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今日9月16日は、メディアアーティスト、研究者、実業家として脚光を浴びる落合陽一氏(おちあい よういち 1987年~)が誕生した日。31歳という若さながら、人間・モノ・自然・コンピューターがシームレスにつながり合う「デジタルネイチャー」という世界観を提唱し、「現代の魔法使い」と評されています。
テクノロジーの進化が飛躍的に進む現在。来たるべき未知の世界を前に、世の中にはさまざまな見解があふれています。
「近い将来、人工知能に人間の仕事が奪われ、ロボットの知性が人間を超えるのではないか」
「ベーシックインカムが実現して、人間は労働から解放されるかもしれない」
今回は、「シンギュラリティ」というキーワードとともに、落合陽一氏が見通す超AI時代の人間の生き方について探ってみましょう。
人工知能やAI(artificial intelligence)と共に、このところ頻繁にメディアに登場する「シンギュラリティ(Singularity)」という言葉をご存じでしょうか。「特異点」を意味し、物理学や数学の世界では「他と同じようなルールを適用することができない点」を表します。
この言葉を世界的に有名にしたのは、AIの権威でアメリカ合衆国の発明家、実業家、未来学者であるレイ・カーツワイル(Ray Kurzweil 1948年2月12日~)です。彼はテクノロジーの進化のスピードが「無限大」になるシンギュラリティが、2045年に到来すると予言しているのです。
テクノロジーが人間の予測不可能なほどに進化すると、世界は、私たちの生活は、いったいどのように変化するのでしょうか。
最近の身近な例では、スマートフォンがあげられます。iPhoneが発表されて、わずか10年ほどですが、もはや生活の必需品といっても過言ではありません。電話、カメラ、SNS、パソコン、ゲーム、音楽、映像。すべてがコンパクトなスマートフォン1台に収まり、手軽に持ち運べる時代が来るとは!
「スマートフォンの普及による結果、人はインターネット上に第二の言論・視聴覚空間を作り、住所を持ち、SNSを生み、社会を形作った。言うなれば人はデジタル空間にもう一度生まれた。」と、落合氏はいいます。
「たった10年でヒト・モノ・カネ・環境・哲学・美意識に至るまで劇的に世界のすべてを作り変えたのだ。」
テクノロジーが進歩するスピードが加速している今は、来たるべきシンギュラリティ前夜といえるのかもしれません。
それを裏付ける事実として、テクノロジーの進化が「エクスポネンシャル(exponential function、指数関数的)」に進行していることが、カーツワイルによって指摘されています。
エクスポネンシャルとは、倍々の法則で加速度的に進化が上昇していることを意味します。右上がりどころか、このまま進むと、やがてその方向が横軸に対してほぼ垂直に上を向きます。それは、進化のスピードが「無限大」になることを意味するのです。その点こそが、技術的特異点、シンギュラリティです。
それは、「人間の能力が根底からくつがえり変容する」レベルの現象とのこと。人間のつくり出したテクノロジーが、人間を超えた存在になり進化し続ける世界とは?
本当にそんなことが起こるのか、懐疑的な見方もありますが、テクノロジーが進化を止めることはないでしょう。私たちに必要なのは、シンギュラリティの到来を恐れず、楽観もせずに、来たるべき未来の形を日々検証し、望ましい未来の形をイメージしていくことではないでしょうか。
デジタル革命がさらに進化し、第4次産業革命の時代といわれる現在。段階的にやってくるであろうシンギュラリティまでに、私たちの「生き方」「働き方」「生活習慣」は、どのように変化していくのでしょうか。落合陽一氏の著作『超AI時代の生存戦略』に提示されるビジョンの一部から考察してみましょう。
◆「ワークライフバランス」から「ワーク“アズ”ライフ」へ
いつでもどこでも情報と繋がることができる社会では、仕事とプライベートが混在する機会が増えています。もはや、ワークとライフを切り離して考えるのではなく、なるべくライフとしてのワークにすることが望ましい働き方と落合氏。
そのためには、余暇のようにストレスレスに働けるように環境を整えることを心がけるべき。今の社会においては、雇用され、労働し、対価をもらうというスタイルから、好きなことで対価を生み出すスタイルに転換することが重要といえます。差別化した人生価値を、仕事と仕事以外の両方で生み出し続ける人が生き残る時代に。
◆誰もが「スペシャリスト」を目指すべき
コンピューターに代替されないためには、スペシャリストであることが大前提。さらには、専門性があるスペシャリストと、バランスよく知識を持つジェネラリストの部分を持ち合わせることが重要です。
そのためには、あらゆるものにフックをかけながら専門性を磨いていく必要があります。落合氏によると、フックをかける機会として意外にも受験勉強がよい機会とか。受験勉強を楽しめるタスクや能力も身に付けておいて損はないそう。シンギュラリティを見据えた戦略的受験勉強、学生の方はぜひトライしてください!
◆人間が機械に勝るのは、身体性能のみ!?
これからの私たちは、コンピューターに解けない問題を脳で解いたり、コンピューターにできない運動を人間の手で行ったり、頭と体のどちらかを重点的に使わざるをえなくなると予測されます。
そのためには、脳と同じくらい体も鍛えておくべきと落合氏。さらには、デジタルソースを使って運動することを推奨しています。結果を目に見えるかたちで把握し、モチベーションに繋げるのがコツ。テクノロジーの時代になっても「体が資本」。脳の働きを良くし、ツールを使いこなすためにも、自分の体を鍛錬し大切にしましょう。
いかがでしたか?落合陽一氏が見せてくれるシンギュラリティに向けてのフレームは、より軽やかな個としての人間性の追求に立脚しているように思えます。テクノロジーと調和し、人間の幸福を再構築する。新しく目の前に広がるであろう世界を、恐れるのではなく胸をおどらせながら待つ。各自の幸福観やビジョンを深めながら、自分の生き方をあらためて考える時がきているのかもしれません。
参考文献・引用
落合陽一『超AI時代の生存戦略~シンギュラリティに備える34のリスト』大和書房 2017
参考文献
齋藤和紀『シンギュラリティ・ビジネス AI時代に勝ち残る企業と人の条件』幻冬舎新書 2017