レーシングドライバーとしてGT選手権で優勝経験もある松田秀士さんが選んだ「2020年の推しカー」は、プジョー208/e-208、ホンダe、BMW アルピナ B3。B3は乗り心地の良さと意のままのコントロール性が特に印象的だったという。
TEXT●松田秀士(MATSUDA Hideshi)
ちっちゃいステアリングの上からメーター見るドラポジはおなじみだけど、そのメーターがおもしろい。メインのディスプレーだけじゃなくその上にヘッドアップディスプレイのようにプロジェクター方式で別のデータを映し出している。この方式だと焦点距離が延びるので、目が疲れにくい。これからのクルマに必要な情報伝達ディスプレーの将来像を見たような気がする。
クルマもプジョーらしいロールを大切にしてロールスピードと角度をデザイン。eはバッテリーの重さ(前後荷重配分)と低重心を利用するちょっと硬めのサスペンション。室内もこのクラスとしては静かで、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)&LKA(レーン・キープ・アシスト)も装備しているので遠出も苦にならない。しかも価格がリーズナブルだ。
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員向けの試乗会があったんですね。それが日帰りで裏磐梯(福島県)に行ってくるというスケジュール。これがね若洲のヘリポートからヘリ往復です。コンビニの駐車場みたいなところに降りて、そこから2時間みっちりとワインディングを堪能。帰路の夜景が素晴らしかったとか、ヘリ旅の素晴らしさにヤラレタ!と思いきや、いやいや本当にヤラレタのはB3のハンドリングでした。
まず裏磐梯って降雪地帯です。よって路面が悪い。凸凹、補修、アンジュレーションなんて我々上から目線で偉そうに並べてますけど、ほんと路面悪い。
B3はBMW 3シリーズの、いわば超スポーツバージョン。それが驚くほど乗り心地が良い。20インチなんてホイール入れてるのに、突き上げとかバイブレーションとか、さらに室内静粛性もオリジナル(この言い方は適切でないかもだけどアルピナさん許せ)の3シリーズを上回る。
でね、ちょっとクローズドなワインディングを全開で駆け抜けた。この手のスポーツとしては乗り心地も良いからサスペンションはソフト。ステアリング切り始めの程良いロール感は即座にフルロール(ちょっとしかロールしてない)の体勢を整え、力強く4輪が路面に吸い付く。いわゆる鏡面路面ではなくアンジュレーションの塊のような路面をタイヤとサスペンションがキレイに吸収しながら、しっかりと吸い付く。
だからコーナリングに入った!と感じたらすぐにアクセル全開。そしてステアリング修正皆無な感じで狙ったラインを100%トレースする。この快感! マシンに乗せられているというでもなく、自分でコントロール感がしっかりある。
2時間ほどの試乗。このまま東京までドライブして帰りたい気持ちになったけど、ヘリの誘惑には負けた。