先進運転支援機能を新採用した5ナンバーサイズのコンパクトミニバン、トヨタ・シエンタ。
かつて、プリウスを退け乗用車販売No.1に輝いたこともある大ヒット作。実用性に優れた人気車両のその秘密に触れていこう。
レポート=青山尚暉[本文]/塚田勝弘[写真解説] フォト=平野 陽/神村 聖
ライバルを凌ぐ実用的な3列、2列車は掛け心地良く快適
2015年7月にデビューした二代目シエンタは、3列シート、両側スライドドアを備えた日本の道にジャストな5ナンバーサイズのコンパクトミニバン。1.5ℓのガソリン車に加え待望の1.5ℓエンジン+2モーターのHVモデルを追加。さらに18年9月には、それまでの都会を泳ぐ熱帯魚風の派手なカラーリングを廃止。落ち着いたボディカラーリングが施され、先進運転支援機能のトヨタセーフティセンスを新採用。同時に2列シートの大容量コンパクトワゴンと呼べる「ファンベース」を新設定。それが功を奏したのか19年8〜9月には、プリウスなどを退け乗用車販売No.1に輝いたほどの大ヒット作となった。
シエンタの人気の理由は親しみやすいデザイン、扱いやすいシートアレンジ性、ライバルに比べより実用的な、大人でも無理なく着座できる3列目席、使いやすい荷室といった多くの魅力を備えているからだ。HVモデルにはライバルにないAC100V/1500Wコンセントが用意され、車内外でコーヒーメーカーなどの家電品が使えることも、アウトドア派はもちろん、災害時での利便性に直結する魅力となる。ちなみに3列シートのシエンタと2列シートの「ファンベース」では後席の格納方式の違いからクッション構造が異なり、「ファンベース」の方がより掛け心地に優れている点にも注目だ。今ではアウトドア仕様の「グランパー」も揃う。
必要十分な動力性能を備える16インチタイヤの乗り味が◎
実は、シエンタとシエンタ「ファンベース」では、3/2列シートという違いこそあれ、車重は同じで、走行性能に差はない。運転席に着座すれば、高めにセットされたインパネやドアのショルダーラインと低めにセットされたシートの位置関係から、落ち着き感ある運転感覚、着座姿勢が得られる。フロントシートは背中を包み込むようなシートバックのフィット感があり、助手席前を中心とした収納の豊富さも特徴的だ。シエンタの走行性能は1.5ℓガソリン、アクア譲りのHVのどちらもファミリーカーとして必要十分な動力性能を備える。操縦性はクルマのキャラクターに合った穏やかなもので、運転のしやすさは文句なし。動力性能はHVの方がモーターアシストにより出足から一段とスムーズかつ、エンジンを高回転まで回さなければ静かで、また粘り強いEV走行が可能になる。グレード選択のポイントとなるのがタイヤサイズ。標準の15インチタイヤ+スチールホイールはデビュー当時のままだが、16インチタイヤ+アルミホイールは新開発されたもので、乗り心地ではズバリ、後者が優れる。具体的にはふんわりぴたりとした、フランス車的とも表現できる身体に優しい快適感が得られる。しかもカーブでの姿勢変化、車体がグラリと傾くようなロール感は最小限(ただし小回り性は一気に悪化する)。一方、エコスペシャルな15インチタイヤ装着車はごくフツーの乗り心地になるのだ。
後席の背もたれと座面には厚みがあり、座り心地は良好だ。リクライニングが可能で、前よりにスライドしても前席座面下に足が入るため、荷物が多い時などでも窮屈にならずにすむ。
前席のシートは座面も背もたれも横方向には比較的余裕があるものの、座面の前後長は短めだ。インパネシフトの採用などにより前席左右間、前後席間のウォークスルーに対応する。
積載性と操作性は3列よりも2列仕様の方が上で、奥行きも十分確保されている。スライドにより奥行きを調整できるのも美点。2列目を格納すれば1000ℓを超える荷室容量を確保できる。アウトドア派のニーズもカバーしてくれるはず。
「G」系と「FUNBASE G」系以上のハイブリッドにクルーズコントロールを搭載。ワンタッチスイッチ付パワースライドドア(両側)も「G 」と「FUNBASE G」系に標準で、「X」は助手席側のみ。「X」は先進安全装備がオプションになる。
青山尚暉はこう買う!
すでに説明したように、シエンタは16インチタイヤ+アルミホイールの組み合わせが、乗り心地にこだわるなら正解。装備的にはシエンタ、「FUNBASE」ともに装備の充実する「G」以上が理想。価格対内容では、「G」に16インチタイヤ+アルミホイールを注文装備するのが正解だろう。3列席必須でないなら「FUNBASE」で決まりだ。
※本稿は2020年10月発売の「モーターファン別冊統括シリーズVol.128 2020年コンパクトカーのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。