ノートe-POWERがそうせず、2モーターのシリーズ・パラレルハイブリッドと同様のレイアウトとしているのは、開発当初はエンジン直結モードを考えていたからだろう。高速域はエンジン直結で走った方が、効率は良くなるのは日産も承知のはず。コストもあるだろうが、直結モードを持つと「ホンダのシステムと一緒」と言われるのを避けたかったのかもしれない。このクラスのクルマを使う人の7割は市街地を走るというデータが得られたこともあったし、高速域をモーターだけで走っても燃費はそんなに悪くないことがわかり、思い切って割り切ったのだろう。いずれ、直結モードを持ったシステムも出てくるはずだ。
欧州で適用される超高速モードは別にして、2018年からの採用が予定されているWLTPの場合、国内のモードなら15kW程度の出力があればカバーできる。ノートe-POWERが積む駆動用モーターの最高出力は80kWで、ジェネレーターの最高出力は55kW。電池の出力は公表されてないが、25kWくらいは出せるだろうから、街中の走行はエンジンを掛けなくでもほぼカバーできるはず。ところが実際に走ると、よくエンジンが掛かった。発進しようと思ってブレーキを離した途端、エンジンが始動して2〜3秒で止まることもあったり、結構頻繁にエンジンは掛かる。
そのエンジンは、ミラーサイクルを適用しているものの、容積比は12.0でミラーサイクルとしては軽い。14.0とか15.0にすればもっと効率は高くなるが、そうするとトルクが出ないので、回転を上げる必要がある。回転を上げるとうるさいため、ほどほどに抑えたい。エンジンは2300rpm付近で回るのが基本だが、走行音にかき消されてエンジン音は気にならない。アクセルの踏み込みと連動させて回転を上げるなど、制御も上手にやっている。純粋に電動モーターによる駆動なので、加速のG波形に見られるようにEVの素晴らしい走り感を味合うことができる。
モードを切り換えるとテスラ・モデルSやBMW i3のようにアクセルペダルだけで速度をコントロールできるが、慣れると乗りやすいし、理に適っている。今まではメカの都合で仕方ないからアクセルとブレーキに分かれていたのであって本来はこうあるべきなのだ。
e-POWERが商品として成立するなら、次はシリーズハイブリッド専用エンジンを搭載したい。エンジンは振動が少なく、超ロングストロークにして高効率にできる対向ピストンエンジンの出番になる。原理的にバランスの良い対向ピストンエンジンは少数気筒(1または2)でも利用できる。エンジン形状が大きく変わるが、駆動用モーターと機械的に結合する必要はないので、エンジンとジェネレーターをフロントにおいてモーターをリヤのトランクルーム下に置いてリヤ駆動にできる。その逆も可能だ。
EVの魅力は、走行中のCO2排出量がゼロで地球にやさしいことではなく、走りの素晴らしさにある。ガソリンで走って電動の良さを味わえるようにしたら、シリーズハイブリッドになった。EVを長年やってきた日産だからわかったのだろう。電動の良さは“走り”だと。EVの煩わしさとCO2排出量のことを考えると、もう電気自動車リーフの出番はなくなったように思う。
(その③に続く)