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初代・日産サファリの乗り味を動画とともに総括する!!


2021年6月現在、日産のSUVはアリア、エクストレイル、キックス e-POWERの3車種しかラインアップされていません。いわゆるRVなど、もはや皆無です。しかし海外に目を向けると、大型のアルマーダ/パトロール/インフィニティQX80を筆頭に、大小様々の多くのSUVが好評を博しています。


新たな日産SUVの国内市場登場への期待を込めて、そしてエールを送る意味で、マニアックな四駆専門誌編集長が、今なお人気が高く、かつて愛車としていた「日産・初代サファリ愛」(?)を語ります。今回は連載最終回、初代サファリの試乗記を動画と共にお届けします!!

ジワジワと着実に回転を上げる…。これぞサファリ流!!

 低速で這い進むクロスカントリー走行は得意だが、それはライバルである“狭義のランクル”や三菱ジープと大差ない。違いが出るのは少々の慣性を保ってリズミカルに走破する場面だ。テーパーリーフスプリングは普通の板バネより敏速に伸縮し、アクスルをバタつかせず車体を前に進める。




 この特性を熟知したオフローダーが、まるでジムニーのように難所を乗り切る場面を見たことがある。重量車ゆえ失敗したときのダメージを考えればお勧めできる操法ではないが、他のリーフリジッド車には真似できないことだ。




 とはいえ、動画サイト等でよく見る改造ランクルのようにウネウネと足が動く車ではない。長尺車のリヤに備わる親子バネが曲者で、上側2枚の補助リーフが効くと(下の画像の状態)あっけなく限界が訪れる。




 これは乗り心地を維持しつつ500kg積載に対応した結果だから致し方ない。このVRG160というクルマは、クロスカントリーカーというより大型ライトバンとして乗り心地や安定性を追求しているようで、VRG161で350kg積載車が登場すると走破性も高まった。

長尺車の親子バネは、トラックのヘルパースプリングと考えは同じである。重積載に対応してアクスル容量も大きい。ちなみに水色ペンキは前オーナーが施した防錆処理でオリジナルではない。

それでも前輪独立懸架のRVに比べたら前後合計でのストローク量は大きい。社外サスペンションが出回らなかったのは、販売台数のせいではなく、純正を超えるものが作れなかったのだろうと筆者は解釈している。単なる「高下駄リーフ」では、交換するだけ無駄なのだ。

フロントの板バネも後年より硬いが、バンプストッパーが接触するまでしっかり縮む。ステアリングのアイドラレバー(一般的には「アイドラアーム」だが、パーツカタログにはこう書かれている)が飛び出しているため、大岩など抱えこんだ時に不安。Y60系ではリンケージの一新でこの問題を解決した。

安定傾斜角数値はライバルと大差なくても、低く構えたボディのため、慣性や心理的・視覚的な面からはずいぶん有利に感じる。

じつに大容量のトランスファ。昔ながらのオフセットドライブ式を踏襲し、クランク軸とプロペラシャフトは歯車3つ分だけ右下方向にズレている。Y60系では駆動効率に勝るセンタースルー式に近代化され、四駆シフト時にはサイレントチェーンで前のプロペラシャフトを回す。 駐車ブレーキはセンターブレーキ(推進軸制動)だから緊急時には第2のブレーキとなる。ちなみにランクルは1980年7月にセンターブレーキを廃止してリヤドラム兼用となった。

前ブレーキは先代パトロールのドラム式に対し、ベンチレーテッドディスク。ただしシングルピストンのスライディングキャリパー。機構的には対向4ポッド式のランクルに劣る。

 荒れた地形に踏み入れるには、2.220と充分に低いローレンジを最初から選ぶ。長尺車の場合、歴代サファリで最大減速の4.625のファイナルレシオと併せて頼もしさ倍増と思いきや、1速のギヤ比が3.519と高いためにトータル約36倍減速と物足りない。ランクルBJやHJの1速がトラック的なエクストラ・ローであるのに対して、サファリの1速は通常の発進ギヤとされているのだ。




