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日産キックス600km試乗インプレ Vプラットフォームと第一世代e-POWERの最終進化形にして限界点


コロナ禍が猛威を振るう昨今、プライベートな空間を保ちながら自由に移動できるマイカーの良さが見直されつつある。




そこで、クルマの運転のブランクが大きいペーパードライバーや高齢者、あるいはこの機会に運転免許を取得した初心者にオススメなのが、安価かつ狭い道でも扱いやすい軽自動車やコンパクトカーだ。しかし、肝心の帰省や旅行でも、家族みんなが快適に過ごせるのだろうか?




「最新の軽&コンパクトはファーストカーとして使えるか?」と題したこの企画、5台目は日産のBセグメントクロスオーバーSUV「キックス」。オレンジタン×ブラックの合皮シートを装着する「Xツートーンインテリアエディション」のFF車(4WD車の設定なし)で、高速道路約500km、一般道約100kmのルートを走行した。




REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)


PHOTO●遠藤正賢、日産自動車

今なお世界中を騒がせているカルロス・ゴーン元会長の逮捕・逃亡劇と、彼が残した負の遺産からの脱却を図るべく打ち立てた、2023年度までの事業構造改革計画「NISSAN NEXT」。その中には「18ヵ月間で12の新型車を投入する」というものが含まれており、そのプランの皮切りとなったのが、同年6月に国内デビューしたキックスだ。

初代日産ジューク
二代目日産ジューク

このキックス、日本国内においてはその直前に販売を終了した初代ジュークの後継車に位置付けられるが、欧州などでは二代目ジュークが2019年11月より順次販売開始されている。また、二代目ジュークは新世代のCMF-Bプラットフォームを採用するが、キックスのベースとなっているのは現行四代目マーチをルーツとするVプラットフォームだ。

2016年デビュー当時の日産キックス

そしてキックス自体、純粋な新型車ではなく、2016年8月以降ブラジルを皮切りとして中南米、北米、中国などで販売されている、同車のビッグマイナーチェンジ版。その際にタイ工場で日本および東南アジア向けの生産を開始し、ノートやセレナで大人気となったシリーズハイブリッド「e-POWER」とレベル2のADAS「プロパイロット」を新たに現地生産のうえ搭載している。

それらの経緯は上の記事に詳しいが、「二代目ノートe-POWERのSUV版」というべきその成り立ちを知り、過去の試乗経験を思い出すにつけ、期待値が下がっていったというのが正直な所。結論から先に言えば、その予想は若干外れ、概ね当たった。

【日産キックスXツートーンインテリアエディション】全長×全幅×全高:4290×1760×1610mm ホイールベース:2620mm

明るい色使いで見た目品質が高いツートーンインテリア

まず外れた点を挙げると、内外装の見た目品質は高い。ドアパネルにこそマーチやノートなど同じVプラットフォームを採用する車種の面影が見られ、使われている素材も決して高価ではない。だがテスト車両は内外装とも鮮やかなオレンジと黒のツートーンで、各パネル間のチリも小さく、かつて所有していた現行マーチの初期型とは隔世の感がある。だがこれは、約10年間でタイ工場の製造品質が劇的に向上したというよりも、マーチの製造公差がコストカットのために大きく取られていると見るべきだろう。

129ps&260Nmを発するEM57型モーターと発電用HR12DE型直3エンジンを搭載
ボディ・シャシーの主な強化部位

二代目ノートe-POWERよりも20ps&6NmアップしたEM57型モーターは、同じく130kg増えた車重に対し過不足ないスムーズな加速フィールをもたらしてくれる。むしろ、バッテリーが減っても極力発電しないよう、発電用HR12DE型直列3気筒エンジンの制御が改められたほか、ボディ・シャシーの剛性が高められたため、静粛性が改善されていることの方が、メリットとしては大きい。

ステアリングの右スポークに備わるプロパイロットの操作スイッチ

また、高速道路で加減速および操舵をアシストする日産のADAS「プロパイロット」は、車種によって当たり外れが大きい傾向にあるが、このキックスは当たりの部類。加減速のタイミングおよび速さ、操舵アシストの車線中央維持制御に違和感はほとんどなく、安心して運転支援を任せることができた。

後席は必要充分な広さを確保しているがシート形状が平板かつ小ぶり
フロントシートはフィット感こそ上々だが絶対的なサイズが小さい
ゼログラビティシートの構造図および疲労度概念図

では、予想が当たった点は何か。実際に走らせずとも感じ取れるのは前後シートだろう。




フロントシートは日産が「ゼログラビティシート」と呼ぶ、身体全体を連続的に支える構造に進化しているためフィット感は上々だが、身長176cm・座高90cmの筆者には絶対的なサイズが余りにも小さすぎる。出来の悪いシートの典型といえる現行マーチと比較すれば劇的に改善されてはいるものの、骨格からして小さいこのフロントシートにこそ、Vプラットフォームをベースとせざるを得なかったキックスの悲哀を感じずにはいられない。




後席は筆者が座ってヘッドクリアランスは10cm、ニークリアランスは20cmほどの余裕があるものの、シート自体がやはり小さく、また形状も平板なため、ホールド性・フィット感とも不充分。さらに、前席下にバッテリーを搭載するため足先を入れるスペースがなく、身体の収まりが悪いのも二代目ノートe-POWERと同様だった。

