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七草といえば、お正月明けに春の七草を入れたお粥をいただき今年一年の健康を祈りました。一方秋の七草は食するというよりは愛でる草花として楽しまれてきたようです。秋の七草は? と聞かれてすらすらと言えたら素敵、と思いませんか。少し言葉を足して、五・七・五・七・七、のリズムを作り覚えやすくしたものをご紹介しましょう。
「萩(はぎ)尾花(おばな)、葛(くず)撫子(なでしこ)に女郎花(おみなえし)、藤袴(ふじばかま)から桔梗(ききょう)で上がり」
尾花はススキの別名です。ここはススキとしてもいいですね。覚え方はさまざまありますがもうひとつ、奈良時代の歌人山上憶良の秋の七草の歌もぜひ見ておきましょう。日本で初めて編まれた歌集『万葉集』に載せられています。
≪秋の野に咲きたる花を指(および)折り かき数ふれば七種(ななくさ)の花≫
≪萩の花、尾花(をばな)、葛花(くずはな)、なでしこの花、をみなへし、また藤袴(ふぢはかま)、朝顔の花≫
秋の野に咲いている花を指を折りながら数えてみると七種類あります。それは…、と二首目は七草の名前を並べて歌としています。
最後にある「朝顔の花」ですが、今の「朝顔」とは違い現在では「桔梗」とされています。平安時代に編纂された漢和辞典『新撰字鏡』では「桔梗」に「阿佐加保(アサガホ)」のフリガナがあり、かつては「アサガホ」と呼ばれていたことが解ります。
山上憶良が生きた時代は七世紀から八世紀頃。とりまく風景は大きく変わってしまっていますが、秋の野に感じる風情は今の時代と同じなのでは? と秋の七草の歌を口ずさんでみると思うのです。
秋はしみじみと感じたい。そんな時は日が暮れ静けさが忍び寄るころ、虫の声に耳を傾けてはいかがでしょうか。「虫」といえば古来、秋に鳴く虫のことをいいました。日本人は独自の感性をもってそれぞれ虫の個性的な鳴き声を聞き分け、秋の訪れや深まりを感じていたのです。平安時代に作られた『千載和歌集』にある秋の歌を紹介しましょう。
≪様々に心ぞとまる宮城野の花のいろいろ虫のこゑごゑ≫
宮城野とは現在の仙台のこと。古くは秋草、特に萩の名所としてしられた歌枕です。仙台土産として有名な「萩の月」にその名残を感じます。心に留まるのは秋草だけではありません、草花に隠れて鳴く虫の音にも耳を傾けてこそ秋と言えそうです。
「虫聞き」を楽しむようすが描かれている作品に『源氏物語』があります。第三十八帖「鈴虫」では庭に虫を放ち、聞こえてくる松虫や鈴虫など虫の音を聞きつつ虫談義に花を咲かせる雅な方々の仲秋の宴をみることができます。人と自然が密接な関係をもって生活していたことがわかります。それは時代が下がっても変わりません。
≪行水のすて所なき虫の声≫ 鬼貫
≪よすがらや壁に鳴き入るむしの声≫ 蝶夢
現代では環境によってなかなか虫の音に気づくことができない場所もありますが、ささやかな草むらにも秋の風が立つと虫の声は聞こえてきます。ぜひ耳を傾けてみてください。
天地の恵みがどっさり実る秋。太陽と大地が育てた旬の食べ物には栄養もたっぷりおまけに旨い! 食卓の賑いは健康へもつながり嬉しいものです。真っ赤に色づいたリンゴは正に健康のあかし。幼い子供の頬っぺたにもたとえられた愛らしさがあります。
「一日一個のリンゴで医者いらず」などと言われるくらい、リンゴは私たちの生活に無くてはならない果物となっています。子供の頃風邪をひいたりお腹の具合が悪いと、リンゴをすりおろして食べさせてもらった記憶はありませんか。消化もよく吸収も早いことから、体調がすぐれない時や食欲の進まない時は「リンゴでも食べておこうか」などと無意識のうちに頼りにしてしまいます。
保存する時に気をつけたいのが、温度とリンゴが放出するエチレンガスです。気温の低い涼しいところを選ぶように心がけ、水分の蒸発を防ぐためには新聞紙で包むなどひと手間をかけましょう。エチレンガスは野菜や果物の熟成を促進する作用を持っていますので、充分熟した果物などは一緒に置かないように注意します。反対に少し固めだから早く熟成させたい、というときにリンゴを隣に置いておくのはいい知恵となります。
そのまま生で食べるのが一番手軽で美味しい、という方も多いでしょう。リンゴはジャムやジュース、お菓子にと変幻自在です。リンゴに少しの砂糖とシナモンパウダー加えて煮ると即席のデザートができあがります。シャキッとした食感が残るくらいがリンゴ本来の美味しさを楽しめそうです。
エデンの園でアダムとイブが食べた、という神話の時代からいつも私たちの傍にあるリンゴ。旬の今を逃すことなく美味しく食べれば、食欲の秋をより楽しんでいけそうです。