どんな姿なのか、気になっているJB23W/43Wのオーナーも多いことだろう。
ちょっと遅くなってしまったが、ここでは新旧ジムニーの比較をしてみたい。
TEXT&PHOTO●山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi)
ヤなタイトルである。
低い。
非常にレベルが低い。
クルマに限らず、ナビ、カメラ、パソコン、ビデオ機器など、割と高額な製品を買った後というのは、その次の製品がいかによくなっているかがとかく気になるものだ。
まもなく新型が出るのを承知の上で旧型を買うか、いっそ新型を待つか。
これはなかなか難しい。
私なんぞは、新型は現代的装備の内容に応じて値段が高くなると予想したこと、初期不良がありがちなホヤホヤよりも、造り慣れた2~3年先ごろのクルマを選ぶほうがいいということから、迷いなく旧型を選んだが、普通の人は新型か旧型かを迷うのが当然だ。
旧型を買ったあと、斬新なデザインの新型が、新機能搭載、利便性向上といったブラッシュアップが図られていると、
「なんだあ、待ちゃあよかった!」
と後悔するし、値段が同等ならなおさらだろう。
かといって新型を買ったところで、新型ゆえの初期不良が起きない保証もない。
ことに旧型にあった機能が新型で省略されていたりすると「旧型買っとけばよかった」と後悔の極み。
買う前の自分のところにタイムマシンで行って「いま買っとけ」と忠告したくなる。
「待ってたらキリがないし、ほしいと思ったときが買い時だよ。」
いつだったか、私が初めて自前のパソコンを買おうかどうか迷っていたときに友人がいった言葉である。
要するに、何をいつ買ってもいっしょなのだ。
そこで新型ジムニーである(ぜんぜん話がつながっていない・・・)。
20年もの間造られ続けたジムニーおよびシエラ(ワイド)のオーナー、そして私のように、このモデルチェンジ間際に納車したオーナーにとっては、新型ジムニーがどんな姿で現れ出てくるのか、気にしていなければ嘘だ。
最近のクルマはコスト削減や懲りすぎた仕様向上で使いにくくなるモデルチェンジが多い。
自動点消灯するオートライト。
スイッチだらけで使いにくいハンドル。
右左折時の誤作動が恐ろしい、電気式ステアリングロックとセットのプッシュ式エンジンスタート。
燃料セーブで燃料代が儲かっても、その分がデバイス追加による車両価格向上ぶんや、専用設計の高額なバッテリー代にまわってしまうアイドリングストップ機構。
うたい文句ほど確実に作動しない、自動ハイビーム・・・
他にも思いつくものはまだあるが、自分の意志で操作できなかったり、補修に高額な出費を強いられる最新メカなら・・・
いらん、そんなもん。
これらがないJB23W/JB43Wジムニーなら、モデルチェンジ前で値引きも効くかも知れないし、いっそ造りがシンプルなうちに買ってしまっても後悔は少なかろ……そう読んで購入に踏み切ったシエラだったのである。
新型を眺めてみると、読みどおり使いにくそうになっていたり、退化していた点があれば、予想外に造りがよくなっていたり、旬のデバイスがなくてありがたかったところなどがある。
人だかりの発表会場でのこと、撮った写真の数に限りがあるのが申し訳ないのだが、ここでひとつ、新型と旧型とで比較して感想を述べてみようと思う。
新型で進化した点は潔く認めていじけるいっぽう、退化した点はひっひっひと笑って優越感にヒタヒタに浸りたい。
使いやすさの良し悪しは人それぞれなので、みなさんはみなさんで、その良し悪しを判断してほしい。
さあ、とにかく、JB23W/43Wオーナーのみなさん、新型の退化点を見つけて優越感に浸り、人間としての器の小ささを共有しようではないか。
