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ホンダPCXがモデルチェンジで大進化|通勤バイクでありながら、ツーリングの相棒にもなる逸材だ。


東南アジアはもちろん世界市場で高い支持を得ているホンダPCXは、2010年の国内発売以来、原付二種コミューターとして日本各地で大人気となっています。そうした人気が背景となってPCXは、2014年、2018年とモデルチェンジを受けて進化熟成してきましたが、2020年12月、早くも4代目となって登場しました。

ホンダ・PCX……357,500円

 一見すると、どこがどんな風に変わったのかよくわかりませんでした。初代モデルから10年のときを経てすでに3度目のモデルチェンジを受けたPCXですけど、基本的なスタイリングデザインは大きく変わってないからです。しかし改めてよく見てみると、ボディパーツはエッジが立った造形となっていて、ヘッドライト周りのデザインも変更されていました。「新しいこのデザインかっこいいね」と思う人もいれば、「以前のほうが良かった」と感じる人もいるでしょう。スタイリングデザインはあくまで個人の好みですから、新しくなったPCXの優劣の決め手にはなりませんが、高級感、上質感が増したよう感じます。

 シートに跨ってまず目についたのが、デザインが一新されたメーターです。中央に大きなLCDディスプレイを配置しているのですが、表示される数字やグラフは老眼にも見やすい大きさがうれしい。左右にはインジケーター類が配置してありますが、横長のウインカー表示ランプがめちゃめちゃ確認しやすい。これだけ大きければいやでも視界に入るので、消し忘れるなんてことはないんじゃないでしょうか。そういえば、バッテリー電圧低下警告灯も新たに採用されていました。

デザインを一新し見やすさが高まったメーター。バッテリー電圧低下警告灯も新採用

 ラゲッジスペースは2ヶ所あります。ひとつはカウルインナーパネルの左側に設けられたフロントインナーボックスです。1.7L容量といわれてもピンとこないのですが、500mlのペットボトル飲料がちょうど収まるので便利です。またボックス内にはスマホの充電に役立ってくれるUSB Type-Cのソケットが装備されています。従来型ではACCソケット、いわゆるシガーソケットだったので、時代の変化を感じる部分でもあります。

 もう1ヶ所がシート下のトランクです。まあどんなスクーターにもある装備なんですけれど、形状や大きさで使い勝手はけっこうちがうものです。新型PCXでは従来の28Lから30Lに容量が増えているようです。インナーボックスと同じで容量をいわれても想像がつきにくいのですが、ヘルメットを収納してみたところ、驚くほどピッタリと収まって、シートを閉めたときにも干渉しませんでした。ヘルメットが入ったと思ってシートを閉めたら、シートベースが当たって閉まり切らないということがよくあります。なので猜疑心の塊になって閉めてみたのですが、問題なく閉まりました。妙に感激した次第です。

 シート下のトランクは見たところかなりスペースがあるので、泊まりがけのツーリングに必要な荷物もすべて収納できそうです。荷物を厳選すればキャンプ道具一式も入るかも。

使い勝手のいいフロントインナーボックス。USB電源も装備
シート下のトランクも容量がアップし積載性を向上させた

 4代目PCXはこのように、実用機能でもユーザーの側に立って改良されたところが少なくない。普段使いするコミューターだからこそ、使い勝手のちょっとした差が善し悪しを左右することもある。その意味では、PCXは良い方向に進化しているといえそうです。

 ライディングポジションに従来型との違いはあまり感じませんでした。764mmの低シート高なので両足はラクに着けられるし、車重も132㎏に抑えられているので重さに閉口することもありません。足置きスペースであるフロアボードは若干広がって快適性を増したとのことですが、長身の僕の場合、足がもう少し前方に投げ出せるようになっていれば、より快適になるのですが。

