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大根やキャベツを雪の下に埋めて保存すると、甘くておいしくなります。この越冬野菜と同じように、ジャガイモを低温で越冬させたのが「よくねたいも」です。「よくねたいも」はホクレン農業協同組合連合会(略称 ホクレン)のオリジナル商品で、独自の方法で貯蔵して、毎年3月になると販売が開始されます。
「よくねたいも」を保存する時は、貯蔵庫の空気をコントロールして、空気中の成分を人工的に変化させます。すると、ジャガイモの呼吸が抑制され、発芽を抑えて“眠らせる”ことができます。これにより劣化を防ぎ、長期保存が可能となります。このように、空気を調整して保存することを「CA貯蔵」(CA=Controlled Atmosphere)といいます。
コントロールされた空気で品質を維持し、低温で長期間ジャガイモを眠らせることで、デンプン質が糖に変化し、甘さがぐんと増すというわけです。ホクレンではCA貯蔵により、ジャガイモだけでなくニンジンや玉ネギも長期保存しています。
〈参考:ホクレン「よくねた野菜」〉
3月になると九州産などの新ジャガが出回るようになりますが、北海道では秋に収穫し越冬させた「よくねたいも」が発売されます。つまり、北海道のジャガイモの旬は、秋の旬に続き3月が二度目の旬、というわけです。
北海道産の新ジャガが出回る7月ころまでは、「よくねたいも」のように甘みと旨みが増したジャガイモのおいしい季節です。
今年は暖冬・少雪のため、雪の下に埋めて越冬させる大根やキャベツが凍ってしまい農家を悩ませましたが、CA貯蔵だと天候に左右されないので、甘~いジャガイモが安定供給されますね。
「よくねたいも」で商品化されているのは、6品種。3月に発売されるのは男爵、メークイン、キタアカリ、インカのめざめです。少し遅れて4月からは、ひかる、きたかむいの販売が始まります。6つの品種にはそれぞれ特徴があり、用途によって使い分けてほしいところ。熟成して甘くなったジャガイモ。6つすべての品種を食べ比べてみたいですね。
・男爵
果肉は白。デンプン含有量が高く、食感はホクホク。粉ふきいもやマッシュポテトなどに適している。
・メークイン
形がつるりとしていて細長い。目が浅く果肉は黄白色で、しっとりとした粘質。煮崩れしにくいので煮物に適している。
・キタアカリ
果肉は黄色。デンプン質が多いので短時間で火が通る。
・インカのめざめ
果肉は濃い黄色。滑らかな食感でナッツや栗のような食味。
・ひかる
ポテトサラダやコロッケに最適。
・きたかむい
果肉は白い。肉質はやわらかいが、煮崩れしにくいので煮物に最適。
〈参考:JAようてい「ようていの味覚」〉
北海道産のジャガイモはどうしておいしいのでしょう。畑の気温の寒暖差や土壌の質など、さまざまな要因が考えられますが、気温が低いということもあげられるでしょう。
長期低温保存で甘く熟成した「よくねたいも」が出回るころに、北海道はようやく雪解けが始まります。気温がまだまだ氷点下の日もあるので、イモの輸送時も温度が低く、また、スーパーで出回ったものを自宅で保存する際も、低い温度を維持することができます。ゆえに、甘さが保たれるというわけです。
「よくねたいも」は気温が高くなると、糖度が一気に減ってしまいます。北海道以外の多数の府県でも販売されていますが、道外は3月だと桜が咲くほど気温が高くなります。そのような気温の中を輸送されて店頭に並ぶと、高かった糖度が一気に減ってしまい、せっかくの甘さが台なしになってしまいます。
気温が高い温暖な地方にお住まいの方が「よくねたいも」を手に入れた場合は、そのおいしさを保つために低温で保存することをおすすめします。
〈参考:八百屋 すず辰「“よくねたいも”は起こさない」〉
3月になると九州産の新ジャガが出回ります。新ジャガはみずみずしく、皮が薄いので、フライドポテトにするとおいしいといわれています。3月はまた、じっくりと長期低温保存して甘~く熟成した北海道のジャガイモも出回る季節です。新ジャガと熟成イモ、どちらも楽しめるなんて、3月はなんとぜいたくな月なのでしょうか。