大ヒットとなっているトヨタ・ヤリスクロス。BセグSUVのニューカマーとして、プラットフォームから考え抜いて開発された戦略モデルだ。日本と欧州の市場をターゲットにして開発されたヤリスクロス。日本で選ぶべきはハイブリッドかガソリンか、FFかAWDか? 走りに定評のあるジャーナリスト、瀬在仁志が試した。

TEXT◎瀬在仁志(SEZAI Hitoshi) PHOTO◎Motor-Fan

ヤリスクロス Z 4WD 車両価格244万1000円(試乗車はオプション込みで291万5375円)

このところ、ダイハツ・ロッキーやフォルクスワーゲンTーCross、日産キックスなどのコンパクトSUVを、街中やショールームなどで目にすることが多い。いわゆるBセグと呼ばれるエントリーサイズに属するが、これまでのBセグモデルといえば、日産や三菱に代表されるようにアジアン・カーから出戻りしたコンパクトHBモデルが中心。安く売れればそれでよし、といったメーカーの都合が最優先で、なかなか心に刺さるモノが少なかった。



それが、最近のSUV人気の流れを汲んで、国内外のメーカーが続々と背の高いBセグモデルを投入。ゆとりあるキャビンスペースと機動力の高さで実用車としての魅力はもちろん、コストパフォーマンスの高さからも、ユーザーの気持ちをガッツリとつかんだ印象だ。



トヨタから新たに投入されたヤリスクロスはそのど真ん中に攻め込んできた。コンパクトカー向けTNGAプラットフォームGA-Bをベースに1.5ℓ3気筒エンジンやHEVモデルを組み合わせたうえに、各モデルにFFと4WDをラインアップ。都市型コンパクトSUVながら走りの本質は手抜かりなし。全方位カバーのモデルとして大いに注目できる。

ヤリスクロス HEV Z e-Four

最初に乗ったのはHEVのAWDモデル。FF・HEVシステムに、独立したリヤモーターを組み合わせて、発進加速時などでアシストを行なってくれる。滑りやすい環境はもちろん、不整地などでの効果は大きく、今回は特設コースでその実力を体感。横転してしまいそうな斜面の通過や、交互に大きなギャップを乗り越えるような環境でも、リヤからのサポートによって進路が乱れることはないし、対角する2輪が路面から離れてしまっても、ブレーキを掴むLSD効果によって駆動力をキープ。モーター駆動は滑らかで力強いから、容易に難関を通過してくれる。



そのときにはボディはねじり方向の力が加わるなど、ひずみが生じてしまうはずなのに、きしみ音ひとつしない強靱さにも驚かされた。すでにリヤモーター駆動のAWDモデルはプリウスなどでも経験済みだが、パワーの出方や前後バランス等に関しても自然で、ボディ、駆動システムともに良く仕上がっている。



通常のドライブでも発進加速時には滑らかにスタートでき、無駄なエンジンの吹け上がりも少ない。HEVシステム自体のアップデートの効果もあり、加速感とパワーフィールに齟齬がなくて扱い易く、質感も高い。ひとクラス上の上質感を身につけたといえる。

エンジン 形式:直列3気筒DOHC+THSⅡ 型式:M15A-FXE 排気量:1490cc ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm 圧縮比:ー 最高出力:91ps(67kW)/5500pm 最大トルク:120Nm/3800-4800rpm 燃料供給:PFI 燃料:レギュラー 燃料タンク:36ℓ フロントモーター:1NM型交流同期モーター 最高出力:80ps(59kW) 最大トルク:141Nm リヤモーター:1MM型交流誘導モーター 最高出力:5.3ps(3.9kW) 最大トルク:52Nm

高速ドライブでも静粛性は高く、加速時のパワーフィールも悪くない。足元も基本的にはカドがなくて、ボディのしっかり感を活かしているものの、リヤが上下にブルッと震えるのは気になった。安定感も高く静かなだけに、唯一惜しく感じられた。

トヨタ・ヤリスクロス HYBRID Z(FF)車両本体価格:258万4000円 試乗車はオプション込み319万9285円

その点、HEV・FFモデルはHEV・AWDモデルより80kg軽いこともあって、すっきりとしている。リヤからの駆動力サポートがないだけに、発進加速時には多少ボディが上下するものの、基本フラット感をキープ。高速巡航時には、前後に姿勢が動くことは少なく、路面からの入力も大きくないから、終始落ち着いている。上質感を味わえるといった点ではお勧めモデルといっていい。

