確かなドライビングテクニックで多くのニューモデルをテストドライブしてきた自動車ジャーナリストの河村康彦さんが選んだ「最強のお買い得車」は、スズキ・スイフトスポーツ、アバルト595、ホンダS660 モデューロX バージョンZ。特にスイフトスポーツは約190万円(セーフティサポート非装着車)というリーズナブルなプライスからは想像できないほど、ご機嫌なフットワークで楽しませてくれる1台だ。
TEXT●河村康彦(KAWAMURA Yasuhiko)
1台目:スズキ・スイフトスポーツ|201万7400円-208万8900円 ※セーフティサポート非装着車は187万4400円-194万5900円
デビューの瞬間から「これは絶対お買い得でしょ!」という自身の評価はいささかも変わることがないのがこのモデル。現行型へとモデルチェンジの当初は、エンジンが自然吸気からターボ付きに代わったことにネガティブな意見も出たものの、いざ乗ってみれば1トンを切るボディには十分過ぎるほど力強く、良い意味で「ターボらしさを感じさせず」に、回転の高まりにつれてのパワーの伸び感もたっぷりなどフィーリング面もゴキゲン。
一方で、MT仕様で1000rpmを割り込んでもリカバリーの効く街乗りシーンでのフレキシブルさにもびっくり。まるで”ターボと自然吸気の良いとこどり”をしたかのような心臓なのである。
しかし、そんな心臓の出来栄えもさることながら、このモデルの真髄はフットワークの仕上がり。しっかりした安定感を演じつつも適度に敏捷な身のこなしは秀逸そのもので、同時に、思いのほかしなやかな乗り味を実現させている点にも好感が持てる。
というわけで、「軽自動車でも200万円は珍しくない」という時代に、そんな本格的なスポーツモデルがそれを切る価格から用意されているのはビックリ。日本が誇る”超優秀コスパカー”なのである。
2台目:アバルト595|300万円-326万円
5速MTを備えるシリーズのベースモデル価格がちょうど300万円。しかし、端的に言って「一見したところではもっと高そうに見える」という見逃せないコスパを備える輸入車がこのモデルだ。大きな開口部が目立つフロントバンパーや、ディフューザー処理が施されたリアバンパーなど、専用ボディキットが与えられたデザインはなかなかの迫力。ガンメタリックのホイールも、”走り”のムードを引き上げる。
ターボチャージャーが加えられた1.4リッター・エンジンは最高145psと、1リッターあたりの出力が100psを超えるハイチューンの持ち主。当然加速能力はすぐれ、フル加速シーンではさながら”ヘビーギャング”という印象だ。
やや荒っぽい乗り味にはさすがに基本設計の古さをイメージさせられるが、このモデルの場合「それもアバタにえくぼ」と受け取れるのは役得というものか。
インテリアのデザインも、”かわいさ”と”スポーティさ”が同居したもの。300万円で大いに楽しめる作品だ。
3台目:ホンダS660 モデューロX バージョンZ|315万400円
軽自動車のくせをして、実は前出『アバルト595』以上に高価であるのがこのモデル。「2022年3月で生産終了」が発表されて以来”駆け込み需要”が発生し、すでにS660全体の受注が終了をしてしまったとか。けれども、もしかしたらこの先キャンセルなどがあって、まだチャンスはゼロではない可能性も。とりあえず、販売店に急ぎ連絡するのが吉というものかも。
まるでスーパーカーを縮小したかのデザインのボディに、ターボ・エンジンをミッドシップ・マウントという贅沢なレイアウトを採用した軽自動車など、この先改めて出て来る可能性は限りなくゼロに近そう。
さらに、ホンダ100%の用品子会社「ホンダアクセス」が床下までを念入りにチューニングした”空力ボディ”は、実際に標準仕様を凌ぐすこぶる高い安定性にシャープなハンドリング、さらにはより優れた乗り心地までもを実現させていることを確認済みだ。
もはや「絶版」ということで、この先値上がりはあっても値落ちすることなどないであろうことを考えると、315万円という”軽自動車規格外”の価格もむしろバーゲンと思えてくる。
『プロが選ぶ最強のお買い得車』は毎日更新です!
予算に限りがある庶民にとって、車選びの際にこだわりたい要素が「コストパフォーマンス」。つまり、その車がお買い得かどうか、ということ。ただ安ければいいというわけではありません。ポイントは「値段と性能が釣り合っているか」。だから、価格が安い軽自動車だからコスパがいいとは限りませんし、1000万円以上のスーパーカーだってその価格に見合う機能や魅力があればお買い得と言えます。
というわけで、自動車評論家・業界関係者といった「クルマのプロ」たちに、コストパフォーマンスが高い「お買い得」な新車を3台ずつ、毎日選んでいただきます。明日の更新もお楽しみに。