個別の状況下にあるライダーのニーズに焦点を当てたこのアプリにより、ライダーは容易に自身のライディングを管理できるようになる。




 さらに、ボッシュは自家用車だけでなく、商用車の電動化にも注力している。速さと柔軟性が求められる物品の配送において、eモビリティはますます重要な役割を果たすようになっている。市街地内において、いわゆるラストワンマイルにおける書状や小包の配達サービスで使用されているリジエ(Ligier)社製貨物三輪車にも、ボッシュの48 Vセントラルドライブシステムが採用されている。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 ボッシュのモーターサイクル&パワースポーツ部門の事業拡大がさらに加速(EICMA 2018)