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アウディe-tron 50 | 低容量版でもバッテリーは71kWh!「電気のアウディが欲しい!」に最適なハイテク電気SUVだ


アウディ初のEV、e-tronにバッテリー容量71kWhの「50」モデルが加わった。一充電で走れる距離は316km(WLTCモード)。前後にモーターを搭載する「クワトロ」である。「電気のアウディ」の完成度はどうか?


TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)

WLTCモード一充電走行距離:316km 交流電力量消費率:237Wh/km

e-tron(イー・トロン)はアウディ初の電気自動車だ。世界初公開されたのは2018年9月。日本では2020年9月から販売が始まった。e-tronには素のe-tronとクーペ調のルーフラインが特徴のe-tron Sportback(スポーツバック)の2種類のボディタイプがある。どちらもSUVだ。20年9月に販売が始まったのはSportbackで、95kWhのバッテリー容量を誇るe-tron Sportback 55 quattro(車両価格1327万円)が導入された。




2021年1月13日に追加されたのがe-tron 50 quattroである。ルーフラインがテールまで水平に伸びる正統派SUVのプロポーションを備えている。余裕のある荷室容量もセリングポイントのひとつで、Sportbackより46ℓ大きい660ℓの容量を誇る(Sportbackも充分に広い)。e-tron 50 quattroと同時に、Sportbackにも50 quattroが追加された(S line 車両価格1143万円)。

全長×全幅×全高:4900mm×1935mm×1630mm ホイールベース:2930mm

トレッド:F1645mm R1645mm 最低地上高:205mm
車重:2420kg 前軸軸重1270kg 後軸軸重1150kg 最小回転半径は5.7m

「55」と「50」の違いは、バッテリー容量とモーターの出力/トルクである。55のバッテリー容量は前述したように95kWhだが、50は71kWhになる。低容量版の位置づけだが、Honda eやマツダMX-30 EVのバッテリー容量が35.5kWhであることを考えると、ちょうど倍だ。WLTCモードの一充電走行距離は、55の405kmに対し、50は316km。バッテリー容量を減らしたぶん車重は軽くなり、Sportback 55 quattro 1steditionの2560kgに対し、e-tron 50 quattroは160kg軽い2400kgとなる(ヘビー級であることに変わりはない)。

イラストはe-tron 55のもの。バッテリー搭載位置、前後モーターの配置などは50と共通だ。

55も50もフロントとリヤそれぞれにモーターを搭載する点は共通している。フロントとリヤを同時に駆動すれば四輪駆動になり、だからquattro(クワトロ)なのだ。通常はフロントのモーターを駆動系から(ほぼ完全に)切り離し、リヤモーターのみで走る。損失を低減し、少しでも航続距離を延ばすためだ。滑りやすい低ミュー路ではフロントとリヤに最適なトルクを配分するのに加え、ターンイン時はリヤ寄りの配分にして旋回性を高め、オーバーステア傾向の動きが出た際はフロント寄りの配分に制御するなど、前後のトルク配分を緻密に制御するのが特徴だ。

ボンネットフードを開くとこうなる。

55のモーターは前後2基合わせて300kWの最高出力と664Nmの最大トルクを発生。50は230kW/540Nmの最高出力/最大トルクを発生する。アウディS4アバントが搭載する3.0ℓV6ターボエンジンの最大トルクが500Nmだと記せば、低出力版とはいえ540Nmの数値がいかに大きいか、おわかりいただけるだろう。

フロントの収納スペースには普通充電用のケーブルが。

ボンネットフードの裏は、とくに遮音のための対策は施されていない。EVならではだ。

走りも充分だ。パワーやトルクが有り余っている感じはしないが、逆にいえば不足も感じない。容量を減らしているとはいえ、重量物であるバッテリーを床一面に敷き詰めている効果で低重心化が図られており、波にもてあそばれるボートのようにグラングランと横揺れを起こして乗り手を不安にさせることもない。2400kgの車重を試乗後に知って「そんなにあるの?」と驚いたほどに、動きは身軽である。背の高いクルマにありがちな、過度な揺すられ感は皆無だ。