 一旦クラッチがつながれば、相当に負荷が掛かっても持ちこたえる。そんな「我慢状態」からアクセルを踏んだときの反応は鈍く、しかし抵抗に負けずジワジワと着実に回転を上げる。ランクルBJがポンとトルクを取り出せるのに比べると地味に思えるが、これぞサファリ流である。




 ジープやジムニーのような軽量級では瞬発力不足と評されそうな特性も「粘りの直6 vs パンチのビッグ4」として、好みが分かれるくらいだ。

総じて「万能にして汎用」を体現した乗り味

 クロスカントリー走行における欠点は長い胴体と低い腹。これは駆動系の容量もあっていかんともしがたい。ならばクリアランスを稼ぐべしと車高アップを考えても、社外サスペンションの少なさや弊害は先述のとおり。せいぜいタイヤの大径化くらいだ。

純正タイヤサイズは6.50-16で、クロカン走行には直径不足。長尺車に履かせていた7.50-16の下駄山は14プライのヘビーな作業靴で、直径は大きくても変形せず、グリップを失いがちだった。この短尺車にはソフトな構造のミシュランXZL7.00R16を履かせ、テーパーリーフとのマッチングも良い。アクスル容量は1ランク小さくされ、そのぶん軽快に走る。

 短尺車なら腹下に不満はなく、地形と干渉するのは長尺車と同じだけ突き出したリヤオーバーハングとなる。リヤサスペンションは補助リーフのない3枚構成でよく縮むため、さらに尻を打つ。




 もうひとつ弱点を挙げるなら、エンジン特性に対して、4.111と高め(ランクルと同じ)のファイナルレシオ。ソロリソロリと進みたい場面では足が速すぎる。




 軸重配分の良さはスムーズな走破に寄与している。現車を秤で実測すると、スペアタイヤや手荷物を載せた状態で、前後の軸重はピッタリ50:50であった。

さすがのテーパーリーフもSD33型エンジンも、尻が引っ掛かればアウト。

ライバル車にも比較試乗。ドカドカとスムーズさに欠けるエンジン、すぐに足がバタつき、重心も高いランクルBJ70Vを頼もしいと思える場面もある。パンチの効いた4発と、地形と干渉しにくいボディ形状の効能だ。クロスカントリーカーとしてのまとまりは、正直、サファリより一枚上手だ。悔しいけれど…。

雪道も得意だった。しなやかな足とバランスの良さから、他車の轍や除雪跡のデコボコでもスリップのきっかけを作りにくかった。三菱ジープJ50系などは雪道で不安定なものだ。

最終型のハードトップターボAD。バネレートを下げ、マイルドなターボで少しだけパワーを稼ぎ、5速ミッションで高速巡行を叶えた、初代サファリの完成形である。ファイナルレシオはホイールベースの長短で区別することなく、全機種4.300とされた。

この車で山道の散歩に出かけた際の動画をご覧ください。

 総じて、ノーマル状態では良路から非舗装路、極悪地形に至るまで扱いやすく乗員にも優しいが、車体が干渉するような限界近くの性能はライバルと大差ない。古典四駆のように鼻面で地形を削りながら進む真似もできなければ、後継車Y60系の凄まじいトルクや走破力を知っている人にも物足りない。




 つまりどんな場面もソツなく走れてしまうというわけだ。足まわりもライバルより洗練されている。RV風四駆に見えるが、設計者の意図するところ、志は高いことがわかる。「万能にして汎用」とはさりげないものなのだ。初代・日産サファリとは、そういうクルマなのである。

20年前まで乗っていた、二代目サファリVRY60。コイルリジッドの足によって走破性も路上性能も160/161系を凌ぎ、4.2ℓのモリモリトルクも魅力的だが、またサファリを手に入れることがあったら160がいいな、なんてね。

試乗車比較三面写真

読み逃した方は、こちらへどうぞ!!

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