2021年シーズンは各チームのライダーラインアップが大きくシャッフル。変更となる。ここでは2021年シーズン、どのライダーがどのチームから参戦するのかを見ていこう。
TEXT●伊藤英里(ITO Eri)
PHOTO●MICHELIN、MotoGP.com、Red Bull KTM Ajo
MotoGPクラスの2021年シーズン以降のライダーの契約更新は、シーズンの開幕前から進んだ。というのも、新型コロナウイルス感染症の影響により、初戦が7月中旬まで後ろ倒しになったためである。にもかかわらず、2020年シーズンをもって多くのライダーの契約がいったん切れるという状況。MotoGPはだいたい2年サイクルで解約更新を迎える。2020年はちょうどその契約更新にあたる年だった。年々早まっている契約更新の時期も相まって、シーズンの開幕を待たずに移籍や契約更新に関する話題が飛び交っていた。
さて、2020年シーズンからシャッフルされた、2021年シーズンの各チーム体制についてメーカーごとに整理していこう。まずはドゥカティ。ファクトリーチームDucati Teamは、8シーズンをともに戦ったアンドレア・ドヴィツィオーゾが2020年シーズンをもってドゥカティからの参戦に終止符を打った。この発表は8月中旬のことで、すでに多くのライダーが契約をすませていた状況だったため、ドヴィツィオーゾは2021年シーズン、MotoGPクラスへの参戦を“休止”。2022年シーズンへの可能性を模索するという。
同じくDucati Teamのダニロ・ペトルッチも離脱。2021年シーズンはサテライトチームPramac Racingライダーだったジャック・ミラー、フランセスコ・バニャイアが、ドゥカティのファクトリーチームライダーとなる。
ミラー、バニャイアが所属していたPramac Racingには、同じくドゥカティのサテライトチームEsponsorama Racingからヨハン・ザルコが移籍し、Moto2クラスよりステップアップするホルヘ・マルティンがこのチームからMotoGPクラスデビューを果たす。Esponsorama Racingに所属するのはMoto2クラスからの昇格組、2020年Moto2クラスチャンピオン、エネア・バスティアニーニとランキング2位のルカ・マリーニ。マリーニはバレンティーノ・ロッシの異父弟だ。2020年シーズンまでEsponsorama Racingから参戦していたティト・ラバットは、2021年はスーパーバイク世界選手権(SBK)に転向することになった。
余談になるが、2021年シーズンのMotoGPクラスには、マルケス兄弟(マルク・マルケス&アレックス・マルケス)、エスパルガロ兄弟(アレイシ・エスパルガロ&ポル・エスパルガロ)、そしてバレンティーノ兄弟(バレンティーノ・ロッシ&ルカ・マリーニ)という3兄弟が参戦する状況である。
※以下、写真の後に続くカッコ内のチーム名は2021年の所属チーム。
ヤマハのファクトリーチームMonster Energy Yamaha MotoGPはマーベリック・ビニャーレスが継続参戦。同チームで5シーズン目を迎えることになった。チームメイトはサテライトチームPetronas Yamaha SRTから移籍のファビオ・クアルタラロ。ヤマハファクトリーチームの2021年シーズンの体制発表は最も早く、2月の公式テスト前、1月末に行われた。サテライトチームPetronas Yamaha SRTではフランコ・モルビデリが契約を更新し、空いた1席にはバレンティーノ・ロッシが加わった。ロッシは2020年シーズンをもって、ファクトリーチームから離れたのだ。モルビデリは、ロッシがイタリア人ライダー育成を目的に立ち上げた『VR46アカデミー』出身。いわゆる師弟がチームメイトとなったわけである。
2020年シーズンにジョアン・ミルがチャンピオンに輝き、チームタイトルをも獲得したスズキのファクトリーチームは、ミルとアレックス・リンスが引き続き参戦する。4月から5月にかけて二人の契約更新が発表されたが、交渉はすでに1年ほど前から始まっていた。チームマネージャーのダビデ・ブリビオ氏はこの二人のライダー体制を2024年まで続けたいとも考えている。
2020年シーズン、ブラッド・ビンダーとミゲール・オリベイラによって3勝を挙げたKTMは、ファクトリーチームRed Bull KTM Factory Racingにビンダーのほか、オリベイラを起用。2017年のMotoGPクラス参戦開始当初からチームに加わっていたポル・エスパルガロは移籍した。ビンダー、オリベイラという若いライダー二人がKTMをけん引することになったのだ。サテライトチームにはイケル・レクオーナが継続参戦し、ドゥカティから移籍のペトルッチが加わる。若いライダーをそろえたKTMの中で、経験豊富なペトルッチが果たす役割は小さくはないだろう。
そしてホンダ。ファクトリーチームRepsol Honda Teamでは、2月中旬にM.マルケスが4年間の契約更新を行った。1年から2年契約が通常のMotoGP。異例の長さ、と言っていいだろう。M.マルケスのチームメイトとなるのは、KTMから移籍のP.エスパルガロ。2020年シーズンをファクトリーチームで戦ったM.マルケスの実弟、A.マルケスは、2021年シーズンはファクトリーチームではなくサテライトチームのLCR Hondaから参戦する。
MotoGPクラス唯一の日本人ライダー、中上貴晶は引き続き2021年もLCR Hondaから参戦することが発表された。2020年シーズン、表彰台に迫る走りを見せてきた中上。これまで1年前のマシンで戦っていたが、2021年シーズンは最新、つまりファクトリーライダーと同じマシンが供給されるという。そして、これまでLCR Honda CASTROLから参戦してきたカル・クラッチローはMotoGPフル参戦に終止符を打ち、2021年シーズンはヤマハのテストライダーに就任する。
アプリリアについては、アレイシ・エスパルガロがAprilia Racing Team Gresiniから引き続き参戦する。そのチームメイトはアンドレア・イアンノーネだったはずなのだが、ドーピングの陽性反応により出場停止処分により2020年シーズンは参戦できず、さらに11月上旬、4年間の出場停止の裁定が下された。このためアプリリアはA.エスパルガロの新たなチームメイトを決定しなければならなくなった。2020年シーズンにイアンノーネの代役を務めたブラッドリー・スミスとロレンツォ・サバドーリがアプリリアのライダーとして起用されることは明らかになっているが、レギュラーライダーとテストライダー、どちらがどちらになるのかは、開幕前のテスト後に決断されるという。
また、このAprilia Racing Team Gresiniは、グレシーニというインディペンデントチームが実質アプリリアのファクトリーチームという形でチーム運営を行ってきた。ただ、2022年をもってこの関係は解消されることが明らかにされている。