TEXT●森本太郎(MORIMOTO Taro)PHOTO松井亜希彦(Matsui Akihiko)
エクリプスクロスは、コンパクトアッパーと呼ばれるいまもっとも熱いクラスに投入されるオールニューのSUVだ。アウトランダーと共通のCセグメントプラットフォームをベースに(ホイールベースもアウトランダーと共通)新開発の1・5L直噴ターボを搭載、全3グレードのすべてでFFと4WDを選べる。トランスミッションは全車CVTだ。ボディサイズは全長4405mm×全幅11805mmで、C−HRより大きくCX-5より小さいという絶妙なサイズ。価格は253万2600円〜309万5280円と、大激戦区のド真ん中である。
早速、試乗してみる。クローズドコースでのちょい乗りの際にも確認済みだが、エクリプスクロスは思いのほか乗り心地が良い。やや固めで引き締まった印象だが、ゴツゴツしてない。ボディ/シャシーのしっかり感、良く動くサスペンションのストロークなめらかだ。安心感やしっかり感があって、かつワインディングでは回頭性も良く、乗り心地が良いという理想的なバランスの良さを見せる。エクリプスクロスの評価ドライバー、鈴木忠志氏によれば、乗り心地、ハンドリング、静粛性のバランスを取るのが難しかったという。なるほど運転してみれば、真面目にしっかりと作り込まれたことが伺える。
1.5Lの直噴ターボはとくに低回転での力強さが印象的だ。そこそこの登り勾配でも、2000rpmも回さずとも頼もしい駆動力を発揮する。(最大トルクの発生回転数は2000-3500rpm)、さすがにどんな急勾配でもあり余るパワーというわけではないけれど、日常領域ではまるで不満はないし、「1.5Lだから」という言い訳も不要。コンパクトなエクリプスクロスを快活に走らせることができる。トランスミッションは(8速スポーツモード付きの)CVTだが、CVT特有の回転と車速の嫌なズレ感もなく、スポーツドライビングも積極的に楽しめる。ただし、このパワートレーンでしっかりとマッチングはしているものの、シャシーに余裕が感じられるため、当初投入が表明されていた2.2LディーゼルターボやPHEVなど、より高トルクのユニットでこのクルマを試してみたい気持ちにも駆られる。それはまあ、乞うご期待ということで。
過日、クローズドの雪上コースでもドライブしたが、低回転での豊富なトルク感や回頭性の良さ、積極的にアクセルを踏んで曲がっていきたくなる四輪駆動制御の特性などが確認できた。三菱自慢のS-AWCは、そんな特別なシチュエーションではもちろんのこと、日常での降雪や悪天候の際にも、“安全マージン”としてドライバーに余裕と安心感を与えてくれるだろう。
スタイリッシュな外観に違わず、インテリアもスマートだ。とくにトップグレードのGプラスパッケージは、ビルトインの7インチモニター、三菱車初採用のタッチパッドコントローラーやヘッドアップディスプレイを装備。停止保持までできる追従式クルーズコントロールを始めとする先進安全装備も備わり、所有満足度を高めている。購入を考えているなら、ぜひこのグレードをお勧めしたい。個人的に感心したポイントをひとつ挙げると、200mmもスライドする後席シートだ。SUVでは採用が少ないものの、ミニバンのような広大な空間を持たないからこそ、このロングスライドはありがたい。後席足元にはたっぷりと余裕が出来るし、レジャーの際には簡単に積載量を増やすことも出来る。とくに、軽ハイトワゴンやミニバンに慣れた人からの代替では喜ばれるに違いない。
三菱がなかなか新型車を出さないあいだに、あらゆるメーカーはスタイルも性能も機能性も先進装備も、ずいぶん高いレベルに行ってしまったのではないか、という懸念も、試乗前には正直あった。ところがそれは、嬉しい誤算だった。エクリプスクロスはたしかに三菱自動車の久しぶりの新型モデルではあるけれど、強力なライバルの中にあって決して見劣りしないばかりか、スタイル、走り、装備、実用性など、全方位にバランスが取れた、いいトコ取りの魅力的な一台に仕上がっていた。
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