東京地下鉄(東京メトロ)は、三菱電機と共同で、鉄道用「同期リラクタンスモーターシステム:SynTRACS」が実際の鉄道車両で運用可能であることを確認した。同期リラクタンスモーターによる鉄道車両の営業線上の走行は「世界初」。
東京メトロと三菱電機は、更なる省エネ性能の向上を目指し、リラクタンストルクのみで駆動し省エネルギー性能が高い「同期リラクタンスモーター:SynRM」と、それを制御するインバーターで構成されるシステムを、日比谷線13000系車両に搭載し夜間走行にて実証試験を行ってきた。今回の実証試験では、産業用機器等で使用されている同期リラクタンスモーターシステムについて、加速度・減速度をはじめとした各種性能試験を実施。本システムが鉄道車両の制御システムに適用可能であることに加え、従来の三菱電機製モーターの最高効率が95%であったところ、97%以上のモーター効率があることを確認した。
また、モーターは定格出力250kW、重量は562kgであり、従来のモーターと比較して出力あたりの大幅な小型化も達成している。これまで高出力化が困難であった同期リラクタンスモーターだが、鉄道車両の走行を可能としたのは世界で初めて。今後は本格的な運用に向けて、更なる消費電力量評価など長期にわたる評価試験を実施する予定。
試験車両 日比谷線13000系車両2両(1編成7両中の2両)
搭載機器 同期リラクタンスモーター(Synchronous Reluctance Motor: SynRM)4台
(定格出力250kW、 モーター重量562kg)
SiCパワーモジュール適用インバーター1台
走行区間 東京メトロ日比谷線内(夜間走行試験)
試験期間 2021年3月24日~2021年4月14日(計12夜間の試験を実施)
同期リラクタンスモーターは、回転子鉄心内の磁気抵抗差によって生じる磁極との相互作用で発生する「リラクタンストルク」で駆動する。鉄道車両に広く採用されている誘導モーターと比較して、回転子の発熱損失が小さく、効率や質量特性に優れることが特徴。
今回の実証実験では営業線での夜間の走行試験で同期リラクタンスモーターシステム:SynTRACS に採用した回転角検出センサーレス制御技術によりすべての試験条件下において安定したモーター制御ができることを確認した。また、以下の検証を実施し、いずれの評価においても問題がないことを確認している。