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日本映画連合会によって「映画の日」が制定されたのは、1956年のこと。
1896年11月29日に、日本で初めて映画が上映されてから「60年」の節目にあたることを記念して、さらに「人びとが覚えやすいように」と日にちを2日ずらした「12月1日」を映画の日と定めたのです。
1950年代の日本といえば、第二次大戦からの復興期。
「映画を観る」という行為が、大衆化していった時代でもありました。
都市の中心や繁華街だけでなく、中小の工場が密集する工業地帯や、地方の盛り場にも、おびただしい数の映画館が誕生していったのです。
そんな熱気に満ちた時代、映画館に集まる観客も、若者が中心でした。
まだ自宅にテレビがない時代の若者にとって、「映画を観る」ことには現在の私たちが想像する以上の意味があったのかもしれません。
こうした世相を背景に制定された「映画の日」。当初は映画にまつわるさまざまなイベントが実施される日として機能していたようですが、時代が下るにつれて「入場料の割引サービス」がある日として認識されるようになっていきます。
現在では、12月1日だけでなくその他の月の「1日」も「ファーストデー」などと称し、割引サービスを実施している映画館が多いようです。
1950年代といえば、日本映画の製作本数も膨大な数になった時代。同じ時期のアメリカやフランスよりも多かったという記録があるほどです。
しかしその背景には、全国にたくさんの映画館ができたことで、数多くの映画を供給しなければいけない、という事情がありました。
まだ日本が貧しかった時代。上映料金の割引競争も激しく、「2本立て」「3本立て」上映も珍しくありませんでした。
なるべく低予算でたくさんの映画を作らなければならなかったわけですが、それが続けば当然のことながら「質の低下」を招きます。
さらに1950年代後半~1960年代初頭、テレビが一般家庭に爆発的に普及していったことで、人びとは次第に映画館から離れていったのです。
とはいえ、今も映画は「滅びていない」のは、皆さんご存じのとおりです。新たな魅力を獲得しながら、進化し続ける映画と映画館。来月も、映画にまつわるエピソードをお届けしたいと思いますので、お楽しみに!
参考:吉見俊哉「視覚都市の地政学 まなざしとしての近代」(岩波書店)