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昭和の時代、甘くて皮が薄いスイートコーンが現れる前に食べていたトウモロコシは、皮がしっかりとしていて、手でポロッと実をはずすことができました。食べる時は、がぶっとかぶりつくのではなく、手で1列ずつ実をはずしながら食べたことがある人も多いのでは。
昔のトウモロコシの実の形は偏平で、茹で上げたトウモロコシの実が一列一列きれいに並んでいるその姿は、ピアノの鍵盤のようにも見えます。
手で実をはずすことができるくらい皮がしっかりしているので、噛みごたえがあり、ジューシーとはほど遠い食感ですが、噛むとモチモチしていて、ほのかに甘みを感じます。
糖度が高いスイートコーンのように「甘い」味はしませんが、塩味が似合うので、夏、汗をかいた後は、とりわけおいしく感じたものです。
昔のトウモロコシは、「モチトウモロコシ」「モチキビ」「モチキミ」などとよばれ、甘いスイートコーンが出回る前は、全国で栽培されていました。粒の表面がワックスをかけたようにツルツルしていることから、ワキシーコーンともよばれています。実のデンプン質にモチ性があるため、実がモチモチしているのが特徴です。
日本には数種類の在来種があり、色は黄色をはじめ、白や黒、紫や赤紫など、7種類のモチトウモロコシがあります。現在、在来種は、北海道、山梨、長野などで流通していますが、一般的に食べられているトウモロコシがスイートコーンに置き換わってしまったため、私たちがお目にかかることはほとんどありません。
モチトウモロコシは若いうちに収穫し、蒸して食べるとモチモチした食感になります。最近はトウモロコシを皮ごと電子レンジで蒸して加熱する方法が主流になってきましたが、モチトウモロコシも蒸すとおいしく食べることができます。もちろん、茹でてもOK。
スイートコーンのように「甘い」ことに重きをおかないモチトウモロコシは、塩をまぶしてから蒸して、歯ごたえのある皮をカミカミしながら食べたいものです。
〈参考:農研「モチトウモロコシ」〉
50代以上の人だと、昔のモチトウモロコシの味を覚えていると思います。昭和40年代からハニーバンタム、ピーターコーンというように、甘くて皮が柔らかい種類のトウモロコシが流通し、いつの間にかモチトウモロコシは消えてしまいました。甘くてジューシーなトウモロコシは、それはそれでおいしいですが、昔食べた、あのモチトウモロコシを今一度、食べてみたいものですね。
※写真はイメージです