と、旧型オーナーのみなさんを巻き込んでしまうことにして・・・
「いいなあ、うらやましいなあ」と認めざるを得ず、劣等感を抱いてしまう点、「旧型の勝ちだぜ・・・」と優越感に浸れる項目を数値化し、それぞれ「新型への劣等感うらやま指数」「旧型の優越感指数」として数字で示していくことにする。
お断りしておくが、その判断もコメントのほとんども、思いっきり筆者の主観による独断と偏見である。
うらやま指数と優越感指数の合計が100にならないところがこのページのいい加減なところであることもお断りしておく。
また、発表会場のステージゆえにエンジンをかけて走らせるわけにはいかなかったので、走りについてはまた別の機会にゆずりたい。
なんだかお断りばっかりだ。
①バンパー
バンパーは英語の「bump(ドシンと当たる、ぶつかる)」から転じての名称で、本来はぶつかって1番に衝撃を受けることが本分である。
だからどんなカテゴリーのクルマでも、色を塗ってスタイリッシュにキメルというのは本末転倒なのだが、旧型ジムニーでは車両キャラクターと照らしたらなおのこと、色塗りバンパーなのは妙だった。
②アンダーミラーの移設
車両左ドア付近を映すアンダーミラーが左のドアミラー下に引っ越しした。
今回は2分割され、左前輪側を小さいミラーで、それよりは大きいサイズのミラーで左後輪付近を映し出す。
パッと見たとき、自車両のどの部分に対する何が写っているのか、即座には認識できないという人のほうが多いのではないだろうか。
もっともこれは旧型も同じで、左フェンダー上に、育ち過ぎたしいたけみたいなのがちょこんと乗っかっていたが、これだって何がどうと明確にわかるわけでもない。
いずれもミラー面積が小さすぎて、法規を満たす以上のものにはなっていないのだ。
むしろ私の場合は、左側だけであるにせよ、フロントガラス内から車両幅と左先端がおおよそわかるための目安として使っているのが実情だ。
本末転倒ではあるのだろうが、これはこれで便利なので、旧型オーナーとして優越感に浸りたい。
本当はアンダーミラー機能を一体化したフェンダーミラーがいいと思うのだが、新型ジムニーのデザインは2代目に回帰しているのだから、ついでにミラーも注文仕様で「アンダーミラー一体フェンダーミラー」を用意したら選ぶ人が出てくるかもしれない。
でも、突起物規制やら歩行者保護やらに抵触するとかなんとかいうことになって無理かな。
ほんと、がんじがらめの規制はクルマの使いやすさをじゃまするぜ。
→ 新型への劣等感うらやま指数:0 旧型の優越感指数:60
③ルーフドリップ(雨どい)
新型ジムニーで私がいちばんくやしい・・・あ、いや、気に入ったのは、フロントガラス上端部以外のルーフ周囲にあるルーフドリップ(雨どい)。
「歴代ジムニー」の取材で軽ジムニーJB23Wを借り、いまのシエラJB43Wでも気になっているのは(わかっていて買ったのだが)、ドアを開けるとルーフに溜まった雨水が車内に垂れてシートを濡らすことだった。
まあ、バシャバシャバシャバシャこぼれること。
ルーフパネルとサイドアッパーレールの継ぎ目隠しを兼ねるルーフモールの溝が、雨水をドア側に落とさないようにするには浅すぎるのだ。
そもそもルーフモールに雨どいの役を持たせるのは無理があるのではないだろうか。
このへんの検証はメーカー実験部の役目なのだが、いったい実験部は何をやっていたのだろう。
昔はどのクルマにも雨どいがあったものだが、新型はそれら昔のどのクルマよりも効果がありそうな、実にしっかりした雨どいがルーフ周囲をめぐっているのはいい。
→ 新型への劣等感うらやま指数:100 旧型の優越感指数:0、いや、-100!
