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アニサキスの幼虫は白っぽい糸のような線虫の一種で、体長は2~3cm、太さは0.5~1mmほど。主にサバ、イワシ、カツオ、サケ、イカ、サンマ、アジなどの内臓に寄生しており、魚が死んでから時間が経つと、内臓から身の部分へと移動してきます。
アニサキスの幼虫が付いた魚を生で食べると、食後6~8時間ほどで、みぞおちの激痛や悪心、嘔吐などの食中毒症状(アニサキス症)が現れることがあります。とくに、激しい胃痛の症状が特徴で、「キリキリと締めつけられるように痛い」「のたうちまわるほど痛い」と訴える患者も多いといいます。これは、幼虫が胃壁に刺入して刺激するため、胃の中で異物を排出しようとする反応が起きるからです。
ただ、幼虫を食べても必ず発症するわけではありませんし、アニサキス症で死亡することもほとんどありませんが、中毒と疑われる激しい症状が生じたら、すみやかに受診することをおすすめします。多くの場合、内視鏡で胃の中の幼虫を取り除けば、激痛や嘔吐などの症状は治まるそうです。
また、疲労や寝不足などで身体が弱っていると発症しやすくなるため、体調がすぐれない時は、魚介類を生で食べるのは避けたほうがいいでしょう。
厚生労働省によると、2016年度のアニサキス中毒の報告件数は、10年前の20倍を超える124件(126人)。2013年から、食中毒被害としてアニサキス症の届け出が義務化されたことが、急増の一因とみられています。また、以前は生食しなかったサケやサンマを、寿司ネタや刺身で食べる食生活が一般化したことも関係しているようです。
ただし、医師の間で届け出の認知が広まっていないため、実際の患者数はもっと多いとみられています。国立感染症研究所が行った調査では、年間で約7000人の患者がいると推計されており、厚生労働省ではアニサキスに対する厳重注意を、事業者や消費者に向けて広く呼びかけています。
アニサキスは70度以上で加熱するか、マイナス20度で24時間冷凍すると死滅します。ただし、酢や塩に漬けただけでは(ワサビを付けても)死滅しませんので、生の身を酢で処理する「しめサバ」や、身の中心部まで火を通さない「炙り(あぶり)、レア系」のメニューを調理する際にも注意が必要です。
【アニサキスによる食中毒の予防法】
●魚を購入する際は、できるだけ新鮮なものを選ぶ
●丸ごと1匹で購入した場合は、すみやかに内臓を取り除く
●内臓は生で食べない
●マイナス20度で24時間以上冷凍する
●目視で確認して幼虫を取り除く
その他、「よくかんで食べれば大丈夫(幼虫をかみ殺す)」との説がありますが、小さい幼虫を口の中で確実にかみ切ることは難しく、何回かめば有効かなどの科学的根拠もありませんので、あまりオススメできません。
また、スーパーや飲食店の刺身・生食用の魚介類は、ほとんどが冷凍または除去処理がしてありますが、まれにアニサキスが付いていることがありますので、もし渦巻き状・糸状の幼虫を見つけたら取り除いてください(スーパーの鮮魚コーナーにも、同様の注意が表示されています)。
激しい症状でツラい思いをしないためにも、魚介類を生で食べる際には、念のために自分の目でしっかり確認することが肝心といえそうです。