トヨタのTHS-II用エンジンは、高効率化のキー技術としてアトキンソンサイクルを採用しているが、大きな膨張比を得るために、図示圧縮比の大きさよりトルクが低下する。モーターアシストのないコンベンショナルなエンジンでは、HEV用のものより熱効率の高い範囲を拡大してトルクを確保する必要がある。
1NR-FKEが熱効率アップのために使う重点技術が強いタンブル流。それによって急速燃焼させてトルクを向上、高い燃焼圧力をアトキンソンサイクルによる高膨張比で効率よく動力に変換する。クールドEGRはノッキング防止の他に、必要な空気量を得るためにスロットル開度を大きくしてポンピングロスを低減するためにも使う。
アトキンソンサイクルは下死点後90°以上まで吸気バルブを開く遅閉じタイプ。出力が必要な時など運転状況によって最適な制御をするため、反応速度の早い電動VVTを採用した。燃焼効率と吸排気の協調制御がコア技術となっている。
一般的に高タンブルを追求すると流速を高めるために流量が落ちる傾向があり、出力面では不利となる。1NR-FKEでは吸気ポートの傾斜角の工夫と燃焼室直前のシートリング、2経路の吸気ポート設置で、二律背反をクリアしている。
4-2-1排気管で負圧を発生させ(下写真内の白い○の部分)熱い排ガスを素早く掃気し、残留ガスで新気が熱せられるのを防ぐ。ガス流動を早く確実に行なうことはノッキングと出力の両面に効く方策だ。スペースの問題で4-2-1排気管の採用を見送ったデミオに対し、同じセグメントのヴィッツにこれを使ったのは評価できるポイントだ。
タンブル流を強くすると排気側のシリンダー壁面に混合気が多く当たり高熱の排気バルブ周りから熱をもらってノッキング要因となる。この対策としてウォータージャケットに樹脂製スペーサーを挿入し、シリンダー上部をより多く冷やしてノッキングを回避している。ノッキングとは無関係の下部では逆にシリンダー温度を上げてオイル粘度の均一化を図り、フリクションを低減している。
■ 1NR-FKE
気筒配列 直列4気筒
排気量 1329cc
内径×行程 72.5×80.5mm
圧縮比 13.5
最高出力 73kW/6000rpm
最大トルク 121Nm/4400rpm
給気方式 自然吸気
カム配置 DOHC
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 PFI
VVT/VVL In/×
(ヴィッツ)