NTNは、軸受の外輪外径面に独自開発の逃げ部加工を施すことで、クリープの停止を実現した「クリープレス軸受」を開発した。
近年、EV・HEVを含む自動車の省燃費化および省電費化に向けて、モータやトランスミッションなどの小型・軽量化の要求が高まっている。そのため、こうした駆動装置に使用される軸受の軌道輪やハウジングを薄肉にする傾向にあるが、それらの変形により、固定した外輪が円周方向に回転してずれる「クリープ」という現象が発生する場合がある。
クリープは、回転方向と現象によっていくつかの種類に分けられ、特にトランスミッション内で一定方向の重荷重*1がかかる軸受においては、外輪やハウジングの剛性が不足した場合、外輪のひずみにより本来動くはずのない外輪が円周方向に回転する進行波型クリープ*2が起きやすくなる。同現象が発生すると、外輪とハウジングのはめあい面の摩耗により軸の芯ずれや傾きが大きくなり、装置の異音や振動、または摩耗粉による軸受の寿命低下などを引き起こすことがある。
今回NTNが開発した「クリープレス軸受」は、これまでのクリープ対策とは全く異なる手法で、外輪のひずみにより発生する進行波型クリープを停止させることに成功した商品。
「クリープレス軸受」は、外輪外径面の一部に逃げ部を設け、ハウジングとの接触を回避する設計としている。これにより、一定方向荷重が負荷される条件において、ひずみの進行波を遮断し、重荷重でも進行波型クリープを停止*3させることが可能。追加部品が不要なため、組み付け性に優れており、同一寸法の標準軸受からの置き換えもできる。
今後、EV・HEVの普及に伴い、自動車部品の小型・軽量化がますます加速する中、耐クリープ軸受のニーズはさらに高まるとみられている。NTNは、本開発品のほか、クリープ現象やクリープ摩耗を防止できる「膨張補正深溝玉軸受*4」、「AC軸受*4」、および「クリープガード軸受*5」による商品ラインナップでこうしたニーズに対応する。
*1 負荷荷重が軸受の動定格荷重の10%以上の場合
*2 転動体荷重によって発生する外輪のひずみが進行波となり、内輪の回転方向と同方向に外輪が回転し、すべる現象 NTN TECHNICAL REVIEW No.81(2013)「転がり軸受のクリープメカニズム」 https://www.ntn.co.jp/japan/products/review/81.html
*3 NTN評価試験において、外輪1回転以内にクリープ停止
*4 NTNカタログ: CAT. No.2203/J「転がり軸受総合カタログ」
*5 NTN独自の固体潤滑被膜を外輪外径面に施した軸受で、クリープ摩耗量を標準軸受に対し90%以上低減可能