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「山わさび」というツンと辛い薬味をご存じですか。名前に「わさび」とつきますが、日本原産の本わさびと違って、山わさびは東ヨーロッパの原産です。呼び方もさまざまで、一般的には「ホースラディッシュ」「西洋わさび」と呼ばれますが、フランス名では「レフォール」、日本政府の統計データでは「わさび大根」で記載されています。
北海道では広く「山わさび」と呼ばれていて、普通にスーパーなどで買うことができます。きれいな水をたくさん使って育てられる本わさびと違って、山わさびは畑で育ちます。色は、本わさびは緑色ですが、山わさびは白。本わさびと同じように、すりおろしたりして使いますが、お刺身などの和風料理に合う本わさびとは対照的に、山わさびは肉料理によく合います。
山わさびは、フィンランドをはじめ東ヨーロッパが原産で、日本には明治時代のはじめに導入されました。冷涼な気候に適しているので、日本では主に北海道で栽培されていて、山で野生化したものもよく見かけます。大きいものだと、根が30cmほどにもなり、一般家庭でも簡単に栽培することができます。
ところで、山わさびの別名「西洋わさび」という単語を、どこかで見たことがありませんか。そう、チューブ入りわさびの原材料を見てみると、本わさびとともに、西洋わさびの文字が並んでいることがよくあります。チューブ入りわさびは便利なので、家庭でお刺身などによく使われますが、実はその中身には、肉料理に合う西洋わさび(山わさび)も使われているというのは驚きですね。
日本では、お刺身には本わさびが定番ですが、西洋料理では、ローストビーフのつけ合わせの定番が山わさびです。山わさびのツンとした辛味と独特の青臭い香りは、肉料理との相性がよく、牛肉をはじめ豚肉、鶏肉、鹿肉など、どんな種類の肉にも使われます。
生クリームに山わさびやオリーブオイルなどを加えた濃厚な白いクリームソースは、ローストビーフに添えるソースの定番で、お肉以外に野菜のディップなどにも使うことができます。
チューブ入りわさびなどに使われる山わさび(西洋わさび)は、主に中国産が使われていますが、北海道で生産されている山わさびは、地元では生食用にそのままで売られていたり、さまざまなものに加工されたりしています。
生の山わさびをすりおろして薬味として使う場合は、ローストビーフをはじめ、ステーキなどの肉料理に添えたり、お茶漬けにほんの少しのせたりします。北海道ではイカ刺しは生姜醤油で食べますが、生姜のかわりに山わさび醤油で食べてもおいしいです。
よく見かける加工品に、山わさびの醤油漬けがあります。これは、細かく刻んだ山わさびを醤油などに漬けこんだもので、瓶詰めで売られています。ご飯のお供だけでなく、豆腐にのせたり、炒め物のアクセントとして使ってもおいしいですよ。ほかにも、山わさびのドレッシングなども定番です。また、最近は大手のメーカーからも北海道限定で、山わさび味のスナック菓子が続々登場。北海道旅行のお土産として、山わさびの加工品やスナック菓子も喜ばれています。
参考
旬の食材百科:ホースラディッシュ(レフォール/西洋わさび)
金印株式会社:「西洋わさびについて」
S&B:おろし生わさび
NPO法人 オホーツク21世紀を創る会:山わさび 北海道では馴染みの薬味
『もっとからだにおいしい野菜の便利帳』, 高橋書店, 2011
日本の山わさびのほとんどが、北海道で栽培されていて、生食用や加工品用として使われています。植えつけ時期は4月後半から5月。収穫は10月後半から11月です。そろそろ雪解けがはじまってきた北海道。畑に積もった雪も解けはじめ、徐々に小さくなってきています。4月の後半になると道南では桜が咲きはじめ、ちょうどそのころには、道東などで山わさびの植えつけが始まります。ツンと辛い山わさびが今年もたくさん収穫されるのが今から楽しみですね。