1.開発の背景
近年、自動車用のドアロックとして、ドアハンドルに触れるだけで施錠・開錠を可能とするスマートエントリーシステムの開発が進められている。スマートエントリーシステムは、センサーの誤作動防止のためにドアハンドル部分を非導電性とする必要があり、導電性のあるクロムメッキをベース樹脂の表面に使用したドアハンドルでは実現することができなかった。一方、金属蒸着したプラスチックフィルムは非導電性であり、既に金属メッキの代替フィルムとして自動車の外装用途に実用されているが、ドアハンドルには耐ガソリン性と成形性の両立が求められるため使用されていなかった。
こうした中、帝人は、自社開発のバイオプラスチック「PLANEXT」を独自のポリマー改質技術で改良することにより、耐ガソリン性と成形性を両立したバイオプラスチック「PLANEXT SN4600」を開発し、量産化に成功した。そして「PLANEXT SN4600」に特殊な製膜技術を加えることにより、ドアハンドルを含む自動車外装用途に使用可能なフィルムの開発を実現した。
2.「PLANEXT SN4600」フィルムについて
このたび開発したフィルムは、植物由来の化合物であるイソソルビドを原料としたバイオプラスチック「PLANEXT」を改良して開発した「PLANEXT SN4600」を使用しており、「PLANEXT」の特性である耐薬品性、透明性、高表面硬度に加え、次の特性を備えている
(1)優れた耐ガソリン性ポリマー改質技術により耐ガソリン性を付加されたことで、セルフ式ガソリンスタンドなど、ドライバーの手にガソリンがつきやすい状況下での使用に適している。
(2)優れた成形性耐熱性と製膜条件を最適化することで成形性を高めており、複雑な形状の成形を可能とした。
(3)優れた耐候性基材を保護するためのUVカット機能をフィルムに付与することで耐候性を高めており、紫外線による基材の変色を防止する。
帝人はこのフィルムを、ドアハンドル以外の自動車部品にも積極的に用途展開し、拡販を図っていく。