地震が発生した際、震源から遠く離れた場所で大きな揺れが観測されることがあります。この現象は「異常震域」と呼ばれます。今回は、この「異常震域」とは何か、メカニズムなどについて説明します。


異常震域とは?

地震大国とも言われる日本。日本列島は、複数のプレートがぶつかり合う場所に位置しているため、地震が頻繁に発生し、時には大災害をもたらします。

地震が発生した際、震源に近い所ほど揺れが大きくなりますが、時として、震源から遠く離れた所で大きな揺れが観測されることがあります。この現象は「異常震域」と呼ばれます。

通常なら震源に近いほど揺れが大きくなりますが、異常震域は震源からかなり離れた場所に現れます。そして、周囲の地域と比較して、体感的に揺れが強く感じられたり、震度計で計測される震度が大きくなることがあります。


異常震域の原因やメカニズムは?

異常震域が発生する主な原因は、陸のプレートの下に潜り込んでいる海洋プレートがかたく、地震波が減衰しにくいことです。

海洋プレートの深いところで地震が発生した場合、その上にはやわらかく地震波が減衰しやすい層があるため、震源の真上近くでは比較的揺れが小さくなります。

一方で、海洋プレートはかたく地震波が減衰しにくいため、地震波はプレートの中をあまり減衰することなく伝わっていきます。そして、震源から離れた場所であっても、海洋プレートが地面から浅いところにある場所では、大きな揺れになることがあるのです。


「異常震域」の過去の事例

異常震域は、海洋プレートが潜り込んだ先の深いところで地震が発生した時によく見られます。

左図は、2007年7月16日、京都府沖(×印)の深さ374kmで発生したM(マグニチュード)6.7の地震の震度分布です。震源に近い近畿や北陸は震度1~2が所々で観測された程度なのに対し、震源から離れた関東から東北、北海道の太平洋側で震度2~3程度、最大は北海道の浦幌町で震度4の揺れが観測されました。

また、右図は、2022年5月9日、遠州灘(×印)の深さ341kmで発生したM(マグニチュード)5.2の地震の震度分布です。震源に近い東海地方などでは震度1以上の体に感じる揺れは観測されなかったのに対し、震源から離れた関東から東北南部の太平洋側で震度1~2の揺れが観測されました。


異常震域は「異常」?

「異常震域」という言葉を聞くと、何か原因不明のことが起こっているような印象も受けてしまいますが、地下のプレートの分布に伴って起こることが分かっている現象です。通常とは異なる震度分布であるために、「異常」という言葉がついてはいますが、異常震域という現象自体はたびたび起こっているものであって、何ら「異常」なものではありません。

情報提供元: tenki.jpサプリ
記事名:「 震源から遠く離れても揺れる!異常震域とは? メカニズムや過去の事例について解説