このひろ自連のエネルギー専門部会は、Tank-to-Wheelではなく、Well-to-WheelでのCO2排出量の削減を目指している。TtWとは、車載のガソリンタンク→車輪でWtWとは、油井から車輪まで、という意味だ。TtWの視点で見ればEVはCO2排出量ゼロとなるが、WtWの視点では、油田からの採掘、輸送、精製、火力発電による発電、送電などそれぞれで発生するCO2を考える必要がある。
EV(電気)、FCEV(水素)へ次世代自動車のパワートレーンが移行していくといっても、それはまだかなり先のことだ。2030年でも、販売される84%のクルマには内燃機関が積まれるだろうとマツダは予想している。だから、EV・PHEV化(クリーン電力がある地域では効果的)とともに、内燃機関の効率改善に積極的に取り組んでいるわけだ。
そしてCO2排出量の削減のもうひとつの方策として「次世代液体燃料の普及」を目指している。
なぜ「液体燃料」なのか? 液体燃料のアドバンテージは、そのエネルギー密度の高さにある。天然ガス(20MPa)はガソリン・軽油の約4分の1、圧縮水素(70MPa)、2030年頃を目標に開発している次世代電池は、約8分の1ほどのエネルギー密度なのだ。現状のリチウムイオン電池に至っては、100分の1ほどに過ぎない。
ただし、これまで通りの原油以来のガソリン、軽油を使っていたのでは、CO2削減に繋がらない。そこで「次世代液体燃料」となるわけだ。廃天ぷら油を使った再生燃料やサトウキビから作るバイオエタノールなどが第一世代バイオ燃料としたら、ネピアグラスなどの非食用植物を原料とするバイオエタノールが第二世代と言える。では次世代の主役となり得るのはなにか? というときに主役の座に躍り出そうなのが、微細藻類を原料とした液体バイオ燃料だ。ひろ自連は微細藻類由来の液体燃料普及に向けてユーグレナ社とともに、実証事業計画「ひろしま"Your Green Fuel"プロジェクト」を始動する。
ユーグレナ社は、ユーグレナ(和名・ミドリムシ。ムシと言っても虫ではなく藻の一種)を屋外大量培養技術を確立し、ミドリムシを原料とする食料、化粧品、そしてバイオ燃料の研究開発を行っている注目のベンチャー企業だ。ちなみにミドリムシの他にも、ボトリオコッカス(IHI、神戸大)、珪藻(電源開発、東京農工大)、シュードココミクサ(デンソー、中央大)、ナンノクロロプシス(東工大、広島大)など、微細藻類由来のバイオ液体燃料の開発が進められている。微細藻類は、成長する過程で大気中のCO2を吸収して体内に油脂を作る。その油脂を抽出・精製し燃料にして使おうという考えだ。微細藻類由来のバイオ燃料を燃やしても、CO2は出るが、そこで発生するCO2はもともと大気中にあったCO2なので、CO2は増えない=カーボンニュートラルというわけだ。