タイヤはブリヂストンALENZA
標準は255/50R20サイズだが、試乗車はオプション(15万円)の265/45R21サイズを履いていた。
S lineは車高と減衰力を可変制御するアダプティブエアサスペンション付きだ。

モーターの発電機能を利用して減速する回生ブレーキの強弱は、ステアリング裏のパドルで2段階に切り替えることが可能だ。デフォルトは「回生なし」である。パドルを2回引いて減速度を「強」にすると、完全停止付近まで回生ブレーキで減速する(完全停止はしない)。停止する前にアクセルペダルを踏むと、回生ブレーキの強弱設定は解除され、回生なしの状態に戻る制御だ。減速度が欲しいときにだけ限定的にパドルを使う感覚である。

インテリアはA8やA6で導入済みの、最新のアウディに共通する先進感のあるテイストでまとめられている。ダッシュボード上部に後付け感のあるディスプレイは存在せず、きれいにダッシュボードに収まっている。エアコンの操作パネルから物理スイッチをなくし、タッチパネルで操作するのもA8やA6と同様だ。ステアリングホイールの奥にあるメーターは言わずもがなで、「アウディバーチャルコクピット」と呼ぶ、12.3インチのカラー液晶ディスプレイである。

自動開閉する充電リッドも未来的。左フロントフェンダーにCHAdeMO対応の急速充電口
右フロントフェンダーに普通充電口を配置する。

e-tronから取り入れた新しい技術は、オプション設定(26万円)の「バーチャルエクステリアミラー」だ。ウイング形状のステーで支えられた小型カメラが捉えた後方の映像を、ドアトリムに配置したハイコントラストのOLED(有機EL)ディスプレイに表示する技術である。「夜間や悪天候時でも鮮明に後方の状況が確認できるため、心理的な負担が軽減し、安全性向上に寄与する」のが、この技術のうたい文句だ。ドライバー側のディスプレイはタッチパネルになっており、手を近づけることで表示されるメニューの操作で表示範囲を調整することが可能。助手席側の表示範囲もドライバー側のディスプレイをタッチして調整する。

バーチャルエクステリアミラーは26万円のオプション
現在のところ多くのオーナーがオプション装着しているという。
トランク容量は660ℓ。

e-tronはこれまでのところ、「とにかく電気のアウディが欲しい。スペックや価格は関係ない」という、熱烈な支持者(で、しかも環境意識が高い層)が購入しているという。そういう人たちにとってバーチャルエクステリアミラーは、ひと目見て「欲しい」と思わせる最新技術に映るようだ。夜間や悪天候時にありがたみを感じることはあるかもしれないが、できれば、実車で確認してから選択するか否かを判断してほしい。筆者の場合、同様のシステムを備えるレクサスESやHonda eのようには抵抗なく使うことはできなかった。とくに後退時が鬼門で、周囲の障害物に対してどれだけのマージンが残っているのか、瞬時に把握することが難しいと感じた。




余計なお世話と捉えていただいても結構だが、ひと言だけ申し添えておく。

アウディe-tron 50 quattro S line


全長×全幅×全高:4900mm×1935mm×1630mm


ホイールベース:2930mm


車重:2420kg


サスペンション:F&Rウィッシュボーン式


モーター型式:EAS/EAW


排気量:2893cc


定格出力:165kW


最高出力:230kW


最大トルク:540Nm


搭載電池:リチウムイオンバッテリー


 総電圧;397V


 総電力量:71kWh


駆動方式:AWD


WLTCモード一充電走行距離:316km


交流電力量消費率:237Wh/km




トランスミッション:1速固定式




車両価格○1108万円


試乗車はオプション込みで1205万円

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