今回、3テラバイトのデータを扱うキャッシュサーバ(富士通のPCサーバ「FUJITSU Server PRIMERGY」で構築)10台のうち1台に対して、メモリ拡張技術を適用した。「sify.com」で実際に使われているデータとアクセスパターンを用いて、キャッシュサーバのメモリがDRAM(256ギガバイト)のみの場合と、「MMGIC」のフラッシュメモリ(2.5テラバイト)で拡張した場合を、キャッシュサーバおよびWebシステムの性能で比較した(図1)。
キャッシュサーバに搭載されているDRAMを物理的に増やすことなく、フラッシュメモリを仮想的にメモリとして活用する「MMGIC」の適用により、性能劣化なくサーバ10台分の性能を1台で達成した。これにより、システム全体の処理能力が向上し、Webシステム性能が3.6倍になることを確認した(図2)。
1)メモリ拡張技術「MMGIC」(2015年11月プレスリリース発表)
SSD内にハードウェアとして搭載されておりブラックボックス化されているコントローラをソフトウェアで実装することで、サーバのアプリケーションからSSD内のフラッシュメモリを直接扱えるようになり、高い性能を引き出すことができる。
2)「MMGIC」に最適化したキャッシュシステム(2017年3月論文発表)
高速小容量(DRAM)と低速大容量(MMGIC)の2種類のメモリ空間を構築し、頻繁にアクセスされるデータを高速メモリ、アクセス頻度の低いデータを低速メモリに配置するメモリ制御技術を活用した。今回、高頻度にアクセスされるデータをDRAMに配置し、それ以外を「MMGIC」のメモリ空間に配置することで、性能と容量を両立するキャッシュシステムを実現している(図3)。
本技術により、インメモリ処理の需要が高いシステムにおいて、すべての処理データを大容量仮想メモリ上に置けるため、システム全体の高速化が実現できると期待される。富士通研究所と富士通は、本技術の精度をさらに検証し、将来的な製品化を進めていく。
Sify Technologies Cloud &Engineering Services ゼネラルマネージャ Jitender D.氏:
「Sifyのポータルサイトは、エンターテインメント部門にて画像や動画などの様々なメディアファイルを配信するためにサーバクラスタを使っています。データ量の爆発的な増加に伴い、クラスタのメモリ容量拡張が必要でした。なぜならメモリ容量は高いスループットを出すためになくてはならないからです。我々は、これらメディアファイルのキャッシングおよび検索用途に富士通のメモリ拡張技術を評価してきました。検証では、DRAMのみのシステムと比較して容量10倍で性能が3倍にスケールする結果が得られました。このメモリ拡張技術により、将来のシステム拡張にかかる全体の設備投資が抑えられると期待できます」