④メーター
⑤ハンドル
いまのクルマはスポークにやたらステアリングスイッチをつけているが、ためにハンドルのスポークデザインは、スイッチ据え付けが前提になってしまっている。
旧型だったらホーンスイッチとなるパッドがスポークにまでが及んでいたから、ハンドルグリップ(つまり輪っかの部分)を握ったままホーンを鳴らせたものが、いまならクルーズコントロールやオーディオのスイッチがあるため、中央部にとどまるホーンスイッチを押すにはハンドルから手を離さなければならない。
⑥オートライト
スイッチをAUTOにしておくと、外光の明暗に応じてライトを自動でON・OFFするヤツで、私が嫌いなデバイスのひとつだ。
自動で点消灯するのは別にいいのだが、最近のトヨタ車も含め、
OFF → AUTO → スモール → ヘッドライト
と、スイッチの「AUTO 」が「OFF」の次になっているのが気に入らないのだ。
夜のエンジン始動後、すぐに発進せずに同乗者待ちなどをするとき、自分の意志でOFFからいったんスモールにしたければ、どうしたっていったんライト点灯→スモール→ライトを強いられる配置なのが困る。
ライト点消灯の判断くらい、自分でするわい。
よけいなことせんでくれ。
最近は自動ブレーキをはじめとする安全装備のパッケージに自動で付帯することが多いから、新型ジムニーもそうなることは充分予想できた。
2020年以降のオートライト義務化の背景もある。
せめて、かつてのトヨタ車のように、
OFF → スモール → ヘッドライト → AUTO
がいい。
あるいは、
AUTO ← OFF → スモール → ヘッドライト
であるといいのだが、2020年のオートライト法制化以降はみなOFFの次はAUTOになってしまうのだろう。
いまのホンダ車は、
OFF → スモール → AUTO → ヘッドライト
となっている。
これなら昼はもちろんのこと、夜だってヘッドライトが点いてから消えてということは絶対にない。
これを考えたホンダのひとは頭がいいと思う。
よかった、オートライトと無縁なクルマを買っといて。
→ 新型への劣等感うらやま指数:0 旧型の優越感指数:120
⑦ワイパー
この時代だから、せめて新型シエラくらいは間欠モードに時間調整がつくかと思っていたが、ここだけは新旧まったく一緒。
→ 劣等感うらやま指数:0
優越感指数:0
⑧ATシフトレバー
新型は旧型前期までのストレートゲート・O/D(オーバードライブ)ボタン付6ポジション式に戻された。
ストレートがいいか、旧型後期のジグザグガチャガチャマチックがいいか、私はどちらでもいいと思っているのでコメントはなし。
旧型はロックアップ機構のなかった軽ジムニーだけに登坂変速制御(「D」または「3」位置のとき、登坂走行を検知するとシフトアップを抑制する機能)がついていたが、新型はシエラにのみ、今ふうの登降坂制御(「D」ポジション時、登坂走行を検知するとシフトダウンしてエンジン回転を高めに維持、降坂中と判断するとやはりシフトダウンし、エンジンブレーキをかける)が行われるようになっている。
つまりシエラはAT制御が進化!
軽ジムニーはロックアップが追加されたが、このあたりの制御はなくなったようだ。
→新型への劣等感うらやま指数:40(新シエラの登降坂制御に関し)
旧型の優越感指数:0
⑨トランスファー切り替え
⑩イグニッションキー
これは完全に独断と偏見でいく。
ボタンひと押しのエンジン始動は現代的だし、楽でいいのだが、いつも懐疑的なのは、一緒に電気作動で行われるハンドルロックだ。
走行中、特に右左折でハンドルをまわしている最中に誤作動を起こしたらどうなるだろうか。
表には出てこないが、探せば別のメーカー車で事例はあるのだ。
この種のボタンを眺めているうちにふと気づき、エンジン始動なんて鍵まわしてやりゃいいやと思うようになった。
メーカーも意図して故障するものを造っているはずはないが、それでもふとした拍子に不具合を起こすのが電気的故障というもの。
ティーダもインテリジェントキー付で、鍵を挿さなくてもエンジンがかけられるものだったが、ボタン式ではなく、ノブをまわすタイプだったので、ハンドルロックは旧来の機械的なものだった。
新型は現代的に進化してはいるが、特に必要性は感じない。
→ 新型への劣等感うらやま指数:0 旧型の優越感指数:90
⑪ドア内張り
グリップとアームレストが直線状の素直な形になり、日常使用下で開閉がしやすいものになったのは○。
ドアポケットは厚みが増えたのと、ポケット上部にパワーウインドウのスイッチがなくなったから、丈のあるものを入れやすくなっている。
が、しかーし!
