ドゥカティ・パニガーレ V4Sはズバリ、ドゥカティのフラッグシップモデルである。MotoGP 、あるいはワールドスーパーバイクシーンで活躍する本物のレーシングマシンに最も近いホットな存在なのである。
REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●ドゥカティジャパン株式会社
ドゥカティ・パニガーレ V4 S.......3,472,000円
今や、これほど説明しやすい明快なコンセプトを持つバイクは少ないのかもしれない。古い言い方をすれば、レーサーレプリカと言える極めて “熱い” スーパースポーツ。開発の狙いはサーキットと言う勝負のステージでライバルより速く走れ、トップでチェッカーフラッグを受けられる総合力の高いハイパフォーマンスを備えることにある。
簡単に言うと加速力、旋回力、制動力の全てに一流の性能を備える事。しかもそれを誰がライディングしても遺憾の無い性能を発揮できる扱いやすさを伴う事も重要なファクターとなる。
思えばドゥカティは古くから、一歩上を行く高性能を追求し続け、その終始一貫したこだわりには、モータースポーツシーンでの活躍とが上手くリンクして市販車のレベルアップと確かな人気を獲得してきていると思う。
半世紀程前から高回転高出力の追求を可能とするデスモドロミック(バルブの強制開閉システム)を採用。当時のバルブスプリングではサージング(バルブ踊り)の発生で吸排気制御ができなくなる領域を超える、確かな吸排制御が可能となり高回転高出力の発揮に貢献。
低く身構えるレーシー(スポーティ)なライディングポジションや、ロングホイールベース(高速旋回時の安定性が高かった)の採用等、ライバルとは一線を隠す仕上がりを誇っていた。
近年ではスーパーバイクやMotoGPシーンでの活躍を元に市販車も年々、積極的なポテンシャルアップが図られている。
プレスリリースから引用すれば、「セッション全体でさらに速いラップタイムを刻むことが可能になっています」という。
この意味は限られたライダーによる1発のタイムアタックでは無く、ライダーを選ばない親しみやすい操縦性の中で安定的に好タイムを稼ぎだす実力を備えていると解釈できるのである。
エアロダイナミクスの熟成はもちろん、6軸IMU(慣性計測装置)から得られるデータを活用したオーリンズ製の電子制御サスペンションや、エンジン・マネージメントの進化で、下の棒グラフに示す(バレルンガ・サーキットテスト)様なポテンシャル向上を果たしている。
結果から推察すると、絶対的なパワー向上と言うよりは、誰にでも有効活用できる太く扱いやすい出力特性と減速旋回から脱出までのスロットルワークがより積極的に開けて行けるようにフレンドリーな乗り味に進化している事を意味していると思う。
そのノウハウは2018年のMotoGP マシンからフィードバックされたもので、よりサーキットに割り切ったV4R に搭載されていたトラクション&ウイリー・コントロールがV4&V4Sにも新規投入されたのである。これにより、スリックタイヤ走行や、レインタイヤ装着時の雨天走行でもサーキットパフォーマンスを向上できたと言う。
ちなみにスタンダード仕様のパニガーレV4と試乗車の同V4Sの違いは次の表に示されている通り。電子制御のオーリンズ製サスペンションやマルケジーニ製ホイール、リチウムイオンバッテリーの装備等で軽量化も追求されている。
搭載エンジンは既報のストリートファイターV4Sと基本的には共通だが、細部のセッティングは異なっている。クランクの逆回転は同じ。ツインインジェクターと可変長インテークシステムを装備している。圧縮比も14.0対1 と共通だが、ECU等が異なり最高出力は214p/13,000rpmを発揮。
ギヤ比も最終減速比がストリートファイターより高めに設定されている。フルフェアリングの装備と合間って最高速が伸びる。
装備重量の195kgで計算しても馬力当たり重量は0.91kgに過ぎない。この事実からも、強かな動力性能の高さが期待できるのである。
作りの美しさとポテンシャルは一級!
足つき性チェック(身長168cm)
ディテール解説
◼️主要諸元◼️
全長×全幅(含むミラー)×全高:2110×734(805)×1132mm
シート高: 835 mm
ホイールベース: 1,469 mm
最低地上高:125mm
車両重量(乾燥):195kg(174kg)
エンジン形式:デスモセディチ・ストラダーレ、カウンター・ローテーティング・クランクシャフト、
エンジン種類:水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ(4デスモドロミック・タイミング)
気筒数配列:90°V型4気筒
排気量:1,103 cc
ボア×ストローク:81 x 53.5 mm
圧縮比: 14.0:1
最高出力: 157.5kW(214ps)/13,000 rpm
最大トルク:124Nm (12.6 kgm) /10.000 rpm
燃料供給装置: 電子制御燃料噴射システム、ツイン・インジェクター、フルライド・バイ・ワイヤ、 楕円スロットルボディ、可変長インテークシステム
エグゾースト:4-2-1-2レイアウト、O2センサーx2、触媒コンバーターx2
ギアボックス:6速、ドゥカティ・クイックシフト (DQS)アップ/ダウンEVO 2
1次減速比: ストレートカットギア、減速比 1.800
減速比:
1速 2.714(38/14)
2速 2.118(36/17)
3速 1.737(33/19)
4速 1.524(32/21)
5速 1.364(30/22)
6速 1.250(30/24)
最終減速:チェーン 2.563(16/41)
クラッチ: 湿式多板、油圧式、セルフサーボ/スリッパー・クラッチ機構付
フレーム: アルミニウム合金(フロント/リヤサブフレーム)
ホイール(前/後):3.50-17 鍛造アルミニウム合金3本スポーク/ 6.00-17 鍛造アルミニウム合金 3本スポーク
タイヤ(前/後):120/70 ZR-17 ピレリ製、ディアブロ・スーパーコルサSP / 200/60 ZR-17 ピレリ製、ディアブロ・スーパーコルサSP
サスペンション(前/後):オーリンズ製NIX30 φ43mmTiNコート・ フルアジャスタブル倒立フォーク
電子制御Smart EC 2.0システム / アルミ片支持スイングアーム、オーリンズ製TTX36 フルアジャスタブル・モノショック、電子制御Smart EC 2.0システム
ホイールトラベル(前/後):120 mm / 130mm
ブレーキ(前/後):ブレンボ製4ピストン・ラジアルマウントStylema®(M4.30)モノブロックキャリパー、φ330mmセミフローティング・ダブルディスク、ボッシュ製コーナリングABS EVO /ブレンボ製2ピストン・キャリパー、φ245mmディスク、ボッシュ製コーナリングABS EVO
メーターパネル:5インチ・TFT高解像度&高輝度フルカラーディスプレイ
キャスター: 24.5°
トレール: 100 mm
ステアリング切れ角(左/右):26° / 26°
燃料タンク容量: 16L(予備4.5L含む)
乗車定員数:2名
燃料消費率:14.5km/L
⚫️試乗後の一言!