2003年、軽くて小さめボディに元気なエンジンというコンパクトスポーツの教科書的なつくりで颯爽と登場した「スイフトスポーツシリーズ」。エアロパーツなどで見た目のみをスポーティーにしたモデルとは一線を画し、専用エンジンを積む本格派としてすぐに人気となった。
今回はゴールデンウィーク短期集中連載として、スイフトスポーツシリーズの進化を辿ってみよう。まずはNAエンジンの0代目(?)から2代目まで!! 解説は、スイスポと言えばこの人! 加茂 新氏です。
TEXT:加茂 新(KAMO Arata)
M15A&M16Aエンジンが作った刺激的NAエンジンホットハッチバック!!
歴代高い人気を持つスイフトスポーツ。スズキとしてはZC31Sを1代目と定義するが、“スイフトスポーツ”としての歴史は、その前のHT81Sから始まる。
0代目ともいえるHT81Sは、軽自動車のKeiをベースに1500ccのNAエンジン「M15A」を搭載。930kgのボディに115ps/14.6kgmのユニットを組み合わせ、意外にパンチのある加速で人気を獲得した。その走りのキビキビ感や、軽自動車をベースとするそこはかとなく危ない感じは、なんとも言えない絶妙な乗り味はいまだ強い印象を残している。
ちなみにチューニング雑誌「REV SPEED(レブスピード)」(弊社刊)では、連載で使用していたそのHT81Sをモディファイして、ニュルブルクリンク24時間耐久レースに出るという夢物語をぶち上げ、2005年に本当に参戦を果たしたのである。
ドライバーは大井貴之プロに、ハイアマチュアのデカトー(編集部註:加藤雅也選手/身長193cm/デッカイカトーから通称デカトーとなった、らしい)、現地ドライバーのニキ・シェレ選手、そして当時編集長の佐藤和徳が乗った。
タイヤはTOYOのT1Rというストリートタイヤで参戦。周囲はレーシングタイヤで走っており、ドライでは勝負ならないが、なんと悪天候を味方につけクラス優勝!
スイフトスポーツは、じつは16年も前にニュル24時間を制していたのだ。
ちなみに現在では参加車両の速度差を抑えるための規定が設けられ、スイフトスポーツは排気量が小さすぎるため参加できなくなった。幻のニュルブルクリンク24時間優勝記録なのだ、が、そのHT81Sはスズキ的にはスイフトスポーツにカウントしないので、0代目と表記するしかない。
1代目となるZC31Sは普通車としてのボディを持って生まれ、エンジンは正常進化型である「M16A」を搭載。車重は1060kg。ミッションは5MTと4ATをラインアップ。エンジン出力は125ps/15.1kgm。ボディが一気に重くなったこともあって刺激は薄れたが、ボディ性能が高く極めて評価された。欧州車並みのがっちりしたボディでハンドリングは抜群。7500rpmまで回るエンジンはNAらしい爽快感に溢れたもの。
ちなみにZC31Sのなかで1/2/3型に分かれており、大きな区別としては1型と2&3型となる。1型のみファイナルギアがロングで、あまりの遅さに不評で2型でファイナルギアのショート化とミッションのギア比の見直しが行なわれた。2型と3型は大きな変更はない。
2代目のZC32Sは完全に正常進化モデルだ。
ZC31Sでトラブルの見られたハブの強化などがされ、ボディ剛性もさらに高められた。それでも車重は6MTで前期1060kg、後期1050kgと据え置き。
エンジンは内部パーツの見直しで136ps/16.3kgmに高められた。
吸気管長を物理的に変化させるインテークを搭載することで中間トルクが高められ、若干乗りやすくなったが、その差は劇的変化と言える程ではなかった。
ミッションは6速化され、オートマチックトランスミッションはCVTとなった。6MTは強度の心配もされたがまったく問題なし。CVTはダイレクト感に欠けるという指摘もあったが、シームレスな加速は6MTと遜色なく、直線加速だけで比較すればほぼ同じだった。
マイナーチェンジらしい大きな変更はなかったが、後期型になるとボディ接着剤の使用量の見直しにより車重が10kg軽くなった。しかし、車検証上の車重表記は10kgごとなので、申請時の車重がたとえば1055kgから1054kgに変更され、表記としては10kg軽くなったのではないかと思われ、とくに大きな差はなかった。
そして、ここから一新されたZC33Sへとつながっていくのである……。【明日に続く】