従来のACCで用いられている先行車との車間距離情報に加え、先行車の加減速制御情報を車車間通信(760MHzITS通信)で取得し加減速制御に用いることで、従来のACCよりも応答遅れや車間距離の変動を減らせるため、より広い走行状況でACCを活用したり、長距離走行時におけるドライバーの疲労を軽減することが期待できる。
高速道路において、複数のトラック製造者が共同開発したCACCを用い、異なるトラック製造者が製造したトラックで後続有人隊列走行を行うのは、今回の実証実験が世界初となる。
物流業界におけるドライバー不足および高齢化は年々深刻さを増しており、特にドライバーの確保が難しい東京~大阪間など長距離幹線の輸送を隊列走行によって省人化するニーズは、ドライバー不足への対応のみならず経営効率改善や安全性向上の観点においても非常に強い。
また、車間距離短縮により空気抵抗を減らし燃費を改善したり、隊列形成前後に各々のトラックが独立して走行できるため機械けん引など既存の手段にはない汎用的な運用を行える、といった効果が期待されている。
こうした状況を踏まえ国交省と経産省では、昨年6月9日に閣議決定された「未来投資戦略2017」に基づき、2017年度中にCACCによる後続有人隊列走行、2018年度に後続無人システム(後続車にも緊急時対応用のドライバーは乗車)の公道実証を開始。2020年に新東名高速道路で後続無人での隊列走行を実現し、早ければ2022年に高速道路でのトラック隊列走行を商業化することを目指している。
今回の実証実験では、日野自動車、いすゞ自動車、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックスの国内トラックメーカー4社が共同開発したCACCを搭載する各社の大型トラックを用い、後続有人隊列走行の実証実験を実施。トラック隊列が周辺を走行する車両の乗員からどのように認識されるか(被視認性、印象など)、またトラック隊列が周辺を走行する車両の挙動(追い越しなど)にどのような影響を及ぼすかなどを確認する。
実験初日の浜松SAには、いすゞ・ギガ、ふそう・スーパーグレート、UDクオン、日野プロフィアの実験車両が集結。いずれも760MHzITS通信アンテナを左サイドミラー付近、隊列走行中は緑色に点滅するLEDランプを前方・側方・後方に追加し、「TRUCK PLATOONING」のロゴをフロントルーフスポイラーや荷台に貼付して、その存在感をアピールしていた。
実証実験は、1台の乗用車が先導車となり、その後方約80mをCACC対象のトラック3台が約30mの車間距離を保って80km/hで隊列走行。その隣を観測車が併走し、さらにそこから約1km離れた所をCACC対象外のトラックが走行する、というフォーメーションでスタートした。
なお、各トラックには、それぞれのメーカーの実験ドライバーとCACCシステム担当エンジニアが搭乗。今回の実験では加減速のみ自動のため、操舵は常時実験ドライバーが行う。また、隊列走行中のトラックの間に一般車が入った場合は隊列走行を中止し、マニュアル走行モードに切り替える。
最初に上り方面、浜松SAから遠州森町PAに向かって走行した際は、「隊列を見つけたらアンケートに答えてプレゼントをGET!」キャンペーン告知ポスター・チラシを近隣のSA・PAで展開していたためか、隊列の周囲を多くの一般車が取り囲んでいたものの、出発時のフォーメーションを維持。CACCを作動させたトラック3台は約30mの短い車間距離を保ち、きれいに走行車線を巡航し続けていた。
続けて下り方面、遠州森町PAから浜松SAに向かっての隊列走行も公開。こちらは道中で一般車が3台のトラックの間に入り、一時隊列走行を中断。また、隊列を回復後も先導車とトラックの間に一般車が入り込んだが、この際は隊列走行を継続し、約30mの車間を保っていた。
30mといえば乗用車約6台分の長さであり、その前後を80km/hで大型トラックが走行していれば、その間に割り込むのは緊急時でなければ避けたいと考えるのが一般的なドライバーだろう。だが、IC・ジャンクションの前後や渋滞車線の最後尾では無理にでも割り込んでくる可能性は高く、また不可能ではない。今後はこの車間距離を、いかに安全性を維持・向上しながら詰められるかが、一つの課題となりそうだ。
今回のコースは比較的平坦かつ3車線の区間が多いことから選ばれているが、1月30日~2月1日には北関東自動車道で同様の実験を実施予定。高低差への対応などを確認するための技術実証を行うこととなっている。