全長×全幅×全高:4180mm×1765mm×1590mm ホイールベース:2560mm

最低地上高:170mm トレッド:F1515mm/R1515mm 最小回転半径:5.3m
車重1200kg 前軸軸重750kg 後軸軸重450kg

個人的に気に入ったのはガソリンモデルだった。新開発の1.5ℓ3気筒エンジンは不連続なサウンドが少々気になるものの、振動自体は押さえ込まれていて、パワーもしっかりとついてくる。打てば響くダイレクトな加速感こそコンパクトSUVの走りにむち打ってくれる。FFモデルに関してはステアフィールは落ち着いているうえに正確で、操舵初期からノーズの動きはピッタリとリンクしてくる。剛性感の高いボディと、足元に重量物を持たない前後重量バランスの良さが活かされている。



惜しむらくはエンジンのサウンドのみ。HEVでは打ち消されている音色が耳に届いてしまう。

ガソリンのAWDモデル。多板クラッチのカップリングを使う。

車輪が浮いてしまうような悪条件でも「Rock & Dirt」モードにすれば、軽々と脱出できた。

トルク配分は、モニターで確認できる。

走りのモデルとして見逃せないのが、ガソリンのAWD仕様。HEV・4WD同様にリヤサスにダブルウィッシュボーンサスを採用し、電子制御センターマルチプレートを介してリヤへの駆動力をコントロール。滑りやすい路面はもちろん、高速ドライブ時にも、機械的に駆動力がリヤへも伝達されることから足元の落ち着き感がある。FF比では60kg重いものの、HEV・AWDモデルよりは80kg軽い重量と相まって、フットワークは明らかに軽快。少々突き上げ感が感じられるものの、リヤの安定感は高くて姿勢が収まった後の旋回加速力は強力。フロントがやや左右に振れる感じは、リヤからの蹴り出しの強さを表していて、このあたりはGRヤリスへも通じる旋回力と言えるかもしれない。



エンジンのサウンドは相変わらずだが、ギヤ付きCVTのDirectshift-CVTの効果もあって発進時は力強くてダッシュ力もある。変速が始まるとCVT特有のエンジン回転先行になるなど、ダイレクト感が失われるのは惜しいところで、ガソリンAWDモデルにはぜひMTの設定がほしい。

ガソリンのAWDモデルのカップリング。

背が高いにもかかわらず、ボディのしっかり感とフットワークの良さによって、旋回中の安定感はもちろん、ムダな上下動が少なく落ち着いているのが良い。コンパクトなボディながら感覚的にはC-HRよりも広々感もあって日常使いでも満足感は味わえる。走るほどに進化のあとが窺えるヤリスクロスはコンパクトモデルのど真ん中で人気を牽引していくに違いない。



上質感を味わうなら、HEVモデル。走りをダイレクトに楽しみたいならガソリンモデル。個人的にはフルシーズン、ガソリン・AWDモデルの走りを楽しんでみたい。MTモデルがあれば、なお結構である。

ガソリン(FF)モデル トヨタ・ヤリスクロス G 車両本体価格:202万円 試乗車はオプション込み244万4875円

トヨタ・ヤリスクロス G

全長×全幅×全高:4180mm×1765mm×1590mm

ホイールベース:2560mm

車重:1140kg

サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式

駆動方式:FF

エンジン

形式:直列3気筒DOHC

型式:M15A-FKS

排気量:1490cc

ボア×ストローク:80.5mm×97.6mm

圧縮比:ー

最高出力:120ps(88kW)/6600pm

最大トルク:145Nm/4800-5200rpm

燃料供給:DI

燃料:レギュラー

燃料タンク:42ℓ

燃費:WLTCモード 19.8km/ℓ

 市街地モード15.0km/ℓ

 郊外モード:20.8km/ℓ

 高速道路:22.2km/ℓ

トランスミッション:Direct Shit -CVT(ギヤ付きCVT)

車両本体価格:202万円

試乗車はオプション込み244万4875円

情報提供元:MotorFan
記事名:「 トヨタ・ヤリスクロス | 上質感を味わうならHEVモデル。走りをダイレクトに楽しみたいならガソリンだ。お勧めはガソリンAWDモデルである。