[caption id="attachment_172805" align="alignnone" width="900"] 小笠原諸島・母島の風景[/caption]
新型コロナウイルス感染症の影響で、旅行トレンドは大きく変化しつつある。夏休みの海外旅行は極めて厳しい情勢で、日本人には屈指の人気を誇るハワイを含むアメリカやヨーロッパも自由に行けそうにない。
当然ながら旅行先の国内志向が進む。まだまだ旅行に気兼ねなく行けるわけではないものの、大規模な「Go To トラベル」キャンペーンに対して期待が膨らんでいる。
[caption id="attachment_172804" align="alignnone" width="900"] おがさわら丸のインターネット予約画面 2か月先でも満席が目立つ[/caption]
そんな中、すでに「プラチナチケット」化している旅行先がある。東京都の、東京から一番遠い離島、小笠原諸島だ。小笠原行きの唯一の交通機関・おがさわら丸(通称:おが丸)は、例年お盆や年末年始、GWの時期などは満席が続いていたが、今年は夏休み期間全体で満席傾向になっている。
小笠原村「7月以降は全てのお客様を歓迎」
小笠原諸島の父島・母島を擁する小笠原村、そして小笠原村観光協会などは、定期船で24時間かけなければ行くことができない秘境地であるが故に、感染防止には万全を期する必要があるとし、マスク着用や3密を避けるなど、宿泊や飲食など4分野で定めた感染症対策のガイドラインに協力を求める。6月中は自粛を要請するが、7月以降は情勢が悪化しない限り「基本的には通常どおり全てのお客様を歓迎いたします!」と歓迎の姿勢だ。
「おがさわら丸」の制限で来島者数をコントロール
一方で、小笠原村などは、定期船・おがさわら丸を運航する小笠原海運と協力し、「おがさわら丸」の乗船に関して制限を実施する。
まず、おがさわら丸の運航を一部運休する。夏休み期間は、およそ3日おきに運航していたが、これを平常時のおおむね6日おきの運航のままとする。これにより運航便数が半減する。おがさわら丸のプラチナチケット化の一因である。
加えて、相部屋タイプの船室については席数の制限を行い、ソーシャルディスタンスを確保する。
[caption id="attachment_172809" align="alignnone" width="900"] おがさわら丸 2等寝台[/caption]
カプセル型の寝台船室である特2等寝台と2等寝台はそれぞれ通常の7割程度、5割程度の利用とし、いわゆる「雑魚寝」タイプの2等和室については通常の3割程度と、この船室ではマスクの常時着用を要請している。
特等室や1等室など個室タイプのその他の等級では通常通り販売するものの、上記の3等級が定員の大半を占めるため、旅客定員が892人であるのに対し、乗船できる人数は概ね400人程度になる見込みだ。父島~母島間の「ははじま丸」も乗船制限を行う。
小笠原行きがプラチナチケットになる要因は、ソーシャルディスタンス確保のための徹底した乗船制限によると言えるだろう。
「オーバーツーリズム」を抑える理想的な対策
小笠原諸島は極めて特殊な環境にある。本土からの移動に長時間がかかり、島への移動手段が実質1種類。この唯一の交通手段、おがさわら丸で「水際対策」を行えば、感染症の持ち込みや「3密」を招くような混雑の回避ができる。特殊な環境だからこそできた対策だろう。
今年の旅行トレンドは、国内に極端に偏る見込みだ。その中で多くの観光客が訪れることによる観光公害、つまり「オーバーツーリズム」の回避にもつながるだろう。
書き入れ時に徹底的な感染症対策をとる小笠原を、応援したいと思う。実際に行けないとしても、応援する方法はたくさんあるはずだ。