足置きの自由度が広がりさらにゆとりあるライポジになった
シート高が764mmと低いので足つきは問題ない

 4代目PCXはフレームから足回り、そしてエンジンに至るまですべてリニューアルされました。とくにエンジンは、ユーロ5に適合させるため大きく手が加えられました。排ガス規制がどんどん厳しくなるので、対応するメーカーやエンジニアたちの苦労は想像に難くありません。新設計されたエンジンは、eSP+という名称がつけられたもので、ボアを拡大してショートストローク化、そしてヘッドは4バルブ化して圧縮比も上げています。さらに徹底したフリクションの低減を図っていて、環境性能を高めたうえで高回転高出力化を達成しています。排ガス対策するとどうしてもパワーダウンしてしまうのですが、高性能化することで対処しているのです。

ショートストローク化、4バルブ化、高圧縮化などで環境性能と出力特性を高めたeSP+エンジン

 従来型と乗り比べて試乗したわけじゃないので明確な違いはうまく説明できませんが、スタートした瞬間、力が強くなったかな?と感じました。スムーズなスロットルレスポンスは相変わらずですが、なんとなく加速性が良くなったような気はします。いずれにしても、原付二種でこれだけのパワーがあれば都会を元気に走り回れます。それと細かいことですが、ラバーマウントハンドルホルダーを新たに採用したことで、ハンドルグリップから伝わる振動が軽減され疲れにくくもなっているようです。

ハンドルホルダーがラバーマウントとなったので手に伝わる振動は軽減された

 フレームが新設計となったほか、足回りも大きく変更されています。タイヤは前後ともワイドなサイズとなり、リアについては14インチから13インチへと小径化。そのぶんリアサスペンションのストローク量を大きくしています。グリップ性を高め、路面追従性と乗り心地を良くしたということですね。そしてブレーキには、フロントにABSを標準装備したシングルディスクを前後に採用。さらにトラコン(ホンダではトルクコントロール)も装備しました。

フロントブレーキにはABSを標準装備する
13インチへと小径化したリアタイヤ。サスペンションストロークは10mm大きくなった。またトラコンも採用

 実走では、ハンドリングの軽快性はそのままに、安定性が高まったような印象を受けました。ABSやトラコンの作動性というか効果は市街地走行だけではよくわかりませんでしたが、たとえば砂利の駐車スペースに進入したときや、雨で路面がウエット状況のときなどでは、タイヤがグリップを失ってスリップするようなことがないはずなので、転倒のリスクは格段に減少します。不安を抱くことなく走ることができるのはうれしいかぎりです。


 ホンダの人気モデルであるPCXは、新型になってますます需要が高まりそうです。

一段と精悍なデザインとなったLED採用のヘッドライト
LEDを採用したテールランプは、ストップランプともども被視認性に優れる
座面が広く良好なクッション性を持つシートが快適な乗り心地を提供

主要諸元

車名:ホンダ・PCX


型式:2BJ-JK05


全長(mm):1,935


全幅(mm):740


全高(mm):1,105


軸距(mm):1,315


最低地上高(mm):135


シート高 (mm):764


車両重量(kg):132


乗車定員(人):2


燃料消費率(km/L):国土交通省届出値:55.0(60km/h)<2名乗車時>


WMTCモード値(km/L):47.4<1名乗車時>


最小回転半径(m):1.9




エンジン型式:JK05E


エンジン種類:水冷4ストロークOHC4バルブ単気筒


総排気量(㎤):124


内径×行程(mm):53.5×55.5


圧縮比:11.5


最高出力(kW [PS] /rpm):9.2[12.5]/8,75


最大トルク(N・m [kgf・m] /rpm):12[1.2]/6,500




燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)


始動方式:セルフ式


点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリー点火


燃料タンク容量(L):8.1


変速機形式:無段変速式(Vマチック)


タイヤ(前/後):110/70-14M/C 50P / 130/70-13M/C 63P


ブレーキ形式(前/後):φ220mm油圧式ディスク / φ220mm油圧式ディスク


懸架方式(前/後):テレスコピック式 / ユニットスイング式


フレーム形式:アンダーボーン
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