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北海道ではほとんどの地域で「とうきび」と呼びます。「とうきび」という呼び方で有名なところでは、札幌の大通公園の「とうきびワゴン」があります。焼いたとうもろこしに醤油で味つけをして売っている札幌名物の屋台で、その店の名前を「とうきびワゴン」といいます。
同じ北海道でも函館を中心とする道南では、「とうきみ」と呼びます。
「とうきび」も「とうきみ」も略して「きび」とか「きみ」と呼んだりするので、北海道の道の駅の直売所ではよく、「ゆできびあります」「ゆできみあります」などの立て札を見かけます。「きび」はなんとなく想像はできても、「きみ」という呼び方から「とうもろこし」が結びつくでしょうか…。「とうきび」や「とうきみ」と呼ぶ習慣がない地方から来た人は、その立て札を見て、はたして茹でたとうもろこしをパッと思い浮かべることができるかどうかは疑問ですね。
16世紀、ポルトガル人によって日本に伝えられた「とうもろこし」は、それよりもずっと以前に中国から伝えられていた「もろこし」という植物によく似ていたので、唐のもろこし(唐は舶来という意味)で「とうもろこし」と呼ばれるようになりました。
当時は同じ舶来という意味で「南蛮」という言葉も使われていたため、「きび」にも似ているとうもろこしは、「なんばんきび」と呼ばれるようにもなりました。その名残で近畿地方などでは、とうもろこしは「なんばん」や「なんば」と呼ばれています。
余談ですが、北海道では唐辛子のことを「なんばん」と呼びます。同じ「なんばん」でも、北海道では唐辛子、近畿地方ではとうもろこしのことを指します。ちょっとややこしいですね。
茨城の一部ではとうもろこしのことを「とうむぎ」と呼びます。これが転じて「とうみぎ」になったと言われていますが、「とうむぎ」よりも、転じた「とうみぎ」のほうが、なぜか広い地域で使われているのが不思議です。
「とうみぎ」という呼び方を聞いたことがない人は、いきなり「とうみぎ」と言われても、何を指しているのかわからないどころか、「もしかしたら“とうひだり”もあるのかもしれない…」などと思う人も(わずかに)いるかもしれませんね。
これらのほかにも、日本にはとうもろこしの呼び方がまだまだたくさんあります。たとえば、「こうらい(きび)」「もろこし」「とうまめ」「とうなわ」などなど、200種類以上もあるとする人もいます。こんなに呼び方が違う野菜も珍しいのではないでしょうか。
とうもろこしのおいしい季節です。最近は電子レンジで加熱する方法が定番になりつつあります。茹でても、焼いても、炒めても、揚げても、スープにしても、どのように食べてもおいしいとうもろこし。さあ、今年の夏も思う存分、とうもろこしのおいしさを堪能しておきたいですね。