高い燃焼圧力に耐えるために頑丈に作るのがディーゼルエンジンの基本。よって、圧縮比は全体的にガソリンエンジンより高めになる。
TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)
自己着火のために圧縮比を高めに設定、膨張比の大きさによって熱効率が高まるDE。しかし、その反面、高圧縮状態からの燃焼であるがゆえ、燃焼時の筒内圧力が非常に高くなる。少々極端にいえば、常にノッキングを起こしながら作動しているようなものだから、エンジンを構成する各パーツには、高い筒内圧力に耐えうるだけの強度・剛性が要求される。たとえば、ピストンに鍛造品を使い、シリンダーブロックをクローズドデッキ構造とするものも珍しくない。これがDEの製造コストを高めてしまう要因のひとつである。
上の写真はBMWのV型8気筒DE用シリンダーブロック(アルミ製)。リブの数、サイズなど、ガソリン用ブロックとは一線を画す。また、高圧に耐えるピストンやコンロッドは質量が大きいので往復慣性力も大きくなることへの対策、つまり振動対策が必要で、これも重量増とコストアップの要因となりがち。写真下はBMWの4気筒DEに採用されたバランサーシャフトだ。
ガソリンエンジンとの違いをP-V線図で見てみよう。シリンダーの容積(ピストンのストロークによって変化)を横軸、シリンダー内圧力を縦軸にとって、熱サイクルを図示したものがP-V線図(圧力:容積Pressure-Volume線図)だ。
4サイクルエンジンでは、吸気、圧縮、燃焼、排気の4つの工程(ストローク)でひとつのサイクルを構成するので、高圧と低圧の2つの面積ができる。大きな高圧の方が燃焼仕事(パワー)で、小さな低圧の方がポンプ仕事(損失)を表す。ここで大きな面積から小さな面積を引いたものが、エンジンの1サイクルあたりの仕事を表わし、その値が大きいほど大きなトルクを発生する。
ここに掲載したP-V線図は、DEとガソリンエンジンの違いを理解しやすくするために作ったもの。DEの高圧から低圧を引いたもの、ガソリンの高圧から低圧を引いたもの、それぞれの面積がイメージできるだろう。この差が熱効率の差であり、DEが燃費性能に優れる理由のひとつとなっている。