アウトドアの定番である「ツーバーナー」の多くはOD缶を使う。だが、コンビニなどで手軽に入手できるのはCB缶(カセットボンベ)だ。OD缶を使う仕様のツーバーナーでCB缶を使う方法を実験してみた。
TEXT&PHOTO◎伊倉道男(IKURA Michio)
※トライするときは、安全に充分に気をつけて自己責任で行なってください。
吾輩はスズキ・ジムニーである。1086年の生まれで、型式はM-JA71C。金属のルーフも当然エアコンもない。「4WD→2WD→4WD」と手動で切り替えるパートタイムの四輪駆動車である。錆も進み、ボディもあちこちが凹んでいるので、ゆっくりと余生を送ろうとしていたが、週に1回、アウトドア・フィールドに出掛けることとなる。
キャンプでの燃料は何を使うか?これは結構悩ましい。今、最も注目を浴びているのは木材を燃料とする、「薪ストーブ」や「「ウッドバーニングストーブ」、そして「焚き火台」。だが、これらはどちらかと言うと燃焼を楽しみながら調理もする、つまり調理にはちょいと厄介だ。その厄介と炎の揺らぎを楽しむことがメインのアウトドアなら、もちろん最高の夜となる。
しかし、自然の中でアクティビティを楽しむアウトドアももちろんある。身体がクタクタになるまでアクティビティを楽しんだ後に、「ファイヤースターター」から火を起し、徐々に炎を大きくして、燠火(おきび)を作り調理に結びつけるのは、かなりしんどい時もある。アクティビティがメインのキャンプなら、さっと美味しい夕食を済まして、のんびりと身体を休め、明日に備えるには簡単な調理器具が良い。
アウトドアの調理器具として気楽で、家庭のキッチンと同じように「カチャ」とすれば、すぐに安定した火力が得られ、気を使わずに使える。それはガスだ。登山を目的としたアウトドアでは、軽量で小さくパッキングもしやすいシングルのガスバーナー(OD缶と言うガスカートリッジを使う)が長い歴史を持つ。そのシングルバーナーのなかでも、最近はガスカートリッジが最も多く出回っている、家庭用とも言うべき?CB缶仕様(吾輩はカートリッジボトルと覚えている)が大人気で売れ切れ状態が続いてある。
それに比べて、ガスを利用するアウトドア用のツーバーナータイプは人気がない。ガソリンのツーバーナーのように重く、大きい。また、今までの家族単位の人数でのキャンプから、ソロやタンデムでのキャンプへ移って来たからなのであろう。正直、リサイクルショップで3000円ほどの売値で販売されているをよく見かけるのである。
そのガスのツーバーナーはほとんどがOD缶仕様(アウトドアと覚えている)である。つまり、高価でコンビニ等で簡単に入手出来ないOD缶をふたつ使う。このOD缶をコンビニ等でも入手し易いCB缶仕様に変更する。それが可能なら、ローコストでより長く、アウトドアに滞在できるようになる。
ちょっとアウトローな世界も含まれるので、ここからは「知識として知っている」が、無難である。もちろんやるからには自己責任となる。当然ながら、目に見えないガスを扱う。器具の接続のパッキンなどは使う前に点検をしていかねばならない。メンテナンスフリーの世界が広がる中、信頼しているグッズと言えども自分自身で点検をする。これもひとつのアウトドアの楽しみ方である。
さて、OD缶仕様のバーナーにCB缶のガスを使う方法は吾輩の知る限りでは2通り。まずはCB缶から「アダブダー」を使い、空になったOD缶にガスを補填してしまう方法。この場合は、すべてのガスをCB缶からOD缶へ送り込むことはできない。両方の缶の気圧が同じになれば、そこで流入が終りになるからだ。より多くガスを送り込む方法は、受けとなるOD缶を冷凍庫で冷やして缶内の気圧を下げてやる。常温で保管しているCB缶内のガスは気圧が低いOD缶内に入り冷やされ、圧が下がるのでガスが入る。入らなくなれば、またOD缶を再度冷やせば、OD缶内の気圧は下がるのでまた流入させることができる。ただし、すべてのCB缶のガスを送り込むことはできない。
もうひとつの方法は、市販されている器具の変換アダブダーを使う。廉価なのは直接CB缶をアダブダーを介してOD缶仕様のストーブに取り付ける方法。この直に繋げるアダブダーは、精度が低く良い思い出がない。特にパッキンが問題で何度か交換して使用したが、今は信頼性は薄く使う気がしない。
ところが今回、ちょっと気になる製品を見つけてしまった。まず複数のCB缶を繋ぐことができるのだ。これによる利点は、ガスカートリッジを交換しないでより長く燃焼させられること。例えば暖を取るためのCB缶仕様のストーブで使う場合、内蔵できるCB缶はひとつであり、最長でも連続して2~3時間の使用が限度だろう。それが6時間以上になる。つまり一晩は燃焼し続けてくれるのである。次に、使用にともなうカートリッジの内圧が1本を使う時よりも、圧の低下が3分の1になることで、より安定した燃焼が見込まれる。もちろんアウトローの世界、自己責任であるのだが、テストをしてみる価値は充分にある。
CB缶仕様のバーナーやストーブはガスカートリッジを接続する方式は3通りある。慣れ親しんだ家庭でテーブルの上で鍋等をするタイプ。カートリッジガスをコンロのレバーで固定する仕様だ。レバーでカートリッジを固定して、次にダイヤルを回し点火するタイプだ。次にガスカートリッジを回転させて固定する方法(単体のCB缶仕様のシングルバーナー)の器具。そしてどうやら震災後に販売されている家庭での使用を目的とした器具は、ガスカートリッジを磁石で固定するタイプが多くなってきた。想像ではあるが、安全装置が起動した時にガスカートリッジを遮断できるようになったのか。その上にネオジム(強力な磁石)が安く使えるようになったこともあるのだと思う。これは購入してみて試してみる価値はあると思う。
今回の変換アダブダーは磁石タイプと回転式の器具のみの接続できるタイプで、レバーで固定する器具には対応していない。吾がチームの暖房用のガスストーブには使えないのだ。だが、冬に備えて安全性のより高い暖房ストーブを導入する予定なので良しとする。
燃焼に関しては、器具の性能よりもガスの性能なので問題はない。ガスステーションもガスホースもきちっとした作りで、ガス漏れは確認できなかった。ただし、カートリッジの置き方には注意が必要で、カートリッジのトップ(ガス流出部分)を下にして燃料の液出しをしてはいけない。テストしてみたが、炎が高く舞い上がるので注意が必要だ。ガスカートリッジは必ず立てるか横にして使用すること。
さて問題は、冬になると気温が低下してガスカートリッジ内の燃料が気化し難くなることだ。そのため、最近の製品はヒートシンクを備えている物が多い。気温が5度を下回るあたりから、この外付けとなるCB缶は何らかの対策をしなくてはならないだろう。来シーズンは使い捨てカイロをガスカートリッジに貼ってテストしてみようと考えている。
ツーバーナーとパエリア鍋でお好み焼きを焼く
最後になるが、使い終わったら、接続部分はすべて外して置くのがより安全であろう。もちろん屋外のための器具。テント内では使用しない。その上で自己責任で。空いたカートリッジは確実に処理。
ー吾輩はスズキ・ジムニーである。型式はM-JA71C。夏は冬のために。冬は夏のためにー