また、その会場の隣のスペースでは東南アジア最大規模のポルシェ ユーザーイベントである“Das Treffen”が開催されていた。「こんなにあったんだ?」と驚くほどの空冷モデルをはじめ、多数のユーザーカーが集まった眺めは壮観そのもの。東南アジア各国のポルシェクラブがツアーを行ない、凄まじい数の車両が域内から集結していたから、この日のバンコクはまさにポルシェ一色という雰囲気だったのだ。
ポルシェ アジアパシフィックの設立は2001年。ブルネイ、カンボジア、フランス領ポリネシア、インドネシア、マレーシア、モンゴル、ニューカレドニア、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、ベトナムの12か国をカバーし、2017年には合計5390台を販売したという。日本の場合と同様に、それ以前からポルシェの販売は行なわれており、たとえば今回の舞台となったタイには60年代の356の時代から輸入が行なわれていたそうである。
そして月曜日、いよいよツアーへ出発である。最新の911カレラTと、パナメーラ4 スポーツツーリズモを乗り換えながらゴールを目指す。スケジュールは結構過酷で、バンコクからシンガポールまでの2000km弱を、水曜日までの3日間で走り抜けなければならない。私は水曜日夜にチャンギ空港を発つ羽田行きのフライトに乗らなければならなかったから、気持ち的にも余裕はないなと感じていた。
たとえばそれが西ヨーロッパだったら、ある程度は走り慣れているし、交通事情も察しがつくが、この地域の道路事情、交通マナーは個人的にはまったくの未知数。いや、正直に言えば前日のバンセン行きで、すでに「これは大変かも……」と感じていたから、楽しみな反面、ややナーバスになりつつのスタートとなった。
タイの交通事情は、決して良いとは言えない。想像の通り、バンコク市内など街中は交通量が多く、慢性的に渋滞しているし、そのクルマとクルマの間のわずかな隙間を縫って、二輪車が駆け抜けていくから、常に気が抜けないのだ。しかも、道路の構造が解りにくく標識も不親切で、同乗していたポルシェ アジアパシフィックのインストラクターすらも高速道路に乗るのに数度、道を間違えたほどだった。