ここにスピーカーがやってきたため、もとの木阿弥。
でも、旧型は「何が入るんだい」といいたくなる、ゴムバンド付きの中途半端なものだったから、全体的には進化しているといってよい。
→ 新型への劣等感うらやま指数:50
旧型の優越感指数:0
⑫ドアハンドルとドアロックノブ
車上荒らし対策もあってのことだろう、ドアロックがドアハンドル内に併設されたのも、20年前のままだったジムニーにとっては大きな進化で、旧型のロックノブは内張り上部後端にあり、ドアを開けるときにはいったん上半身をねじってノブを引き上げなければならない。
⑬パワーウインドウスイッチ
⑭ルームランプとルームミラー
ガラスがおっ立ち、ルーフ前端が前方に移動したことでルームミラーも遠くなった。
何もルームミラーまで同行させることはないのに、このあたりは、ミラーをいつも乗員側に寄せた設計をしているダイハツ車の勝ち。
手前の後席シートベルト未装着警告灯パネルをはさんで、ルームランプがこちら側に移動して使いやすくなったのはいい。
ミラーも向こう側にではなく、こっち側に移すべきだった。
なお、ルームミラーの防眩機能は、旧型は軽ジムニー、シエラともども全車標準装備だったが、新型の軽ジムニーは全車なくなった。
これは明らかな退化だ。
→ 新型への劣等感うらやま指数:40
旧型の優越感指数:0
⑮空調
旧型は軽ジムニー、シエラとも全車マニュアルエアコンだったが、新型は両車、上位モデルだけオートエアコン付になった。
ティーダもオートエアコンだったが、乗車してから降車するまで、クルマ任せのオートにしていたことは一度もないので、私の場合は特に必要性は感じない。
むしろ、電子コントロール系の電気的故障のほうが気がかりになる。
実際、ティーダではたまたま一度だけだが、吹出口選択のモーターが作動不良を起こしたことがある。
なんとなく自然治癒したが、こんな誤作動はご免こうむりたい。
空調のオート化なんかよりも、吹出口選択の中のくもり止めを早く独立させてほしいよ。
夏場にくもり止めを選んでいる間は風がすべてガラスに向けてしまい、その間はクーラー風を上半身に向けて出すことができない不便を、どこのメーカーも一体いつまで強いる気でいるのだろうか。
→ 新型への劣等感うらやま指数:0 旧型の優越感指数:0
⑯ETC
⑰キーなしになってしまったグローブボックス
これは堂々「ザマーミロ!」といいたいぞ(言葉が悪くてゴメン。)。
初代ジムニーから続いていたグローブボックスのキーロックがついになくなった!
というよりも、むしろ旧型はよくもまあ、途中の改良でなくならなかったというべきだ。
コスト削減のしわ寄せはたいていこのような部分が受ける。
そもそもなぜ歴代ジムニーにこのロックがあったかというと、初代~3代目までオープンモデルも揃えていたジムニーは(3代目は海外向けのみ)、ボンネットのオープナーノブをグローブボックス内に備えていたのだ(3代目は前期まで。後期型は通例どおり、運転席右下にある。)。
ノブをキー付きのボックス内に置くことによって、オープンモデルの駐車時、エンジンルームのこじ開けを防ぐ目的があった。
だからオープンモデルではないジムニーにとってはただのうれしい巻き添えだったのだが、新型はオミットされてしまった。
スズキは、エンジンは盗まれたら困るが、ボックスの中身は盗まれてもかまわないと判断したのだろう。
→ 新型への劣等感うらやま指数:0
旧型の優越感指数:2000!
⑱センターコンソールとシートヒータースイッチ
センターコンソールはまったくといっていいほど同じ。
前席用なのか後席用なのかよくわからないカップホルダーふたつぶんと、駐車ブレーキ横のもの入れといったレイアウトも同じだ。
このもの入れは、旧型は何を収めるのにいいのかよくわからない形をしているが、新型ははっきりした角形形状になったので、こちらのほうが使いやすいと思う。
なお、旧型ジムニーのコップ置きは、このコンソールにふたつ、AT車ならシフトレバー手前にひとつ(MTはなし)、そして後述する、立派な後席アームレストトレイ内に左右にひとつずつ・・・AT車なら乗車定員数以上の5つ、MT車でも4つ備えているが、新型はこのコンソール上に2つだけとなった。
3列シート車みたいに、コップ置きの数を競うなどバカバカしいと思っているので、新型ジムニーのコップ置き場の数は思いっきり減っているので、3名以上の乗車時にはけんかしないように。
⑲荷室
荷室の使い勝手向上ぶりには目を見張る。
後席両脇のアームレストをやめて、最低限ホイールハウスを覆うだけのトレイ状にし、そのトレイ面が、倒したリヤシートバック、追加されたラゲッジボックスと併せて面一(つらいち)になるようにデザインされている。
実質的には荷室幅が拡大した・・・というよりは、旧型が狭すぎたのだ。
後席2人乗りとはいえ、旧型はなにもここまでと思うほどの後席アームレストがかなり幅を狭めていた。
とまあ、このような具合に、思いっきり個人的な主観で述べてきたので、お読みの方の中には不快な思いをされた方もいるかもしれないが、もし新型ジムニーが肌に合わず(いるかな?)、「やっぱり中古の三代目さがすべ。」と方針転換した方(いるかな?)に参考にしていただければ幸いである。
他にもまだあるのだが、ひとまずは発表会場で気づいた、新旧ジムニー比較でした。
ではまた次回。
(第8回につづく)