コロナ禍の影響も少なく、確実に成長しているキャンピングカー市場。その中でも、キャブコンは確実に販売台数が伸びているカテゴリーだ。特にオススメと言えるのが、マツダ・ボンゴトラックをベースシャシーにしたモデルだ。その理由とは?
TEXT●山崎友貴(YAMASAKI Tomotaka)
取り回しの良さと最大積載量がボンゴを選ぶ理由
ここで言うマツダ・ボンゴとは、今年8月に生産を終了した4代目モデルのことである。1999年から2020年まで、なんと21年間も販売され続けたワンボック車で、多くのユーザーに愛された名車である。
キャブコンにはベース車両(シャシー)があり、最近であればトヨタのカムロードというキャブコン専用車がメジャーだ。しかし、このボンゴもキャブコンのシャシーとして使われることが多かった。キャブコンのベースシャシーとしては、日産のNV200バネットやトヨタのタウンエースなども挙げられるが、なぜかボンゴは人気だった。実はそれにはいくつかの理由があるのである。
まず、ボンゴの持つ最大の特徴は、その取り回しの良さにある。キャブコンは後部に大きなキャンピングシェルを背負うため、取り回しの良さは重要な性能となる。その指標となるホイールベースを見てみると、2200㎜。カムロードのホイールベースは2545㎜もあるのだから、車幅が5㎜しか違わないことを考えれば、このホイールベースの差は取り回し時に大きな違いとなって出る。
タウンエースもコンパクトなシャシーだが、ホイールベースは2650㎜。NV200バネットにいたっては、2725㎜になるのである。もちろんホイールベースが長ければ直進安定性が増すので、悪いことばかりではない。しかし、タウンエースなどに比べて、ボンゴが優れている点は他にもある。それは動力性能だ。
タウンエースは1.5ℓ、NV200バネットが1.6ℓのエンジンを搭載しているのに対して、ボンゴは1.8ℓエンジンを積んでいるのである。重量物を最初から積んでいるに等しいキャブコンにおいては、この排気量差、つまり動力性能の差は快適なドライブに直結する。
さらに最大積載量を見ても、ボンゴに一日の長があることが分かる。タウンエースは800kgであるのに対して、ボンゴは1150kg(共に4WDの値)と200kg以上も多く積めるのである。これはキャンピングカーの装備の充実度や、使用時の積載量に関わることだから、非常に大きなファクターだ。
残念ながら、すでに4代目ボンゴの生産は終了したため、現在各ビルダーが保有している車両を売り切ればもう買えないことになる。ちなみに後継の5代目ボンゴはダイハツのOEM車であり、実質タウンエースと同じ兄弟車だ。
ボンゴをベースにしたキャブコンでオススメなのが、AtoZの「アミティ」シリーズだ。AtoZは昭和63年にスタートした老舗のビルダーで、黎明期からボンゴベースのキャブコンを製造していた。その草分け的モデルが、「アレン」だ(タウンエースベースモデルもある)。アレンは今年、誕生30周年モデル「アレン30」が発売されているが、アレンの後継モデルにあたるのがアミティである。
アミティシリーズには、スタンダードモデルの「アミティ」を筆頭に、「アミティLX」「アミティLE」「アミティSPEND」をラインナップ。内部のレイアウトや装備がそれぞれ異なり、それによって就寝定員が4名から6名となる。
コンパクトなのに就寝定員が6名確保できるというのは、都会に済む3世代家族などには実に都合がいい。駐車場の確保がしやすい上に、家族全員でオートキャンプに出かけることができるからだ。もちろんボンゴベースなので、キャブコン初心者でも運転がしやすいというメリットもある。
居住性という点では、カムロードをベースにした同社の上級モデル「アンソニー」にかなわない。しかし実際に寝泊まりしてみると、それほどアミティが狭いとは感じないはずだ。同時にアミティはインテリアのコーディネイトが巧みなため、女性ユーザーの中にはかえってアミティの方がいいという向きが少なくない。
ちなみに休日、高速道路を走っているキャブコンを注視してみると、アミティが非常に多いことに気づく。やはり400万円台で充実装備のキャブコンが手に入ることを考えれば、人気が集まるのも分からなくもない。
市場でも人気のアミティだが、アレン30と合わせて、年内発注分であれば何とかボンゴを確保できそうとのこと。キャンピングカーは中古市場でのリセールバリューもいいので、完全絶版になる前にぜひ決断してみてはいかがだろうか。