はじめに
SNSとの相性の良さもあり、過去の遺産かと思われた顔ハメ看板が、再び注目されて久しいです。旅の目的として取り上げる人はあんまりいないかもしれませんが、顔ハメ看板があるということは、記念になるような何か、宣伝したいような何かがあるということ。顔ハメ看板をきっかけに、出かけてみるのはいかがでしょうか? 今回は温もりを感じたい冬におすすめの、多人数用の顔ハメ看板をご紹介です。
Text&Photo:塩谷朋之
鐘楼の下で、大切にされている看板にハマる、般若寺<奈良>
日本最古のコスモスの名所として知られ、“コスモス寺”とも呼ばれる般若寺。そこにある顔ハメ看板は、鐘楼の下に置かれていてなかなかインパクトがあります。副住職が顔ハメ看板が好きで、雨に濡れないようにとこちらに置かれているそう。実はこちらの看板が三代目で、後ろにちらりと見えているのが、引退気味の二代目です。こちらも渋く枯れていておすすめです。
穴の位置に高低差があると親子用だと思われがちですが、大人同士でハマると、一人だけ辛い体勢になったりすることで盛り上がります。できたら交代でハマって、楽しい思い出を共有しておきたいところ。
般若寺はコスモス以外にも、四季折々の花が境内を彩り、冬なら水仙が楽しめます。
◆般若寺
住所:奈良市般若寺町221
電話:0742-22-6287
拝観時間:9:00~17:00(最終受付16:30)※短縮拝観時間(1月・2月・7月・8月・12月)9:00~16:00
拝観料金:大人/500円
肩寄せ合って、ぶつかり合って、楽しくハマれる、てがみ屋<長崎>
孔子廟に大浦天主堂、オランダ坂といった長崎の観光名所の近くにある文房具屋さんの三人用顔ハメ看板。お洒落な店舗に、このサイズ感の顔ハメ看板。
鳩の後方からこちらを伺っている男女は、かなり近い距離でハマることになりますので、お察しの通り身体がぶつかり合います。そこで生まれるコミュニケーションが、確実にあります。
長崎にちなんだ可愛らしいグッズが並ぶ店内では、店名の通り、その場で手紙をしたためることも可能です。旅の記念に、あの人に一通いかがですか?
◆てがみ屋
住所:長崎県長崎市大浦町7-22 コーポおおうら1階
電話:095-825-7519
営業時間:11:00~18:00
定休日:水・日曜日
アクセス:長崎電鉄大浦海岸通り駅から徒歩約5分
大河フィーバーでまさかの大量設置。時間が足りない、桜島サービスエリア(下り線)<鹿児島>
九州自動車道で最南端のサービスエリア、桜島サービスエリア(下り線)。運転の疲れを癒すために立ち寄ると、異常な数の顔ハメ看板に気づくはずです。大河ドラマ『西郷どん』(NHK)に合わせて張り切って制作されたであろう看板から、手描きの温もりを感じるものまで、10枚以上の顔ハメ看板が、あなたにハマられるのを待っています。
これだけダメ押しのように置かれているからなのか、実際に行ってみると、かなり多くの人がハマっています。全部にハマるというよりは、「これ似合いそうだからハマりなよ」といった感じで、とりあえず一枚はハマっておくといった塩梅です。
一人用から三人用まで幅広く置かれていたので、顔の足りない分はその場にいた人にお願いしたのですが、多量に設置された顔ハメ看板の生んだ非日常感のなせる業か、すんなりハマってくれました。
◆桜島サービスエリア(下り線)
住所:鹿児島県姶良市西餅田2356
電話:0995-65-8656(インフォメーション)
盛岡市観光文化交流センターで、ハマって、学んで、プラザおでって<岩手>
200年以上前から続く、農耕馬に感謝する伝統行事・チャグチャグ馬コ。盛岡市と滝沢市で行われるこちらの行事を模した顔ハメ看板です。市が管理する交流センター施設内にあるため、入場無料で気軽にハマれます。この顔と身体のサイズ感が堪りません。
すぐ横には、東北地方の夏祭りの中で最も早く開催されるお祭りの一つである、さんさ踊りの顔ハメ看板も。盛岡の二大行事を顔ハメ看板で疑似体験できます。
ホールやギャラリー、会議室だけでなく、英語対応可能な観光案内所としても機能しているので、盛岡の観光の起点におすすめです。
◆盛岡市観光文化交流センター(「プラザおでって」内)
住所:岩手県盛岡市中ノ橋通一丁目1-10
電話:019-604-3300
休館日:第2火曜日、年末年始
無人の販売機になぜか置かれた多人数用、埋められたら達成感の、相磯農園いちご自動販売機<静岡>
穴を全部埋めないと気持ちが悪いという感覚が私にはあるのですが、皆さんにもありますでしょうか。それにしても……な相磯農園の5人用の顔ハメ看板。しかも農園自体にではなく、離れた場所にある自動販売機に置かれているので難易度高めです。その分埋められた時は達成感があります。
よくよく見ると、穴のサイズといい、絵と文字のクオリティといい、だいぶ丁寧に作られている顔ハメ看板です。そこらへんも口説き文句に、是非近くにいる人に声をかけて、なるべく多くの穴を埋めましょう。
◆相磯農園※苺狩りは無し
住所:静岡県伊豆の国市北江間1461(苺の自動販売機)12月半ば~5月
電話:055-948-2676
おわりに
「顔ハメ看板にハマっているところを写真に撮ってください」と言うのも、なかなか度胸がいることと思います。ましてや「一緒にハマってください」など見ず知らずの人に声をかけるのは、よっぽど恥ずかしい行為かもしれません。でも一歩踏み出して、「二人用なので……」などとお願いしてみてください。意外と9割以上の方がハマってくれます。いままで100名以上にその場で声をかけて、断られたことが10回も無い私が言うのですから間違いありません。この冬、思いのままに訪れた土地で、その場にいた人との思い出作りと洒落こんでみるのはいかがでしょうか。
◆塩谷朋之(しおや・ともゆき)
仕事の傍らハマれる看板を求めて出かける日々。これまでにハマった看板は4,000枚以上。2015年に『顔ハメ看板ハマり道』(自由国民社)を出版。2019年より都道府県を顔ハメ看板で見つめ直す『顔ハメ百景』シリーズ(阿佐ヶ谷書院)の刊行を開始。第一弾は長崎編。顔ハメ看板に関するアプリやイベントのプロデュース、情報発信を続ける。