荷室は容量こそ大きいが後席を倒すと大きな段差と傾斜が生じる。奥行き×幅×高さは86~160×98~125×89cm(いずれも筆者実測)

「9インチのゴルフバッグなら3つ、Mサイズのスーツケースなら4つ積載できる」という荷室は確かに広いものの、6:4分割可倒式リヤシートは単純に背もたれが前に倒れるだけのシングルフォールディング機構。倒せば大きな段差と傾斜が生じるため、その上に荷物を置くのは現実的ではない。しかもノートと異なり、マルチラゲッジボードがオプションでも用意されていないため、その大きな段差を埋める手段もないのだ。

さて、実際に走らせてみるとどうか。本誌・鈴木慎一統括編集長が、上記の記事にて80km/h以下での燃費を計測しているため、今回はそれ以上の最高120km/hで走れるルートを選択。横浜の日産本社から市内の一般道を経て、東名・新東名高速道路ではプロパイロットを制限速度の上限に設定し、浜松SA・スマートICからは一般道で浜名湖に至り一周する、高速道路約500km・一般道約100kmのコースを走行した。なお走行モードは常時、ワンペダルドライブが可能になり減速力と加速レスポンスが最大となる「S」としている。

テスト車両は205/55R17 91Vのヨコハマ・ブルーアースE70を装着

日産本社周辺はキレイに舗装された良路が多く、こうした状況ではe-POWERはほぼ無音、タイヤノイズも極めて少ないため、刺激がなさすぎて眠気を催してしまうほど。だがひとたび荒れた路面に入るとタイヤノイズとフロアの振動が盛大になり、凹凸ではこれにリヤからの突き上げも加わるため、否が応でも目を覚まさざるを得なくなる。




なお、横浜市内の一般道を約40km走行した時点での燃費は26.6km/Lと、ほぼWLTC市街地モード燃費26.8km/Lに近い数値をマークした。




やがて横浜横須賀道路~保土ヶ谷バイパス~東名高速道路の制限速度80~100km/h区間に入ると、街乗りのような低燃費を維持するのは難しくなってくる。この区間ではほぼ渋滞に遭遇せず約90kmを走りきったこともあり、横横に入った時点で燃費計をリセットした後の燃費は20.0km/Lと、WLTC高速道路モードの20.8km/Lより若干低く、一般道より大きく落ちる結果となっている。

前後サスペンションの主な変更点

そして、新東名の制限速度120km/h区間に入り、プロパイロットも同じ速度に設定、燃費計もリセットすると、燃費の悪化はより一層鮮明になる。上り坂が多く交通量も少ないこの区間を約120km走行した後の燃費は15.2km/Lとなり、高速域を苦手とするe-POWERの特性が数値からも浮き彫りとなった。




なお、この速度域では直進安定性こそ高く、ステアリングレスポンスも軽快だが、わずかな路面の凹凸でもサスペンションがフルバンプし、強烈な突き上げとともに左右方向を含む車体の不快な揺れにも見舞われるようになる。ダンパーやバンプストッパーにはキックス独自のショック軽減策が盛り込まれているものの、あくまでもノートに対する車高・重量増とインチアップ、サスペンションセッティングのハード化を補う程度に留まっているようだ。

フロントサスペンションはストラット式
リヤサスペンションはトーションビーム式

浜松SA・スマートICから一般道に降り、やがて浜名湖周辺に到着すると、道幅が狭く路面が荒れた、湖畔のワインディングが目の前に現れてくる。低い速度でもクルマのポテンシャルを測ることができる絶好のステージだが、ここでの印象は前述の新東名120km/h区間とほぼ変わらず。SUVながらタイトなコーナーも軽快にクリアできる一方、大きな凹凸やヒビ割れた路面でのノイズや振動、突き上げは非常に強く、必然的に低速での慎重な走行を強いられる。そのためストップ&ゴーを繰り返す市街地での走行状況に近くなり、この一般道を約70km走行した際の燃費は17.2km/Lと振るわなかった。




帰路も同様のルート・条件で走行し、最終的に約600km走行した後のトータル燃費は17.2km/L。やはりこのキックスというクルマ、e-POWERというシリーズハイブリッドシステムは、舗装のキレイな都心部の街乗りでこそ、その良さが活きてくる。裏を返せば帰省やドライブ、そしてSUVに対し本質的に求められるアウトドアレジャーなど、家族みんなで高速道路を長距離長時間走り続けるのには全く適していない。




従って、キックスをファーストカーとし、すべてをこの1台で賄うのは無理がある。むしろ街乗り専用のセカンドカーとして選ぶなら、魅力的な選択肢となり得るだろう。

■日産キックスXツートーンインテリアエディション(FF)


全長×全幅×全高:4290×1760×1610mm


ホイールベース:2620mm


車両重量:1350kg


エンジン形式:直列3気筒DOHC


総排気量:1198cc


エンジン最高出力:60kW(82ps)/6900rpm


エンジン最大トルク:60Nm/3600rpm


モーター最高出力:95kW(129ps)/4000-8992rpm


モーター最大トルク:260Nm/500-3008rpm


トランスミッション:--


サスペンション形式 前/後:ストラット/トーションビーム


ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク


タイヤサイズ:205/55R17 91V


乗車定員:5名


WLTCモード燃費:21.6km/L


市街地モード燃費:26.8km/L


郊外モード燃費:20.2km/L


高速道路モード燃費:20.8km/L


車両価格:286万9900円
日産キックスXツートーンインテリアエディション

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