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また、毎月21日は「漬物の日」です。私たちにとって身近な「漬物」ですが、はかり知れない不思議がいっぱいです。
~パリパリ、ポリポリ、シャキシャキ……歯ざわりや歯ごたえまで食欲をそそる漬物も、昔は「お年寄りが食べる(若者は食べない)」イメージがありました。しかし今では、コンビニが自社ブランドの漬物をお手頃価格で販売。酒のつまみにと、会社帰りに買って帰る人も多いとか。今回は健康的で安心して食べられる、癒し効果もある漬物あれこれをご紹介しましょう。
名古屋市郊外に、漬物の神として有名なカヤノヒメを祭った萱津(かやつ)神社があり、この神社に漬物についての言い伝えがあります。
その昔、里人がその土地から採れる野の初物、海辺から取れる藻塩(もじお)を初穂として、お供えしていました。しかし、せっかくの供物が腐ってしまうのを嘆いた人が、甕(かめ)を備え、この中に供え物を入れてお供えしたところ、ほどよい塩漬けとなり、人々は時がたっても変化しない不思議な味を、神からの賜り物として尊び、諸病免除、万病快癒の護符として、また保存食品として備蓄したとあります。
また、いつの頃からか、これを「香の物」と書くようになりました。
萱津神社では、この故事に従って毎年8月21日を「香の物祭」として祝い、全国の漬物業者が参詣するようになり、漬物業界では毎月21日を「漬物の日」と定めました。
漬物とは、様々な食材を食塩、酢、醤油、酒粕(さけかす)、ぬか、味噌……などの漬け込み材料とともに漬け込み、保存性を高めるとともに熟成させ、風味をよくした食品。
また、漬物は発酵食品の代名詞とも言われます。野菜を調味料やぬかに漬け込むと“乳酸菌”や“酵母菌”が発酵し、これにより漬物独特のうま味や味わいが生まれます。漬物に含まれる植物性乳酸菌は動物性乳酸菌に比べて生きたまま腸に届きやすく、腸内の善玉菌を増やす働きをします。
お腹の調子を整える、免疫力UPなど漬物に含まれる植物性乳酸菌は健康にも欠かすことのできない存在。乳酸菌は酸味のある漬物ほど多く含まれており、キムチやぬか漬け、野沢菜などに多く入っています。
調味料やぬかに漬け込むだけで日持ちするようになり、うま味が増し、栄養価も高まる……考えてみればミラクル! 里人が神からの賜り物として尊んだというのも、納得ですね。
また漬物は、それぞれの地方の習慣・産物・気候などによって漬け方が異なり、多種多様。日本の漬物は欧米のチーズに匹敵するともいわれ、長い年月かかってその地方独特の味を出しているものが多いそうです。知れば知るほど……ミラクルですね。
かつて、漬物は家で漬けるもので主婦の大切な勤めのひとつでした。漬物樽(つけものだる)に米ぬかや水、塩、捨て漬け野菜……などで「ぬか床」をつくり漬物石をのせ、手入れして育てました。
そうして、丹精して育てたぬか床は歳月を経て、代々、受け継がれるものもありました。
『吾輩は猫である』『坊ちゃん』などで知られる、千円札でおなじみの文豪、夏目漱石の孫、半藤末利子(はんどうまりこ)著『夏目家の糠(ぬか)みそ』をひも解くと、なんとそこには、江戸時代から代々伝わる、漱石も食したぬか味噌があるというから驚きです。
末利子の祖母(漱石の妻、鏡子)が夏目家に嫁ぐ際に大切に持参したのが、実家に代々伝わるぬか床。それが漱石の長女、筆子に受け継がれ、さらに(筆子の娘)末利子へとリレーされたということです。
おいしくするコツは「おいしくなれ~」と力を込めて天地返しをすること。そして乾燥大豆の粒や昆布、さらにはすき焼きの残り汁(!)まで、入れるとか。
かつて東京農業大学の教授がこのぬか床を調べたところ、ぬか味噌はなんと200年以上前のもので、日本最古の乳酸菌が発見されたということです。ぬか味噌自体の塩分はごくごく控えめ。匂いもフルーティないい香りとか……。
さて、漬物のお味は……想像つきませんね?
今ではスーパーでも「ぬか床セット」や「浅漬けの素」などが販売され、市販の熟成ぬかも出まわったことで、自宅で手軽に漬物がつけられるようになりました。自分好みの味に仕立てるのも楽しいし、美味しい漬物ができたら、誰かにも食べさせたくなりますね。
主婦が漬物樽に漬物をつけていた頃、「ぬか味噌くさい女」「ぬか味噌女房」……というような侮蔑表現がありました。所帯じみた、所帯やつれした……という意味合いで、今なら「セクハラ」「パワハラ」でしょうか? 時代を感じさせますね。
美味しくて、楽しくてヘルシー……!
ペットを育てるように、あなたも愛情こめて、ぬか床育ててみませんか?