2020年シーズン、Moto2クラス、Moto3クラスに参戦していた7名の日本人ライダーは、それぞれにファンを湧かせる活躍を見せた。チャンピオンシップでタイトル争いを繰り広げ、優勝を飾り、表彰台に立った、そんな日本人ライダーの2020年というシーズンをまとめて振り返る。
TEXT●伊藤英里(ITO Eri)
PHOTO●Honda、Red Bull KTM Ajo、tech3
■■Moto2 Class■■
2020年シーズン、Moto2クラスに参戦したのは長島哲太(Red Bull KTM Ajo)。Moto2クラスとは、最高峰クラスであるMotoGPクラスとMoto3クラスの中間に位置するクラスである。このクラスは、トライアンフの3気筒765ccエンジンを搭載したマシンで争われるのが特徴だ。2020年、長島はチームを移籍し、Red Bull KTM Ajoというトップチームの一つから参戦した。
その2020年シーズン開幕戦のカタールGPで、長島は優勝を果たす。予選は14番手で、決勝レースは5列目という後方からのスタートだったが、少しずつ着実に順位を上げていった。20周のレースが残り3周になったときトップに躍り出ると、2番手のライダーを引き離し、優勝を飾ったのだった。長島にとって、Moto2クラス初優勝だった。その後のMotoGPは新型コロナウイルス感染症の影響でレースが延期され、再開されたのは7月中旬だったが、長島は再開直後の第2戦スペインGPでも2位表彰台を獲得。チャンピオンシップをランキング8位で終えた。
■■Moto3 Class■■
2020年シーズンのMoto3クラスには、6名の日本人ライダーが参戦した。Moto3のレースは接戦、混戦が常で、最終周の最終コーナー、さらにはチェッカーフラッグを受ける直前まで順位を競い合うことも珍しくない。
このクラスで2020年シーズン、チャンピオン争いを展開したのが、小椋藍(Honda Team Asia)だ。Moto3クラスでフル参戦2シーズン目の小椋は開幕戦で3位表彰台を獲得すると、第8戦エミリア・ロマーニャGPまでのシーズン前半戦で6度、2位または3位表彰台を獲得。前述のように、毎戦混戦が繰り広げられるMoto3クラスの中で、安定感を発揮していた。シーズン後半戦は、季節とともに下がっていった気温への適応がうまくいかず1度の3位表彰台獲得にとどまったが、最終戦ポルトガルGPまでチャンピオンを争い、最終戦で闘志あふれる走りを見せた。惜しくもチャンピオン獲得はならず、ランキングは3位。しかしチャンピオンからわずか4ポイント差のランキング3位であり、その走りはこの先の期待を感じたくなるものだった。小椋は2021年、Moto2クラスにステップアップすることが決まっている。
また、鈴木竜生(SIC58 Squadra Corse)は開幕戦から第3戦まで、予選でポールポジションを獲得。Moto3クラスに参戦して6シーズン目を迎えた鈴木は、英語のみならずイタリア語も堪能で、所属チームに溶け込んでいるのだとか。そんな鈴木は第3戦アンダルシアGPで優勝を飾り、Moto3クラスでの2勝目を挙げた。さらに第7戦サンマリノGPでは3位表彰台を獲得。このとき2位が小椋で、19年ぶりに日本人ライダー二人が表彰台に立った。鈴木は2021年もSIC58 Squadra CorseからMoto3クラスに参戦する。
そして、さらにもう一度、Moto3クラスで日本人ライダーが二人同時に表彰台に立ったグランプリがあった。第12戦テルエルGPで、佐々木歩夢(Red Bull KTM Tech 3)が2位、鳥羽海渡(Red Bull KTM Ajo)が3位を獲得したのだ。2017年シーズンからMoto3クラスにフル参戦を続けてきた佐々木にとっては、初の表彰台獲得。同じく2017年シーズンから同クラスを戦っている鳥羽は、2019年シーズン開幕戦カタールGPで優勝を飾って以来の表彰台獲得となった。2021年、佐々木は同チームから継続参戦、鳥羽はCIP Green Powerにチームを移籍してMoto3クラスに参戦する。
Moto3クラスには、2020年シーズン、二人の日本人ライダーがフル参戦デビューを果たした。山中琉聖(Estrella Galicia 0,0)と國井勇輝(Honda Team Asia)である。ルーキーイヤーは上位でのフィニッシュはなかったが、これからの糧となるシーズンを過ごしたに違いない。山中はCarXpert PuestelGPに移籍して、國井は同チームから、Moto3クラスで2021年シーズンを戦う。
世界を舞台に戦った日本人ライダーの2020年シーズンは、この先の彼らの期待を感じさせるものだった。
※ライダーの所属としてカッコ内に記載したチーム名は、2020年シーズンのもの。