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月食は太陽・地球・月が一直線上に並ぶ、満月の時に起こる天文現象。太陽に照らされてできた地球の影に月が隠れることで、地上からは月が欠けていく様子が見られます。満月のときに必ず月食が起こるとは限らないのは、なぜなのでしょうか。月の公転面は地球の公転面に対して約5度の傾きがあります。そのため、満月の時でも多くの場合は地球の影に入らず、北側や南側に外れた位置を通ることになるのです。
観察する場所によって時刻が変わる日食とは異なり、月食はどこでも同じタイミングで起こります。一方、同じ時刻であっても場所が違うと月が見える方位や高度は異なります。11月19日の満月は16時18〜19分から欠け始め、18時2分過ぎに部分食が最大となります。食の最大後、月は段々と元に戻り、19時47分過ぎに部分食が終了して満月の姿に戻ります。部分食の始まりから終わりまでは、およそ3時間半。どんどん変わっていく月の様子を、ゆったりと眺めることができますね。
北海道や東北北部では、空に月が昇ってから部分食が始まります。それより南の地域では、部分食が始まって月が欠けた状態で昇ってくる「月出帯食(げつしゅつたいしょく)」となります。食の最大の時刻にはどの地域でも月が空に昇っているので、全国で月食を楽しむことができます。部分食の始まりは東の低空になりますので、視界が開けた場所から観測しましょう。
地球の影で覆われる月の直径の度合いを、「食分」という数値で表します。食分の値が大きいほど影の中に月が深く入ることを意味し、1.0以上で影の中に完全に入り込む「皆既月食」となります。皆既食では1を超える値で表すこともあり、月全体のさらに外側まで地球の影が覆っていることを表します。
今回の月食の最大食分は0.978以上で、月の直径のおよそ97.8%が地球の影に隠されることになります。ほぼ皆既月食に近い数値で、部分月食としては大きな値です。食分の値が大きいことを「深い」と表現することがあり、このような月食は「深い部分月食」といわれます。皆既食と同様の全体的に赤みを帯びた満月に、わずかに白い部分が残る様子が見られるでしょう。
さらに今回は、月食の継続時間がとても長く、部分月食としては1901年から2200年の間で最長の現象になるそうです。高く昇るにつれて、徐々に変化していく月のかたちを存分に楽しみたいですね。
月食の月はおうし座にあり、プレアデス星団(すばる)の右側に並んで位置しています。日が落ちて空が暗くなるのと比例して、月食が進んで欠ける部分が多くなり、月の明るさも陰っていきます。暗さが増した空に、プレアデス星団の星々が徐々に明るく輝いて見えるでしょう。赤銅色の月の下の方には、おうし座の赤い星・アルデバランがあり、2つの赤い天体の競演も。 満月の姿かたちと色味の変化はもちろん、背景の星空にも注目してみましょう。
参考文献
『アストロガイド 星空年鑑 2021』 アストロアーツ
・参考サイト
アストロアーツ
国立天文台
【ライブ配信】部分月食(2021年11月19日)