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鹿児島県の大隅半島から南南西に約60kmの海上に浮かぶ「屋久島」。驚異的な樹齢の屋久杉をはじめとした固有の動植物、珍しい自然環境を数多く有していることから、1993年に世界自然遺産に登録となりました。
屋久島の面積およそ504キロ平方メートル。その約2割にあたる約107キロ平方メートルが世界遺産として登録を受けています。南西諸島には900以上もの島々がありますが、樹齢数千年を超える原生林を有し、海岸部から山頂部におよぶ植生の垂直分布が見られるのは屋久島だけ。この特異な生態系と優れた自然景観が評価されています。
中でも、1966年に発見された「縄文杉」と呼ばれる巨木は幹周16.4m、樹高約30mを誇り、樹齢は2,100年以上になるともいわれています。この縄文杉を観るには標高差約600m、往復で10時間程度かかる登山が必要となるため、しっかりとした事前準備が必須。縄文杉までの道中には、切り株の中から見上げるとハートの形が見える「ウィルソン株」や樹齢約3000年の「大王杉」などを見ることもできます。
「屋久島」と同じく、1993年に世界自然遺産として登録された「白神山地」。青森県南西部から秋田県北西部にまたがる130,000haのエリアの総称で、このうち、原生的なブナ林で占められている区域16,971haが世界自然遺産として登録されています。
人為の影響をほとんど受けていない原生的なブナ天然林は東アジア最大級の規模。約8000年前の植生とほぼ変わらない森の姿を観ることができ、多種多様な動植物が生息するなど貴重な生態系が保たれています。
白神山地はその広さのため、一度は見ておきたい景勝スポットや出会える動植物が多数。中でも、コバルトブルーに輝く「青池」はとくに有名で、晴れた日には池の底に倒れた木が見えるほどの透明度を誇ります。
北海道の北東部にある半島で、地図で確認するとサイの角のような形をしている「知床」。世界的に見てもごく限られた地域だけでしか見られない流氷が見られることで有名です。知床は、北半球において流氷が接岸する南限とされ、流氷によって運ばれる栄養分は海を豊かにし、サケなどの魚介類を育みます。川に遡上したそのサケをヒグマが食べ、その糞や死体が土に返り、知床の森を育みます。知床は、その希少な動植物の生息地としてはもちろん、海から陸、山へとつながる生態系が評価され2005年に世界遺産に登録されました。
日本国内においては海洋を含む初めての自然遺産登録で、「オロンコ岩」「夕陽台」「プユニ岬」「フレペの滝」など、海に関する景勝スポットが多数。また、活火山を含む標高1,500m級の連山がある知床では「知床峠」や「知床五湖」、「カムイワッカ湯の滝」などを観ることができます。
東京23区から見て南の海上約1,000kmの太平洋上に位置する「小笠原諸島」。聟島(むこじま)列島、父島列島、母島列島など大小30あまりの島々で構成されており、そのすべてが東京都に属しています。約4,800万年前に始まった火山活動から生まれたこれらの島々は、これまで一度も大陸と陸続きになったことがなく、小笠原諸島でしか見られない固有の動植物が数多く生息。小さな海洋島における生物の進化を示す典型的な見本として評価され、2011年に世界自然遺産に登録されました。
小笠原諸島の生態系の特別さを示すのがカタツムリ。小笠原諸島で記録された陸産貝類約106種のうち、94%に当たる100種が固有種とされています。同じ種類の生き物が環境の違いによってそこに適した形や色へと変化する「適応放散」が観察できるのが小笠原のカタツムリの特徴です。
江戸時代に「無人島(ぶにんじま)」と呼ばれていた小笠原。その後、“ブニン”が“ボニン”に転訛し、小笠原諸島の透き通った海はボニンブルーと呼ばれています。小笠原の豊かな海が生む絶景が観られるほか、イルカやクジラといった海洋生物を間近で観察することもできます。
鹿児島県、沖縄県にまたがる「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」。世界的にも稀少な亜熱帯の森が守られており、その中で多様な固有種生物が生息している点が高く評価され、2021年7月に世界自然遺産に登録されました。日本の陸生脊椎動物の約57%が生息し、そのうち44%が日本の固有種という生態系が維持されています。
奄美諸島や沖縄といえば、美しい海に代表される大自然が満喫できるリゾート地というイメージがありますが、この世界自然遺産登録を機に希少な生態系にも目を向けたいところ。現地を旅した際はアマミノクロウサギやイリオモテヤマネコ、オキナワトゲネズミ、ヤンバルクイナなど、絶滅が危惧されている固有種を観察するツアーにも注目です。
日本が世界に誇る世界自然遺産の数々、いかがでしたか?
世界遺産と聞くと“人気の観光地”というイメージが先行しがちですが、登録の理由はどれも希少な自然環境や固有の動植物の生態系が維持されているなどの理由があります。観光で訪れた際は、その自然環境やそれらを守る人々へのリスペクトの気持ちを忘れず、観光する際などは決められたルールやマナーは徹底して厳守するよう心掛けましょう。