日産の先進運転支援システム、プロパイロットには、1.0と2.0がある。2.0を搭載するのは、スカイライン・ハイブリッドである。プロパイロット2.0は、どのくらい使えるか? 約500km走って確かめてみた。
e-POWERと並んで日産が得意とするプロパイロットには、1.0と2.0がある(1.0の方はことさら「1.0」とは言わないが)。2.0を搭載するのは、スカイラインのハイブリッドモデルである。3.0ℓV6ツインターボを積む400RやGTにはプロパイロット2.0はついていない。
スカイライン400Rを試乗したとき、「スカイライン、買うなら400Rだな! このV6ツインターボ、凄くいい!」と思った。プロパイロット2.0がつくハイブリッド系については、正直ちょっと印象が薄かった。プロパイロット2.0が鳴り物入りで登場した際に試乗会で体験したのだが、「制限速度内なら手放し運転ができる」ことにあまりメリットを感じなかったのだ。試乗コースになっていた高速道路は比較的空いており、(もちろん違反なのですが)ほぼすべてのクルマが制限速度以上で走っていたからだ。
そもそもプロパイロット2.0とはどんなものなのか? 日産のホームページにはこう書いてある。
プロパイロット2.0は、高速道路や自動車専用道路を運転者が設定した車速を上限に、先行車と車速に応じた車間距離を保ちながら、車線中央付近を走行するための運転操作や車線変更操作を支援します。またナビゲーションシステムで目的地を設定すると、ルート上の高速道路の出口までアクセル、ブレーキ、ステアリングを制御し支援します。
今回、あらためてスカイライン・ハイブリッドを試乗してプロパイロット2.0を試す機会を得た。その結果は、
プロパイロット2.0、最高! これは便利だ
だった。見事な掌返しである。
横浜の日産グローバル本社でスカイラインGTタイプSP(ハイブリッド2WD)をお借りしたとき、外は強い雨だった。
ちなみに、日産スカイラインGTタイプSP(ハイブリッド)の車両価格は616万円。400R(562万5400円)より高く、スカイラインシリーズのトップグレードという位置づけだ。
一部の区間でハンドルマークがグリーンに変わってハンズオンを促されたが、インターフェイスはとても自然で、「はいはい。ハンドルちゃんと持ちますよ」ってな感じである。
大井松田から御殿場のかなり曲がりくねった区間も、かなりひどい雨のなか、プロパイロット2.0はまったく問題なく作動した。これはいい。富士スピードウェイまでの道程のおそらく70%はハンズオフでいけた。
ハンズオフできる設定速度は、制限速度までと思っていたのだが、じつは「メーター誤差を加味して、実はプラスとマイナス10kmまで(5km刻みで)変更できる」ことをあとで知った。なるほど、これはプロパイロット2.0のプラスポイントだ。
お借りしたスカイライン・ハイブリッドは、本当に下ろしたてのパリパリの新車。なにもかもがビシッとしていて気持ちいい。数日間ともに過ごしたのだが、7速ATに1モーターを組み合わせた「1モーター2クラッチ」のハイブリッドの完成度の高さも好印象だった。
EV走行が可能だから、深夜や早朝の住宅街でも問題ない(やはりGT-Rだとちょっと周囲が気になるものだから)。エネルギーモニターを見ていると、エンジンのON/OFFを細かく制御しているのがわかる。逆に言えば、モニターを見ていないと、エンジンのON/OFFを感じることはあまりないのだ。
スカイライン・ハイブリッドの身のこなしは、高級セダンそのものだ。ボディサイズが
全長×全幅×全高:4810×1820×1440mm
ホイールベース:2850mm
となかなか堂々たるサイズであることも高級な感じの演出に一役買っている。トヨタ・クラウン(全長×全幅×全高:4910×1800×1455mm
ホイールベース:2920mm)よりも一回り小さいのだが、最小回転半径はクラウンが5.3mなのに対してスカイラインは5.6m(ちなみにマイカーの先代MBW320dは5.4m)と大きい。道路の狭い住宅街などでは少し気を遣った。
今回の試乗では高速道路5、郊外路2、市街地3くらいの割合で480km走った。トータルの燃費は13.3km/ℓとなかなか優秀な数字をマークした。
WLTCモード:12.4km/ℓ
市街地モード9.0km/ℓ
郊外モード12.3km/ℓ
高速道路モード14.9km/ℓ
よりも良い燃費となった。燃料はハイオクだが、13.3km/ℓ走るなら(ライバルにもなる輸入車勢はどれもハイオクだから)、充分に競争力はあると感じた。
少し気になったのは、ステアリングのフィール(というか重さ?)。ご存じの通り、スカイラインにはDAS(ダイレクト・アダプティブ・ステアリング)が採用されている。いわゆる「ステア・バイ・ワイヤー」である。フェイルセーフのために、ステアリングのインテーミディエイトシャフトは存在するのだが、通常はステアリングホイールとステアリングラックは機械的には繋がっていない。だからこそ、ステアリングフィールは自由自在に作り出せるはず。DASが出たばかりのときより、ずっとステアリングフィールは良くなっているけれど、それでも300ps級(400Rに至っては405ps)で車重1800kgオーバーのボディを操るのに、この手応えでいいのかな、と思う。DASはプロパイロット2.0に必須の技術要素なのだが、ステアリングフィールの作り込みはきっととても難しいのだろう。
なにせ、「ハンズオフ」と「ハンズオン」の間を行き来するのだから。
スカイラインと数日過ごした。条件によってハンドルから手を離せるかどうか、についてはあまり意味がないと思っていた。いわゆる「自動運転へ繋がる技術」も、自動運転のレベル2から一気にレベル4へいくくらいのジャンプアップをしないと、あまり意味はないのではと考えていたが、この数日で、そのメリットを体感できた。
このクルマなら、東京から名古屋、いや大阪までドライブしても、プロパイロット2.0のおかげで疲労は最小限で済むだろう。その分を出かけた先でのビジネスや観光にエネルギーを振り向けられる。それこそが、プロパイロット2.0の真価なんのだと思う(まぁビジネスマンが東京から名古屋までクルマでいかないだろうけど)。
日産スカイラインGTタイプSP(ハイブリッド)
全長×全幅×全高:4810×1820×1440mm
ホイールベース:2850mm
車重:1860kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式 Rマルチリンク式
駆動方式:FR
エンジン
形式:V型6気筒DOHC
型式:VQ35HR
排気量:3498cc
ボア×ストローク:95.5×81.4mm
圧縮比:10.6
最高出力:306ps(225kW)/6800pm
最大トルク:350Nm/5000rpm
燃料:無鉛プレミアム
モーター
型式:HM34型交流同期モーター
最高出力:68ps
最大トルク:290Nm
燃料タンク:70ℓ
燃費:WLTCモード:12.4km/ℓ
市街地モード9.0km/ℓ
郊外モード12.3km/ℓ
高速道路モード14.9km/ℓ
トランスミッション:7速AT
車両本体価格:616万円
試乗車はメーカーop48万7300円(BOSE Performance Seriesサウンドシステム、電動ガラスサンルーフ、特別塗装色)ディーラーop14万1739円(日産オリジナルドライブレコーダー、プレミアムフロアカーペット、ウィンドウ撥水処理)で合計678万9039円